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本 ・映画 / ISBN・EAN: 4988003889081
感想・レビュー・書評
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良質な映画だと思うが、じっくり見ていると映画が終わる頃には鬱っぽくなってしまう。共に暮らしている老夫婦の日常をあえて分割画面で見せていて、最初は不思議な感じがした。心通い合い、寄り添って生きている2人ではないのだとわかってくると、2分割画面への違和感は消える。むしろしっくりくる。
映画全体の雰囲気はとても寒々しい。
「あなたはこれまで社会規範をおおむねよく守り、努力して良い職に尽き、家庭を築き、子供を育ててきましたね。そう、あなたは社会によく順応して生きてきました。でも、生きている以上、うっすらとした不安は常につきまとうものでしょう?あなたのその漠然とした不安を取り出して、具現化して見せてあげましょう。この社会の中で起こり得る、きわめて現実的なシナリオで」そんな風に言われて、見たくもないものを見せられている気分になってくる。
老夫婦の辿る結末そのものも鬱々として苦しいが、その結末に至る過程がもうイヤだ。「子供にはこんな姿見せたくない」と親が恐れる姿を子にしっかり晒しながら老いて死んでいく。その子供の人生もまた破綻しかけており、このままでは親以上に辛い人生の結末が待っている。描かれているのは苦痛や裏切りや絶望だけではない。愛の気配だって確かにあるのだ。それなのに心は全くあたたまらない。
天に召されるというよりも、地の底を這いながら沈んでいくような人生の終わり。残された人たちは、簡単な葬式を挙げ、故人の人生を1~2分にまとめたスライドショーを観て、自分の人生に戻っていく。ゆっくりと坂を下りながら、自分もまた同じ地の底に向かっている途中なのだと気付く。逃げ場はない。
ダリオ・アルジェント監督(御年80歳!)初主演作と聞いて観てみたが、塩をかけられたナメクジみたいな気持ちになる映画だった。なんでこんなの見せるのよ~!(自分で見たんやで)詳細をみるコメント0件をすべて表示