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現代の法意識を考察する本書は、日本の法体系の歴史的背景から現代の課題までを広範に扱っています。著者は、日本人の法意識が未成熟であると指摘し、個人の権利や社会的正義について具体的な問題を提起しています。...
感想・レビュー・書評
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現代日本人と謳っている部分から社会学的な見地を期待していたが、法曹の専門家の、より実際的な経験からの教示といったもの。とはいえ、一通り読み終えるべきかと思える問題提起でもあったので、広く法のあり方という問題を考えるにあたっての入口となっているように思う。
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裁判官→法学者という経歴である筆者の、日本人の法意識の特徴という切り口での小論。「絶対的で理想的なお上が支配する社会」かつ「和を重んじるムラ社会」という明治以前から続く日本人の社会への認識に根ざした法意識は欧米の法治の精神とは未だ大きく乖離しているが、それは明治以降に咀嚼する暇なく急速かつ中途半端に欧米流の法治制度を導入したためだと。
医師であり精神保健指定医でもある私は、一般の人間よりは遥かに法律と向き合うことが多く、法的な整合性、つまりロジックを重視して仕事をしているつもりだが、やはり根本的に少なからず日本人的なメンタリティをもって法に関わる諸問題を考えてしまいがちなのだと、読んでいて何度も感じさせられた。
とくに刑法と刑罰に関して、ロジカルに考えれば死刑は目的刑論としても応報刑論としても刑罰として正当化するのが困難であると理解はできても、賛成する人間の気持ちも十分に分かってしまう。死刑は極端な例としても、やはり応報的・懲罰的側面の強い現在の司法は修復的司法(罪を憎んで人を憎まず、加害者の社会復帰支援と被害者支援の充実)と比較して社会的に負の側面が強いにも関わらず、気持ちとしては厳罰化を求めたくなってしまう。
未熟で問題の多い離婚手続きにまつわる話から、刑事司法に対する国民の理解と関心の低さ、検察の人質司法と推定有罪、官僚主義によって判断を歪められる裁判官、法治の精神の薄い政治家ども、どれも気持ちが暗くなる話ばかりですが、同時に前述のような日本人の特性を考えると腑に落ちるものばかりでもあります。
権利とは社会正義に叶う範囲で個人に割り当てられるものであって義務の対義語ではない、平等などの法を裏付ける近代概念は現実を超えて理想を肯定していかんとする一種のフィクションであり維持するために不断の努力と欠落部に対する鋭敏な感覚を保たねばならない、法の機能は占断的な人の支配から人々を守ることに重点が置かれる、など現代の法治国家を生きるものとして理解しておかなければならないことも随所に散りばめられており非常に勉強になります。
11月の出版にも関わらず10月の事柄まで言及されていること、一読すると意味が掴みにくい部分や唐突な印象を拭えない部分も所々あること(勿論法曹らしく、よく読めば前後関係や論理に矛盾や問題は認めません)などからは編集や校正が簡潔なものなのだろうという感はある。 -
瀬木比呂志「現代日本人の法意識」(講談社現代新書)
現代の法律の基礎となっている欧米法は、ギリシア哲学の普遍を考える思考、私権と法の支配を重んじるローマ法、神の前の平等をとくキリスト教の伝統があり、それらが市民革命により人権と民主主義を尊重する法体系に進歩したもの。日本の場合は、日本の在来の慣習や中国から輸入した律令体制から江戸時代まで発展してきた法体系を明治時代に欧米法に取り換え、さらに戦後にアメリカ流民主主義に取り換えてきたため、日本人の法意識は普遍的な理念の意識が薄く未成熟だという。そのうえで以下の具体的な問題を指摘している。
(1)婚姻・離婚:日本では個人のプライベートなこととされ、国家がチェックする契機に乏しい。そのため弱い側のパートナーの権利や子供の福祉が軽視されがち。
(2)犯罪と刑罰:日本は応報刑的な考えから抜け出せていない。犯罪者の教化と被害者の救済を重視する修復的司法に転換すべき
(3)冤罪:検察庁が強すぎ、検察権力をチェックする仕組みが弱い。裁判所も検察に追随しがち。
(4)権利、契約:親しい人の間での取り決めを文書化する習慣が乏しい。大企業ですら国際取引での契約書の吟味が足りないケースが多い。
(5)ジャーナリズム:ジャーナリストの司法知識が乏しく、警察や検察の発表やリーク、裁判所の判決要旨をなぞっただけの報道が横行している。
(6)裁判官:本来は裁判官は一人ひとり独立のはずなのに、最高裁事務局の差配によるキャリアパスで昇進していく官僚集団となっている。空いたポストを公募するような考え方が必要。
(7)和解の強要:裁判官自身に普遍的正義の観点から判決を下すことに消極的で、安易に和解を勧めがち。結果として強い側に有利な合意形成がされてしまうことが多い。
(8)安倍政権批判と岡口裁判官弾劾事例:正直なところ蛇足だと感じる。
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