NEXUS 情報の人類史 上 人間のネットワーク [Kindle]

  • 河出書房新社 (2025年3月5日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • Audibleで聞くと難しいかも。人間が他の動物と違うのは、情報を処理し、交換し、蓄積できる能力があること。そしてその情報ネットワークにより、複雑な社会や文化の発展、そして大規模な協力を可能にしてきた。(逆に言えば他の動物にはこのような情報ネットワークがないので単調でシンプル(強いものが勝つ)という構成になっている)。今後はAIの台頭があるものの、現時点では最終的な意思決定は人間。ただその動きも傾きつつあるとのこと。下巻は「AI革命」なのでもっと詳細に書かれているかも。確かに歴史を学んでいる中で、発展や新たな法制度の登場の根本には情報が行き渡りそれがネットワークとして結びつかれていったことがあるかもしれない。そこにはバイアスやノイズやハルシネーションもあるが、うまいこと処理して更なる発展に繋がっているのだと感じた。

    【メモ】
    ・言語、文字、印刷術などの発明
     ⇒情報伝達の効率化と社会構造の変化。国家や法制度の整備
    ・情報ネットワーク
     ⇒血縁、地域、職業、宗教など、さまざまなネットワークが情報の流れを生み、社会の意思決定や行動に影響を与えてた(古代ローマの道路網や商人のネットワーク)
    ・情報のノイズとフィルター
     ⇒情報伝達には誤情報やノイズがある。権力や慣習が情報の流通をコントロールし、特定の情報だけが拡散されたり遮断されたりする。
    ・情報を独占・管理することは、歴史を通じて権力の源泉であり、聖職者や支配者が知識を独占し、社会を統治してきた例がある。
    ・「ネクサス」とは「つながり」や「絆」。交易や宗教の広がりも、情報ネットワークの力によるもの。

  • オーディブルで聴了。
    『サピエンス全史』以来、毎回楽しみにしているハラリの新作。今回は「情報」に焦点を当てた人類史で、知的刺激がたっぷりでした。
    情報が自由に出回れば真実が残る——そんな素朴な信念を皮肉交じりに否定し、科学と宗教の違いを「誤りを訂正できるかどうか」で説明するくだりに深く共感しました。

    印刷技術が魔女狩りを助長し、さらに全体主義国家が情報を集約して加速させた流れはスリリング。そこから、AIがもたらす“量と質の変化”への伏線として下巻に続いていく構成も秀逸に感じました。
    引き続き下巻が楽しみです。

    ちなみに個人的には、現実を無理に分類に押し込む官僚の描写に思わず笑ってしまった。現代の入力フォームの不自由さと重なって、妙にリアルでした。

  • 弁護士や政治家や実業家は、憲法や平和条約や商事契約を起草するときには、一語一語について何週間も、ことによると何か月も議論を戦わせる。なぜなら彼らは、それらを記した紙が途方もない力を振るうことを承知しているからだ。

    一言一句が結構な方々に影響する可能性のある業務に携わっています。見る方々の理解レベルも様々で、想像できる限りあらゆるケースや人を想定して文書を作成せねばなりません。責任重大です。

  • ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『NEXUS 情報の人類史』は、私たちが普段当たり前だと思っている「情報の概念そのもの」を根本から問い直す一冊です。
    私たちは「情報」を、真実の断片が集まったものだと考えがちです。しかしハラリ氏は、この「情報の素朴な見方」を否定します。彼にとって、情報は単なるデータではなく、まったく異なる要素を結びつけ、新しい現実を創り出す「力」なのです。たとえば、神話や貨幣、法律といったものは、本来無関係な人々の間に「信じる」というつながりを生み出し、社会という巨大なネットワークを築き上げてきました。つまり、情報とはネットワークそのものであり、それは真実や噓とは別の次元で、私たちを動かす原動力なのです。
    本書の主張は、AIが私たちを支配するようなディストピアを回避する上で、重要な示唆を与えてくれます。情報を悪用するのではなく、そのネットワークとしての本質を理解し、人間同士のつながりをより賢く、希望に満ちた形で築き直す。AIの力に対抗するのではなく、共生していくための「よりよい情報の使い方」を考察することこそ、人類の未来を左右するとハラリ氏は訴えています。
    上巻では、神話から官僚制、民主主義から全体主義まで、人類が過去に築き上げてきた情報ネットワークの歴史を紐解きながら、私たちがいかにしてこの力を使って来たのかを深く掘り下げています。この本を読めば、日々触れる情報や、SNSで生まれるつながりに対する認識が、がらりと変わるはずです。

  • 情報の「つながり」が生み出す危険な力

    「Nexus」に込められた意味について、僕は「情報のつながりの中心部」と理解した。情報同士のつながりやその構造という観点では、ネットワーク理論でいう「ハブ」に近い概念である。
    しかし、ハラリ氏が『サピエンス全史』で論じた「フィクション(虚構)」ーー人々を洗脳したり結束を強固にする目的を持った情報ーーの色合いを帯びると、このNexusは厄介な存在となる。なぜなら、ほとんどの場合、真実よりもフィクションの方がより強力なNexusを生み出すからだ。フィクションは真実よりも刺激的で分かりやすく、より多くの人々に強固な結束をもたらす。ポスト・トゥルース、フィルターバブル、陰謀論などがその典型例だ。

    本書では、このNexusの課題を解決する鍵として「情報テクノロジーが生み出すNexusの自己修正メカニズム」を挙げている。興味深いことに、これは東浩紀氏の「訂正可能性の哲学( https://x.gd/niaMI )」とメインメッセージが重なっている。また、この自己修正メカニズムを組み込めていない現存のAI(同書では「人工知能民主主義」として論考を展開)が「全体主義」に陥る危険性をはらむという主張も共通している。

    しかし、ハラリ氏が提示する解決策には重大な矛盾がある。果たして我々は、彼が描く最悪の未来シナリオから本当に逃れることができるのだろうか?

    (感想後半へ https://x.gd/Iys5m

  • 面白いがくどい
    便利ツールも使い方次第だし、我々は間違えてきた
    ネットワークの歴史、技術の歴史
    人は変わらないから、規模が変わってくる
    修正できる制度は正せるので強み

    以下は読みながらのメモ

    これからはAIが情報をさらに人間に与える
    そして、勝手に興味のあるものを選んでくれるアルゴリズムが我々を囲うだろう
    どからこそ、大国は主導権闘いに躍起になっている
    同じ思想を作るのにとても都合がいいから
    それが幸せに繋がるのかはわからない
    現在もこれだけ豊かでも幸せとは限らない
    だからこそ盲信することはない

    歴史から情報とは発明とは何なのかを紐解いていく
    情報の定義は事実を1つの見方で見ること
    一万人の兵は事実でもあるが、その中の一人一人の抱えているルーツや思想は違う
    事実ではあるが、一つのものの見方に過ぎない

    情報のすごい点は事実とは無関係に人をまとめることが出来る
    まとめる事で1人では出来ない巨大建造物を作ったり、戦争することが出来る

    国家でさえ、共同体のフィクションであり、いつから存在するかを科学的には証明ができない
    認知の問題で国と認めてない人の中では国ではない
    金も人間の情報ネットワークの中で価値があるが、ジャングルの動物たちには価値がない
    コミュニティの外では価値がない

    ただ人間の中では大きなコミュニティを作ることができる
    役職とかも含め、フィクションだが信じる人が増えることで優秀な人が1人でやれることより大きなことが出来る
    客観的な事実だけではないことが、個体としては弱い人間が他の動物に勝てる道具や作戦を実行できる集団を生み出すことができた

    憲法と神のお告げの違いは間違いを正すことが出来るか否か
    神のお告げは神なので否定は出来ない
    憲法は会議にて変えることも可能としている
    これは国という虚構でまとまっているのに虚構が変わる大問題だが容認している人間の修正力

    脳は数字や文字の羅列は覚えるのが苦手
    その代わり物語は覚えられる だから、物語のほうが広まりやすく理解されやすい
    それを拡げたのが文書
    これは、皆が言ってる(認識)しているという状態から、物質に記録されるものにした
    村とか家族単位であれば問題にならないが、国とかの単位で誰の土地とかを覚えるのはかなり難しいので文書にすることで中央集権的な管理が可能になった

    問題は文書の管理となる しまっておき必要なときに取り出す事ができるようにするには分類が必要となる
    分類し、管理する組織として官僚が生まれた
    そして、分類するときに無機質的に分けるので、物語がなくなるし個人とかケースバイケースではなくなることで表面的な見方
    差別とかにもつながっていく

    物語は浸透しやすいので国とか大きな単位をまとめるのに役立つ
    そして、階層で分類する
    この分類は官僚が管理して、分類されたらそれに従うしかない
    王とか貴族が神の使いとか、血筋なのはよくある話

    文書とは物語がないのでわかりにくいのに権力を持つので、わからない人からは不満が溜まりやすい
    便利なので機能していることも多いがそれも伝わりにくく、反感の的となりやすい

    聖書は文書の1つで、ユダヤ教は同時に同じ複数の文書を作ることで書き換えを防ぐ方法を考えた
    制度としては優秀だったが、書き写す際の手間が多い
    行間による解釈があるのと、技術の進化で当てはまるものなのかとか、解釈に悩むことが増えてくる
    そこで、解説本が誕生するが、それは神の言葉なのかとかで分裂していく
    宗教の分派とかこういうふうに起こるのか

    解釈する教会は強くなり、解釈の違いで分派していく
    活版印刷前は、書物は富裕層しか作れないし、文字を読める人も少ないので情報統制しやすい
    読めない人への朗読会とかもやって普及させていく
    チ。の世界観

    活版印刷によって良い情報が拡散されたかというとそうではなく、魔女狩りのように良くない情報が拡散することもあった
    センセーショナルで、惹きのある情報は広まりやすいし、エコーチェンバー効果でそういう情報に囲まれると信じやすくなる

    情報の流れを自由化しても真実が広がるわけではなく、嘘や有害な情報が拡がること多い
    人の感情に訴える情報のほうが人は興味を持つ
    難しい数式よりゴシップの方が頭に残るのはストーリーを理解するのが得意だから

    科学の強みは自己修正できること
    科学は新しい発見で、過去のことは間違いでしたと言える
    宗教は神の言葉に間違いはないので、間違いを認めることが出来ない
    ここが大きな違いである
    神の言葉は合っていたが、解釈間違えたごめんなさいが、限界
    科学も今までの定説を否定するときは名もなき人が発表する場合はハレーションは起きる
    完璧ではないが、修正することが強み
    修正する分、わかりやすいものではないのかもしれない
    ここが陰謀論と違い言い切れないから、ストーリーとして魅力がないのかななんて思いました
    自己修正は真理の追求としては素晴らしいが、魅力がないので秩序としては機能しにくい
    ここにAIが加わることでどうなっていくのか
    自己修正が効くのかが鍵となってくる

    独裁と民主主義の差について語られる
    独裁は中央集権となり、すべての決定事項を1つが行う
    自己修正する機関も作れるが、反逆されると統治が難しい
    民主主義は細かい決定は独立で行う
    個人や会社の自由が多い

    話し合うには話す、聞く以外に理解するが大事となる
    実体験以外理解できないなら、話し合いは難しい

    テクノロジーは影響力に変化を与える
    声が聞こえる範囲しか支配できない故に都市国家になっていたが、ラジオやテレビが出てきて国の端と端でも同じ情報を共有できるようになってきた
    ラジオやテレビの前は新聞でそれは活版印刷によるテクノロジーのおかげである

    中央集権型の強みは組織秩序が強いので、トップダウンが早いこと
    逆に上に悪いことを報告すると評価が下がるので、隠しがちであること
    独立した機関があれば、政府が隠しても新聞や週刊誌がすっぱ抜くので、悪いことが独立で伝わりやすい
    その分、統制が取りにくいのでトップダウンの早急な決定の秩序は弱い

    真実はさておき、情報を統制することで国をまとめ上げたスターリンは秩序としては成功である
    テクノロジーは正解に向かうかと言うとそうではない
    これからAIとどう折り合いをつけ、未来から見たときに愚かではない方法を見つけられるかが鍵

    自己修正システムをどう機能させるかが大事

  • NEXUS 上 ハラリ 河出書房

    有限が孕む無限性
    完全なる唯一なるモノが
    歪むことで出現した物質界は
    もがけばもがく程に
    自らの重さと摩擦でガンジガラメに陥る矛盾をどうすることもできない
    透明度を極めるほど
    混沌とした闇も広がり
    捉えどころがない
    調和と言う無限の一瞬をつかめど
    暴力の前には虚しく空を掴んでいる自分に帰すメビウスの輪
    限りある筈の有限界と
    限りない無限は同じであると同時に
    果てしの無い関係にある
    それは競争社会と切磋琢磨の関係と瓜二つ
    フラクタル

    この世とあの世の相対関係
    真理を中心とする無限球の内側は歪みのない唯一の空っぽだった
    ある時そこに己を知りたいと言うヒラメキが起こった
    同時にこの欲望を叶える為に「空っぽ」は鏡像である三次元重力場における摩擦界である有限界で埋め尽くされた
    そこは唯一であった真球と相対する物質界である
    中心から外へ向かうほど反面教師としての競争原理にもとづき
    分断が激しくなり要領よく悪魔化して行く世界となる
    中心へ向かうほど調和を目指して切磋琢磨する相乗効果を得ると同じくして
    全体観によるバカとも言えるお人好しになる
    悪魔化の飽和状態で鏡を通り抜けて本質であろう無限球となる
    無限と有限=一次元と二次元を含むゼロ次元と三次元=あの世とこの世=波動と粒子の相対関係ですべてが成り立つのであろう
    しかしその本質は果てしのない物語なのだ

  • 十分な量の情報があれば真実につながり、その真実が力と知恵につながる、という素朴な見方
    あるいは
    情報は武器、力だと見る、ポピュリズム的な見方

    これらの極端な見方ではなく、希望に満ちた見方

    情報は現実を必ずしも表すとは限らないが、つねに人や物事を結びつける。

    客観的現実か、共同主観的現実か

  • 「情報」の人類史ということで、IT関連の業務を実施している身として一読する必要があると思い手に取った。(その後、サピエンス全史の著者の書籍だと知った)
    書籍の中で示唆に富む部分は数多くあるが、「真実を語ることは秩序を生み出す方法として程遠い」という事実を明確に説明している点である。その秩序を生む出すための方法として「虚構」を上げ、それが如何に「真実」よりも有利な特徴を持っているかを整理している。
    また、情報ネットワークの歴史を「進歩の大行進」ではなく、「真実と秩序のバランス」と捉えて説明しており、それは、SNSが一般社会に浸透した今の世の中でも非常によく当てはまっていると感じた。

  • オーディブルで流し聴きました。宗教は神が全てを知っているという前提に立ち、科学は人間は無知であるという前提に立っているのが大きな違いで、科学は今までの説や論を覆すことによって発展して来たが、宗教は神がひっくり返されることはなく、閉鎖的で発展しない。あるとしても経典の解釈が変わるだけ。
    このような図式が、民主主義と全体主義や社会主義の違いにも構図としてある。民主主義は、誰もが意見することにより、自己修正メカニズムが働いて適切に発展していくが、ファシズムやロシア共産主義のような誰もなにも言えない環境では自己修正メカニズムが働かず、世界の運営がうまく行かない。同じロジックで魔女狩りも止められなかった。
    今のアメリカのトランプ全体主義も、逆らったら消されるような環境は、自己修正メカニズムが働かずにダークサイドに引きずり込まれそうな環境なのだなと思った。

  • 半分くらいまで読んだ。
    ただ何が言いたいのかわからなくて辞めた。
    宗教や科学が出てきて、不可謬みたいな話まではギリわかったけど結局何が言いたいのかがわからず。
    これは知識の問題なのかな

  • 下巻に記載。

  • 劇的だ。勇気と力をもらっている。

  • これまでの人類史解読アプローチから特に「情報」にスポットをあてた書。ここには著者のAI危機派としての思想が反映されている。「NEXUS」は「結びつき・つながり・絆」という意味。「情報」は真実の提示ではなく、「人や物事を結びつけて新たな現実を創り出すもの」と著者は定義しており、この結びつき(NEXUS)により「真実」「正しいこと」が生み出されるとは限らない、というのが本書の主旨。またおそらく本書はMAGAやトランプ政治への現在最も分かりやすい分析として有効だ。
    第一章 「情報」は「真実を示すもの」ではなく「何かと何か、人と人を結びつけるもの」だ。
    第二章 「情報ネットワーク(つまりネクサス)」は「真実」や「情報の操作法」を生み出すが、「秩序を生み出す」こともする。そのために「物語」を作り出す。例えば「マンモスを狩る」には弓や落とし穴の作り方。急所の場所などを情報として皆に共有するが、「命知らずに立ち向かうために勇敢な狩人は英雄である」という「物語」も必要になり生み出す。
    第三章 ネクサスは「秩序を生み出す」ため「物語」だけでなく「文書」も生み出した。これを使う者を「官僚」という。文書を使うことで複雑な社会インフラを作り上げ人類に貢献したが、同時に多くの犠牲を生み出した。
    第四章 聖書・クルアーンなどは「文書」の進化番としての特徴がある。「不可謬」だ。実際は「神の言葉」ではなく何百年かけて加筆修正して完成した。しかし完成後、時代の進化や、持ち込まれた場所の地域性と齟齬がうまれることが出てきたので「解釈者」が生まれた。ラビや司教や法学者と呼ばれる者。彼らは教会等を作り強力な社会的影響と特権を手に入れた。問題は「聖職者は間違いを犯すが聖典は不可謬」であること。だから修正プログラムが働かない。そこで出てきたのが自己修正プログラムを持つ「科学」。しかしこれにも問題がある。自己修正で常に「真実の変更可能性」を維持出来るが、「秩序」は維持出来ない。むしろ「新たに修正された真実」が出現すると「秩序」は乱される。
    第五章 宗教に代わり秩序をもたらす存在としてイデオロギーが登場。イデオロギーは、技術革新で生まれた新聞・ラジオなど新たな情報ネットワークにより機能した。イデオロギーには民主制と独裁制がある。民主制は複雑で多くの人々が参加する複雑なシステム。そして政府に多くの制限を課す。なぜなら誰もが、どんな組織もが(国で一番強い権力を持つ政府も)可謬性を持っているから。ただ民主制はそれまで社会情勢に関与しなかったマイノリティを参加させ、社会の統一的方針を定められなくなる。秩序は定まらない。一方独裁制は新情報ネットワークにより宗教が実現出来なかった強力な秩序を生み出した。しかし可謬性を認めないので、硬直して歪んだ社会を生み出す。民主制と独裁制の対立は21世紀初頭に民主制の勝利として終わると思われたが、ここに更なる新情報ネットワークが生まれる。webやAIだ。人類社会は「民主制vs独裁制の対立」ではなく「人類vs人間以外の知能」になっていくかもしれない(後半に続く)

    16世紀に成立したポーランド=リトアニア共和国は、現代の感覚ではまだまだ「民主主義」と言えないとはいえ世界初の民主主義国だった。制限された人口内5%の男子に選挙権が与えられ、王と議会議員を選んだ。この国は現在のポーランド、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ領の大半を占めていた209

    円滑に機能している民主社会では、国民は選挙の結果や裁判所の判決、報道機関の記事、科学分野の発見を信頼する。なぜならそれらの機関が真実の追放に献身的に取り組んでいると信じているからだ。ところが、人々は「力こそが唯一の現実である」といったん考え始めると、選挙や裁判、報道、科学などへの信頼を失い、民主主義が崩壊し、強権的な指導者があらゆる権力を奪うことが可能になる194

    ポピュリストは民主主義にとって重大な脅威だ。「人民」には多様な意見や利権団体が含まれていることを否定する。本当の人民は一つの意見しか持たず、その意見を代表するのは「自分たちだけ」だと言い張る。自分たちの意見に反対する者を「洗脳されている」か「国民ではない」と批判する。それが人民の多数派であっても。自分たちの間違いや都合の悪い事をメディアや裁判所が暴いた場合、「陰謀だ」「でっち上げだ」と批判する。彼らにとって世界の全ては「力による弱肉強食の権力闘争」なのだ。こういう間違った思想で選挙に挑むのがナチ党や共産党だ190

    選挙と温暖化。温暖化でキリバスが沈み白熊が絶滅し、私たちの子供が辛い生活を送ろうとも、無尽蔵に石油を使い経済成長をしていく選択を表明する政治家に投票しても良い。これらの政策を科学者が禁止することもダメ。しかし逆に政治家が「温暖化は嘘だ」と公約にしたり、科学者を追放したりすることもダメ186

    聖書では子ヤギを母ヤギの乳で煮るのを禁じている。これを文字通り解釈した人たちは子ヤギ肉を別の雌ヤギの乳や、牛乳で煮るのはOKとした。しかしこれをはるかに広い意味で解釈した人たちは「肉と乳製品を混ぜてはならない」とした(これを多くのラビは支持)。そしてフライドチキンセットのドリンクをミルクシェイクにするのは戒律違反になる。鶏は乳を出さないのに129

    イスラエルが現在強力な軍事国家になったのは、20世紀初めに活躍したウクライナユダヤ人の詩人ハイム・ビアリクの影響。『虐殺の町にて』でロシアに虐殺凌辱されるユダヤ人が、逃げて祈るばかりで(虐殺後も)何もしなかった反戦主義のユダヤ人を痛烈に批判。イスラエルでビアリクは国民詩人。中東戦争も部分的にはビアリクのせい82

    ドイツ人はナチスを通過せず自由民主主義を手に入れられた可能性はある。なぜなら歴史は、決定論的な力関係によってではなく、魅力的ではあるが有害な物語を信じることから起こる悲劇的な間違いによって決まる場合が多いからだ70

    「情報とは真実を提示するもの」は本当か。空の星は天文学者にも占星術師にとっても「情報」である。しかし占星術占いの結果で結婚を決めたとしたら「真実の提示」なのか。つまり「情報」の定義とは「物事を提示ではなく、物事を結びつけ」して「新しい現実を創り出すもの」なのである46

    ポピュリズムとはどんな定義か。「社会は『高潔な人民』と『腐敗したエリート』という二つの、それぞれ同質で互いに対立する集団に最終的に分けられると考えるイデオロギー」とカス・ミュデは言った。マルクスを初め初期型の左派の思想、逆にトランプやQアノンの思想もこのポピュリズムだ25

  • 脳の筋トレのような本でした。
    色々な宗教の成り立ち、いまに至るまでの闇。
    あの国が農業大国になれなかった本当の理由。
    世の中をハンドリングしたい人たちは、最新のテクノロジーやAIに何をみているのか。
    下巻が楽しみです。

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著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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