人類は宇宙のどこまで旅できるのか―これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー [Kindle]
- 東洋経済新報社 (2024年6月12日発売)
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感想・レビュー・書評
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星間旅行のだいぶ現実的な話。楽しい話だが、まあ生きている間にはどう考えても無理だよなあ、となるのは仕方ない。基本的には気になる人にはおすすめできる本だが、まあ「現実的」なので途中で飽きる可能性はあるかも。
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太陽系を出て、系外の恒星まで到達できる無人・有人探査機の実現可能性について、現在確立されている、あるいは今後ある程度実現できそうな科学技術でどこまで到達出来得るのか、NASAのロケット研究者である著者が理論的に解説する1冊です。
地球から最も近い恒星は4.3光年(光の進む速度で4.3年かかる)の距離にあります。仮に光速の10%まで加速できる宇宙船が実現できたとしても片道50年超、光速の1%なら片道500年以上かかるプロジェクトになります。そこで想定されるハードルとして、
1)光速の10%程度の超高速を実現できるか
2)通信、ナビゲーションはどうするか
3)500年を超えるプロジェクトを継続する場合の問題点
という点について、無人探査機を前提にまず話を進め、そして次の段階として
4)有人探査をする意義はあるか
5)有人探査を実現する場合の問題点
へと議論を進めて行きます。
1)~3)の工学的、物理学的な解説は、さすがNASAのロケット研究者だけあって技術的な解説にも飛躍が無く、非常に分かりやすい内容でした。特に推進に関しては、様々なロケット、太陽帆や磁気・静電セイルなど多種多様な推進方法について触れています。
4)、5)については書名からも分かる通り、著者は有人探査に非常に意義を感じている立場なので、ここは様々な側面から考察しています。
例えば、片道で人の一生を超える年限を必要とする星間飛行をするわけですから、生命維持できることは前提としても
a)宇宙船で一生を終えることに同意した最初のクルーは良いとしても、次世代のクルーの意思はどう尊重するか
b)仮に数光年先の恒星系に人類が到着したとして、そこに入植する事を前提にしてよいのか(人類に都合の良い環境に改変してよいのか)
等々の社会学的、論理的な側面などにも触れていて、この部分もかなり興味深い考察になっています。
ただ、著者の立場としては後者の社会学的な問題は、系外恒星系に到達することが実現できない限り意味のない事と割り切り、問題提起の段階で解説をまとめており、より前者の技術的な問題、制約条件に紙幅を割いている印象でした。
突拍子もないSF的な手段ではなく、(予算が許せばという問題はあるにせよ)プロジェクトの規模の問題をクリアーすれば、ここまでは到達できるという非常に具体的な考察で、説得力のある内容であるという印象でした。
