いまだ成らず 羽生善治の譜 (文春e-book) [Kindle]

  • 文藝春秋 (2024年5月27日発売)
3.93
  • (7)
  • (11)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 84
感想 : 8
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・電子書籍 (256ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 羽生善治と周辺棋士を、関係者の目線から纏められた一冊。
    棋士ごとの勝負の捉え方や生き方が興味深い。
    物事を探究する姿勢や生き方について考えさせられる。

  • 本書では触れられていないが、羽生は藤井との王将戦後、将棋連盟の会長となっている。
    引退したわけではないが、一般的に連盟会長への就任というのは、一戦から退いたような、ひとつの節目として捉えられる。連盟会長としての職務を果たすとすれば、将棋に触れる時間は物理的に減るのだから、当然といえば当然である。

    本書はシンプルな羽生善治物語というわけではない。幼少期からいまに至るまで、羽生のまわりにいたひとびとの視点から羽生を多角的に描こうとする。そしてそれは構成的にも文体的にも成功している。

    ただ、さほど将棋に明るくない読者を想定しているようではある。おそらく、将棋ファンからすれば既知のエピソードしか載っていないと思う。
    巻末に参考文献が羅列されているが、量も少ないし、その文献自体も「将棋ファンはすでに目を通しているものばかりなのでは」と感じるようなもので、意外な引用元があるわけではまったくない。

    それらを再構成してまとめたという意味では読みやすいし、良いと思う。

  • 50歳を超えてもなお棋界の第一人者として活躍し続ける羽生善治氏の人間模様を、その周囲の人達との関りから描くノンフィクション。各章毎に一人が取り上げられています。いくつか、印象的な部分を紹介します。

    棋士 谷川浩司氏(小題 夜明けの一手)
    羽生氏のひと世代前を象徴する棋士。羽生氏の七冠達成の際の対局者。世間の異常な注目を浴びる中、将棋界の全てを背負って臨んだ羽生氏七冠の懸かった対局前夜と対局中の心境は…。

    棋士 森内俊之氏(小題 王将の座)
    小学生のときから羽生氏としのぎを削ってきた森内氏。初のタイトル戦は羽生氏との名人戦。勝利を確信して打った一手をきっかけに大逆転負けを喫する。対局後、「あの形で(自玉が)詰まないことは知っていました…」と明かされ、森内氏は彼我の隔たりを突き付けられるが…

    棋士 佐藤康光氏(小題 マルクスの長考)
    羽生氏に最も多く敗れた経験を持つ佐藤氏。幾多のタイトルを保持しながら、羽生氏とのタイトル戦は8年にわたって7連敗。そのトンネルを抜けた、羽生氏からのタイトル戦勝利へ至る葛藤とは…

    他にも、羽生氏が子供のころ通った将棋道場の指導者、棋戦報道に携わるベテラン記者、棋士渡辺明氏、棋士豊島将之氏など、どの章も興味を掻き立てられるメンバーです。

    棋界を代表する、一つの時代を象徴するような存在は谷川浩司氏から羽生善治氏、そして次の世代へと引き継がれてゆくのですが、先の世代に挑み、そして次の世代の挑戦を受けるという宿命ともいえる流れのなかで節目となる対局は、単なる1局の勝負にとどまらず、将棋の伝統や歴史の懸かった対局として、それに懸かる重みなどが本書から伝わって来ます。私自身は将棋はルールが分かる程度で、深くは分かりません。しかし、本書で描かれる様々な対局の中で棋士が自分の人生を掛けて指す一手の重みや、その瞬間の空気の緊張感は文面からゾクゾク伝わって来ます。
    本書の著者は「嫌われた監督」で落合博満氏の人間像に迫った鈴木忠平氏です。安っぽい表現になりますが鈴木忠平氏という最高のシェフによって、羽生善治氏という最高の素材を活かした作品と言えると思います。期待して読みましたが、読み終わるのが惜しいと感じるほど、棋士の人達が生きている世界の空気を感じることができるノンフィクションでした。

  • 天才とその周りを取り巻く天才達の物語

  • 将棋の棋士の話なのでそりゃ面白い
    棋士のキャラクターが際立っていて3月のライオンのよう
    世代交代から世代交代まで描かれ感慨深い
    すごい世界だなあ

  • 棋士の羽生さんを巡る群像劇。登場人物たちの羽生さんに関わった象徴的なシーンが描かれている。
    群像として描かれる人たちみんな著者の想い込みが反映されたキャラになっている印象。そのせいかちょっとくどくて、読んでて胃もたれする感じが残念。

  • 羽生さんとタイトル戦を繰り広げたトップ棋士達。そこから羽生さんの強さや魅力、底知れぬ将棋への探究心などが伝わって面白かった。将棋に興味ある方にオススメの一冊。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1977年、千葉県生まれ。愛知県立熱田高校から名古屋外国語大学を卒業後、日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を16年間経験。2016年に独立し、2019年までNumber編集部に所属。現在はフリーで活動している。

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』より

鈴木忠平の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×