藍を継ぐ海 [Kindle]

  • 新潮社 (2024年9月26日発売)
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本 ・電子書籍 (283ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 第172回直木賞受賞作。
    地学・陶芸・“狼混”・被爆・隕石・地磁気など作者の科学者として参考文献に基づく入門書のような科学に疎い私でも興味を惹かれる短編集となっている。
    『「星隕つ駅逓」は白滝が舞台で、その描写は自分自身の生活と驚くほど一致していた』と取材を受けていない女性のことが新聞の記事に載っていた。緻密で精巧な、まるでドキュメンタリーを見ているようなような文章と作者の想像力に感心させられた。
    もちろん、物語が展開していくにつれて様々な鬱屈や心に重荷を背負っている主人公たちの再生の物語としても心温まる勇気をもらえる作品集でもある。

  • 舞台の一つが田舎の近くで気になり読み進めていたら直木賞受賞ということで
    表題作をはじめ5つの短篇で語られるのは[継ぐ]
    萩焼、ウミガメ
    そこにいた者あった物の思いが姿を変え形を変え継がれ伝わってゆく
    人類が犯した最大の罪禍が題材の[祈りの破片]が最も心に

  • 装丁が美しくて手にとりました。

    『科学が、わたしたちをあたたかく包み込んでくれる。』 という帯の言葉にも惹かれました。

    五篇のどのお話も美しく、とても丁寧な印象を受けました。
    特に、【星隕つ駅逓】は、地元近郊の町のお話だったので、興味深く読みました。

    自然、宇宙、生き物、地学、そして、原爆も…。

    私たちの生きている周りは科学で包まれているんだと、あらためて知らされました。

    深く深く勉強し、研究されている人たちに敬意を表します。

    伊代原さんの作品を初めて読みました。
    次は、【月まで三キロ】を読もうと思います。

  • 五つの話からなる短編集。どれも良かった。いつか訪れたい。

  • 著作者:伊与原新
    出版社:新潮社
    「藍を継ぐ海」は、自然と人間の繋がりをテーマにした、美しいく感動的な短編集です。科学的な視点を取り入れつつ、文化的な表現で描かれた物語は、読者に深い感銘を与えます。日本の美しい自然を背景に、生命の尊さや時の流れについて考えさせられる一冊です。

  • 直木賞受賞作です。
    5つの短編それぞれに、地球科学者としての筆者の知識がふんだんに盛り込まれていました。取材や調べ物も、たくさんされたんだろうと思います。
    どれも、1話ずつ映画に出来そうな内容で、とってもおもしろかったです。
    NHKで放送された「宙わたる教室」もそうでしたが、この5話も、読後がどれも心地良くて、そういう物語が私は好きです。

  • 直木賞おめでとうございます!

    短編集でそれぞれのお話はつながってないんだけど、どのお話にも昔からの受け継がれていってるものっていうのが根底にあって、どれも素敵なお話だった。

    個人的には「宙わたる教室」がとっても良かったので、そちらも読んで欲しい!

  • 月まで3キロや八月の銀の月に続く短編集。物語は心温まるロマンチックなものでありながら、1つひとつの物語に散りばめられた科学的な現象はロマンが溢れている。これらが縦糸と横糸になって、素敵な作品を織りなしている。

  • 「オール読物」掲載の表題作のみの評価です。他の連作は、「夢化けの島」「狼犬ダイアリー」「祈りの破片」「星隕つ駅逓」。

    昨今の近代化に取り残された様な徳島のとある限界集落は、昔は海亀の産卵地としても有名だったが、最近では海亀も滅多に寄り付かない。そんな海辺に住む中学生の砂月はおじいちゃんとふたり暮らし。父親の違う8歳上の姉は都会へ家出同然に出ていった。砂月は何度も姉の携帯番号にメッセージを残すも返事はない。
    登場人物は、この3人とボランティアで海亀巡回員をしている近所の佐和おばあちゃんとカナダから海亀の産卵を見に来たティム青年。
    シャケの様な帰巣本能のある海亀と一人田舎に取り残された砂月を重ねて物語は静かに温かく展開する。奇跡的な海亀の消息エピソードなど盛り上がりもあり、まさに匠の技。
    小編1作しか読んでませんが、それでも直木賞に相応しいクオリティだとわかります。

    4月4日追記。
    「オール読物」にはもう1編「ロケット・センパイ」という同じ作者の短編も収録されていたのでそちらの感想も。
    血液の重い病気と闘いながら定時制高校に通う主人公、理が彼のクラスメートとペットボトルロケットを病院の庭で打ち上げるお話。その病院では、理よりも若く理よりも長く病院にいるセンパイたちが楽しみに打ち上げを待っている。
    「藍を継ぐ海」では何十年とかけて帰巣する海亀の生態、本作では木星の縞模様と赤斑点の解説やペットボトルロケットのメカニズムなどの科学的知識が織り込まれているので読後には、やさしい気持ちとちょっと得した気分が得られるのが筆者の作品の特徴。
    ただ、1箇所違和感のある場面が。
    《科学部の部長、佐那が理にささやく。「もしかして、‘大事な先輩’という言葉はそのう、いわゆるラブ的な…ね?」
    佐那が助けを求めるようにみちるを見たが、みちるはふんと鼻を鳴らすだけだ。(P99)》
    冗談を言った本人が助けを求めるというのも少し変だし、ささやき声なのにみちるに聞こえていたのか、というのもある。もちろん間違いでもなく、解釈の仕方にもよるが、読んでいて「うん?」となる不自然さは別の表現を使えば回避できたはず、ナンテね。

  • 伊予原新氏の作品を読んだのは初めて。
    5つの短編からなるこの本はどれも昔から大切に守られてきた日本の美しい事柄。萩焼きの幻の赤い粘土、絶滅したはずの日本狼、長崎での原爆資料収集に心血を注いだ人物、北海道の僻地で郵便を届けていた駅逓とアイヌ民族との関わり、海亀の産卵を守る人々。
    専門的な内容もあるのにどれも読みやすく、読み終えた後は静謐な気持ちになる。

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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