息吹

  • Audible Studios (2023年10月27日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • ぞわっとする読後感、たまらないです。
    オーディブルですぐ聞き終わる長さだったのも良い。
    文量としてはコンパクトながら、展開がしっかりしていて面白かったです。短時間でサクッと楽しみたい方におすすめです。

  •  audibleでのチャレンジ。え?どういうこと?文字で読みたい。
     ふとした偶然から、がん検診を受け早期発見により大事に至らなかった。でも、その偶然がなかったら、自分は今の生活を手放さなければならなかった。あの時、その偶然がなかったら、、、という防衛機制が働いて、二つの世界をいったり来たりしているのかと、思いきや、そうではない。
     耳にすることがありそうな日常なのに、ゾッとする感覚に、気持ちが惹きつけられ、気になって仕方ない。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    近い未来の予言

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    「かき氷屋が満席だったかどうかで、生きるか死ぬかが決まる人生って、何なんだろう? そういうものなんだろうか? 人の一生って、そういう偶然の積み重ねなの?」
    とある夏の日、中学受験を控えた一人息子を模試会場に迎えに行った齋藤息吹は、勘違いから、自分が一時間も早く到着してしまったことに気がつく。時間つぶしに入ろうとしたかき氷店は満席。仕方なく、十数年ぶりに入ったマクドナルドで、隣の席から聞こえてきた気懸かりな会話に、彼はにわかに不安を募らせてゆく。
    些細な偶然から、間一髪のところで命拾いをした夫の興奮を、戸惑いつつ、安堵とともに受け止める妻の絵美。
    しかし、その日から家族の平穏な日常は、少しずつ、「もう一つの別の日常」によって急速に浸食されてゆく。精神と肉体の危機を潜り抜けた先に、家族を待ち受けていた衝撃の結末とは?
    現実と非現実の境界を行き来し、読者を新しい認識へと導いてゆく、平野啓一郎の怪作。

    ⚫︎感想(ネタバレ)
    最新作「本心」を思わせる。テクノロジーをうまく取り入れて近未来的な作品になっている。
    本人が語るので、読者も現実を生きているつもりが、実はバーチャルの中では癌の早期発見で元気なだけで、現実の息吹は病院にいる。そのことをバーチャルの本人が気づいていく。最初は本人が荒唐無稽なことを言っているのか?という感じだが、徐々に、そういうことか…とバーチャル世界だということに気づく。人気の抹茶のかき氷は、外からは見えないように餡か白玉かが隠されている。これは大切なことは見えないようになっているとか、癌は表面から見えないとか、何かしらのメタファーだと思った。

  • これはパラレルワールドと呼ばれるものなのか、病臥する主人公が作り出した妄想の世界なのか。いや、奥さんが見たただの長い長い夢なのかも。

  • あの日かき氷屋に空席があったなら

    人生は選択から成り立つ偶然の連続だ

  • 息吹と奥様のえみさんの話。
    パラレルワールド。
    気づいたら終わった。
    結局どーなったのか?どっちが本当の世界かわからないで終わった。
    奥さんのえみさんがかき氷屋の話にうんざりしているように自分もうんざりしていた。
    あの日かき氷で…
    読み終わったのかどうかもわからなく終わってしまい…なんだったんだろうってなった。
    読み終わったので他の人のレビューみて深く知ろうと思う。

  •  読んでいる間に、自分が見ているのが現実なのかバーチャル世界なのか分からなくなるような、足元が分からなくなるような不思議な感覚に捕らわれるお話でした。

     自分があの日、かき氷屋でかき氷を食べたかどうか。それで生死が分かたれた。そんな荒唐無稽な話が何度も繰り返されながら話が展開していきます。
     かき氷屋が満席で、かき氷を食べ損ねた代わりにマックで『大腸検査をした方がいい』と会話している人と出会うことができた自分。
     かき氷屋に偶然空席があって、とても美味しいかき氷を食べることができた自分。
     そのどちらが正しくて、どちらがパラレルワールドなのか。
     もしくは、パラレルワールドなどではなくて、片方は自分が作り上げたバーチャルや仮想の世界なのか。
     いや、そもそもこれは自分が気が触れているせいで何が現実か分からなくなっているという、ただの妄言なのか。
     読んでいる間に自分が見ているもののどれが真実なのかわからなくなるような、不安な心地になりながらもついつい話を読み進めてしまいます。
     最後の最後、妻と息子の会話で、ぱちりとはまったピースが一体どの世界のものなのか、断ち切られた先を想像する余韻がある作品でした。

     作中の登場人物も、読み手も、どちらもが混沌としたSFの世界に取り込まれるようなお話です。
     読感は人を選びそうですが、日常の中にあるたくさんの分岐点の中で、もしここが分岐点だったら、という少しぞわぞわする感触が面白い一冊でした。

  • 繰り返し出てくるかき氷を食べる記憶によって、現実と妄想とが入り乱れて、どちらが本当の自分なのかわからなくなる…失ってしまうかもと思うと、日常の何気ないことが、こんなにも愛おしく大切に思えるのだろう。噛み締めるように一つ一つを確認する息吹。今自分が過ごしている1日は、かけがえのない1日なのだ。

  • audibleで聴きました。前半はやや懐疑的に「どういう話になるものか」と、言ってみればSF的な話の出来栄えを吟味する感じで聴いていました。昔読んで好きだったケン・グリムウッドの『リプレイ』を思い出したりしましたが、後半に至って、単なるタイムリープものと呼べないざわざわしたような、切ないような気持ちになりました。ラストシーン、胸に刺さるものがありました。

  • いい意味で気持ち悪い話。怪作。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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