人材育成で悩む多くの中小企業経営者が知っておくべき、成長の仕組み化の大事さがわかる1冊です。
小さな会社は大きな会社に比べ、簡単に人を増減することができない、経営者がすべて自分でやりがちといった違いがあります。
社員を育てるのに大きな会社の仕組み化の方法をそのまま取り入れようとしても、条件が違うので、失敗することも多いようです。
中小企業ならではの人材育成の仕組み化について、その重要性や、ビジョンや考課制度のつくり方まで教えてくれています。
【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】
「成長の仕組みは、経営者のためでなく、社員のためにある。一般的に仕組みは、感情を横に置いて合理化を追求する無機質なイメージがあるが、まったく逆で、人のやる気を落とさず、自己実現や自己成長という幸福に向かうもの。」
「成長機会を求める社員は『何をすれば認めてくれる?』『それで自分は何者になれる?』と気にする。一歩を自ら踏み出し、足跡を確認し、前進していると信じたい。思い通りに人を育てられることはほぼないが、評価制度、賃金制度で『成長できる環境』は提供できる。」
「すでに成功体験がある経営者(上司)と、プロセスが見えていない社員の間には必ず『納得度のギャップ』がある。経営者にとって当たり前のことが、社員にとっては成長につながる宝の山。それを頭の中からすべて取り出し、言語化し、考課制度という仕組みに組み込む。」
【もう少し詳しい内容の覚え書き】
・経営の仕組みは作業=管理・効率化・標準化、事業=ビジネスモデル・商品サービス開発、成長=ビジョン・経営計画・人事評価、の3つに大きく分解できるが、小さな会社はまず、会社と個人の成長プロセスを見える化した、全体の土台である成長の仕組みをつくるべき。
・成長の仕組みは、経営者のためでなく、社員のためにある。一般的に仕組みは、感情を横に置いて合理化を追求する無機質なイメージがあるが、まったく逆で、人のやる気を落とさず、自己実現や自己成長という幸福に向かうもの。
○仕組み化の前に必要なこと
・小さな会社は簡単に人を増減できず、一人辞めるダメージが大きいので、大きい会社の仕組み化のノウハウがそのまま通用しない。経営者がすべて自分でやりがちだが、社員を信用していないことの裏返しでもあり、それが原因で仕組み化に挫折しがち。
・社員同士が近い関係だと、社員に寄り添いすぎて特別ルールが生まれがちで、それが不公平感を生む。公平感を大事にして、仕組み化を始めるときは特別ルールをクリアにする必要がある。
○人が辞めない成長企業をつくる
・人材には、「自分の食いぶち」も稼げていない「0人材」、一人分の成果を出せる「1人材」、二人分以上の成果を出せる「2人材」の3種類ある。1人材の集団では会社は拡大しないが、2人材は会社の成長に貢献する上、リーダーとして次の1人材を育てることも期待できる。
・漠然と「成長してほしい」と願っても人は育たない。一方で懸命にあれこれ細かく教え込んでも、意外と育たないこともある。人材の成長段階を一つの枠組みで整理すると、課題がクリアになる。0人材をいきなり2人材にはできないので、ステップが必要。
・成長機会を求める社員は「何をすれば認めてくれる?」「それで自分は何者になれる?」と気にする。一歩を自ら踏み出し、足跡を確認し、前進していると信じたい。思い通りに人を育てられることはほぼないが、評価制度、賃金制度で「成長できる環境」は提供できる。
・言語化する力は、人が育つ環境を作り、組織力で拡大するレバレッジ経営に転換するのに必要。経営者にどれだけの思いやビジョンがあっても、言葉として伝わっていなければ、社員の心に届くことはない。経営計画発表会は、考えている以上に効果がある。
○ビジョンをつくる
・5年後、10年後、自分の周りが「こうなっていたらいいなあ」というシーンを思い浮かべ、イメージすることが大事。シーンをイメージできると、ビジョンを社員に伝えるのに役立つ。創業時の想い、会社の強みや特徴の現状分析はヒントになる。5W1Hを埋めてもよい。
・ビジョンは社員が自分ごとにできる、腹落ちするものでなければならない。ビジョンがないと仕組みは機能しない。「なぜこんな仕組みが?」と社員が思った時に、「このビジョンに向かっているからだ」という答えが必要。
○ビジョンをマネジメントする
・ビジョンを作っても、数値目標に落とし込んで中長期経営計画を立てなければ、絵に描いた餅で終わる。まずはざっくりとした数字に落とし込んでいって、目標を分解していくと、「誰が、何を、どれだけやれば会社が成長するか」というビジネスの仕組みが見えてくる。
・説明会は社員がイヤイヤ参加するイメージもあるが、実は「上だけで何かが決まってやらされる」のも嫌。毎回必ずビジョンを確認して、ビジョンと紐づけて数字の話をすることで、納得感を引き出すことはできる。
○人を育てる成長考課制度のつくり方
・万能な人事評価はない。計画実施にどんな人が何人必要で、今の社員がどんなスキルや特徴を持ち、これからどう成長してほしいかを一番イメージできている経営者が、頭の中だけでブラックボックス化している評価システムを形にしたものが、最高の人事評価の仕組み。
・すでに成功体験がある経営者(上司)と、プロセスが見えていない社員の間には必ず「納得度のギャップ」がある。経営者にとって当たり前のことが、社員にとっては成長につながる宝の山。それを頭の中からすべて取り出し、言語化し、考課制度という仕組みに組み込む。
・考課結果が処遇にリンクしないのは意味がない。社員も、見える形でのリターンがないとモチベーションが上がらない。考課責任者、評価期間、評価方法(何段階か)をルールとして決める。
・最初から完璧なものは作れないので、少しずつバージョンアップしていく。会社や環境が変われば、社員に求められる能力や役割も変わる可能性がある。シンプルなものから始めて、少しずつ運用しやすいものにしていく。
・各社員のミッション、処遇の基準の2つを明確にする。誰もが経営者のように成長できるわけではなく、むしろ稀。育てる側に具体的な育成イメージが必要で、期待しているだけでは育たない。ミッションが明確だと、足りないものがわかり、そこを伸ばすことを考えられる。
○経営者としての新しいスタート
・経営者の本来の仕事は会社の未来を考えること。営業や経理までやっていては経営の土台を作れない。管理部門はアウトソーシングでもよい。幹部を育てるなら我慢して任せるのも大切。会社の未来を考える余裕ができると、滞っていた課題が解決に向かうこともある。