- 河出書房新社 (2025年3月5日発売)
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感想・レビュー・書評
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オーディブルで聴了。
『サピエンス全史』以来、毎回楽しみにしているハラリの新作。今回は「情報」に焦点を当てた人類史で、知的刺激がたっぷりでした。
情報が自由に出回れば真実が残る——そんな素朴な信念を皮肉交じりに否定し、科学と宗教の違いを「誤りを訂正できるかどうか」で説明するくだりに深く共感しました。
印刷技術が魔女狩りを助長し、さらに全体主義国家が情報を集約して加速させた流れはスリリング。そこから、AIがもたらす“量と質の変化”への伏線として下巻に続いていく構成も秀逸に感じました。
引き続き下巻が楽しみです。
ちなみに個人的には、現実を無理に分類に押し込む官僚の描写に思わず笑ってしまった。現代の入力フォームの不自由さと重なって、妙にリアルでした。 -
弁護士や政治家や実業家は、憲法や平和条約や商事契約を起草するときには、一語一語について何週間も、ことによると何か月も議論を戦わせる。なぜなら彼らは、それらを記した紙が途方もない力を振るうことを承知しているからだ。
一言一句が結構な方々に影響する可能性のある業務に携わっています。見る方々の理解レベルも様々で、想像できる限りあらゆるケースや人を想定して文書を作成せねばなりません。責任重大です。 -
NEXUS 上 ハラリ 河出書房
有限が孕む無限性
完全なる唯一なるモノが
歪むことで出現した物質界は
もがけばもがく程に
自らの重さと摩擦でガンジガラメに陥る矛盾をどうすることもできない
透明度を極めるほど
混沌とした闇も広がり
捉えどころがない
調和と言う無限の一瞬をつかめど
暴力の前には虚しく空を掴んでいる自分に帰すメビウスの輪
限りある筈の有限界と
限りない無限は同じであると同時に
果てしの無い関係にある
それは競争社会と切磋琢磨の関係と瓜二つ
フラクタル
この世とあの世の相対関係
真理を中心とする無限球の内側は歪みのない唯一の空っぽだった
ある時そこに己を知りたいと言うヒラメキが起こった
同時にこの欲望を叶える為に「空っぽ」は鏡像である三次元重力場における摩擦界である有限界で埋め尽くされた
そこは唯一であった真球と相対する物質界である
中心から外へ向かうほど反面教師としての競争原理にもとづき
分断が激しくなり要領よく悪魔化して行く世界となる
中心へ向かうほど調和を目指して切磋琢磨する相乗効果を得ると同じくして
全体観によるバカとも言えるお人好しになる
悪魔化の飽和状態で鏡を通り抜けて本質であろう無限球となる
無限と有限=一次元と二次元を含むゼロ次元と三次元=あの世とこの世=波動と粒子の相対関係ですべてが成り立つのであろう
しかしその本質は果てしのない物語なのだ
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十分な量の情報があれば真実につながり、その真実が力と知恵につながる、という素朴な見方
あるいは
情報は武器、力だと見る、ポピュリズム的な見方
これらの極端な見方ではなく、希望に満ちた見方
情報は現実を必ずしも表すとは限らないが、つねに人や物事を結びつける。
客観的現実か、共同主観的現実か -
オーディブルで流し聴きました。宗教は神が全てを知っているという前提に立ち、科学は人間は無知であるという前提に立っているのが大きな違いで、科学は今までの説や論を覆すことによって発展して来たが、宗教は神がひっくり返されることはなく、閉鎖的で発展しない。あるとしても経典の解釈が変わるだけ。
このような図式が、民主主義と全体主義や社会主義の違いにも構図としてある。民主主義は、誰もが意見することにより、自己修正メカニズムが働いて適切に発展していくが、ファシズムやロシア共産主義のような誰もなにも言えない環境では自己修正メカニズムが働かず、世界の運営がうまく行かない。同じロジックで魔女狩りも止められなかった。
今のアメリカのトランプ全体主義も、逆らったら消されるような環境は、自己修正メカニズムが働かずにダークサイドに引きずり込まれそうな環境なのだなと思った。 -
半分くらいまで読んだ。
ただ何が言いたいのかわからなくて辞めた。
宗教や科学が出てきて、不可謬みたいな話まではギリわかったけど結局何が言いたいのかがわからず。
これは知識の問題なのかな -
下巻に記載。
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劇的だ。勇気と力をもらっている。
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これまでの人類史解読アプローチから特に「情報」にスポットをあてた書。ここには著者のAI危機派としての思想が反映されている。「NEXUS」は「結びつき・つながり・絆」という意味。「情報」は真実の提示ではなく、「人や物事を結びつけて新たな現実を創り出すもの」と著者は定義しており、この結びつき(NEXUS)により「真実」「正しいこと」が生み出されるとは限らない、というのが本書の主旨。またおそらく本書はMAGAやトランプ政治への現在最も分かりやすい分析として有効だ。
第一章 「情報」は「真実を示すもの」ではなく「何かと何か、人と人を結びつけるもの」だ。
第二章 「情報ネットワーク(つまりネクサス)」は「真実」や「情報の操作法」を生み出すが、「秩序を生み出す」こともする。そのために「物語」を作り出す。例えば「マンモスを狩る」には弓や落とし穴の作り方。急所の場所などを情報として皆に共有するが、「命知らずに立ち向かうために勇敢な狩人は英雄である」という「物語」も必要になり生み出す。
第三章 ネクサスは「秩序を生み出す」ため「物語」だけでなく「文書」も生み出した。これを使う者を「官僚」という。文書を使うことで複雑な社会インフラを作り上げ人類に貢献したが、同時に多くの犠牲を生み出した。
第四章 聖書・クルアーンなどは「文書」の進化番としての特徴がある。「不可謬」だ。実際は「神の言葉」ではなく何百年かけて加筆修正して完成した。しかし完成後、時代の進化や、持ち込まれた場所の地域性と齟齬がうまれることが出てきたので「解釈者」が生まれた。ラビや司教や法学者と呼ばれる者。彼らは教会等を作り強力な社会的影響と特権を手に入れた。問題は「聖職者は間違いを犯すが聖典は不可謬」であること。だから修正プログラムが働かない。そこで出てきたのが自己修正プログラムを持つ「科学」。しかしこれにも問題がある。自己修正で常に「真実の変更可能性」を維持出来るが、「秩序」は維持出来ない。むしろ「新たに修正された真実」が出現すると「秩序」は乱される。
第五章 宗教に代わり秩序をもたらす存在としてイデオロギーが登場。イデオロギーは、技術革新で生まれた新聞・ラジオなど新たな情報ネットワークにより機能した。イデオロギーには民主制と独裁制がある。民主制は複雑で多くの人々が参加する複雑なシステム。そして政府に多くの制限を課す。なぜなら誰もが、どんな組織もが(国で一番強い権力を持つ政府も)可謬性を持っているから。ただ民主制はそれまで社会情勢に関与しなかったマイノリティを参加させ、社会の統一的方針を定められなくなる。秩序は定まらない。一方独裁制は新情報ネットワークにより宗教が実現出来なかった強力な秩序を生み出した。しかし可謬性を認めないので、硬直して歪んだ社会を生み出す。民主制と独裁制の対立は21世紀初頭に民主制の勝利として終わると思われたが、ここに更なる新情報ネットワークが生まれる。webやAIだ。人類社会は「民主制vs独裁制の対立」ではなく「人類vs人間以外の知能」になっていくかもしれない(後半に続く)
16世紀に成立したポーランド=リトアニア共和国は、現代の感覚ではまだまだ「民主主義」と言えないとはいえ世界初の民主主義国だった。制限された人口内5%の男子に選挙権が与えられ、王と議会議員を選んだ。この国は現在のポーランド、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ領の大半を占めていた209
円滑に機能している民主社会では、国民は選挙の結果や裁判所の判決、報道機関の記事、科学分野の発見を信頼する。なぜならそれらの機関が真実の追放に献身的に取り組んでいると信じているからだ。ところが、人々は「力こそが唯一の現実である」といったん考え始めると、選挙や裁判、報道、科学などへの信頼を失い、民主主義が崩壊し、強権的な指導者があらゆる権力を奪うことが可能になる194
ポピュリストは民主主義にとって重大な脅威だ。「人民」には多様な意見や利権団体が含まれていることを否定する。本当の人民は一つの意見しか持たず、その意見を代表するのは「自分たちだけ」だと言い張る。自分たちの意見に反対する者を「洗脳されている」か「国民ではない」と批判する。それが人民の多数派であっても。自分たちの間違いや都合の悪い事をメディアや裁判所が暴いた場合、「陰謀だ」「でっち上げだ」と批判する。彼らにとって世界の全ては「力による弱肉強食の権力闘争」なのだ。こういう間違った思想で選挙に挑むのがナチ党や共産党だ190
選挙と温暖化。温暖化でキリバスが沈み白熊が絶滅し、私たちの子供が辛い生活を送ろうとも、無尽蔵に石油を使い経済成長をしていく選択を表明する政治家に投票しても良い。これらの政策を科学者が禁止することもダメ。しかし逆に政治家が「温暖化は嘘だ」と公約にしたり、科学者を追放したりすることもダメ186
聖書では子ヤギを母ヤギの乳で煮るのを禁じている。これを文字通り解釈した人たちは子ヤギ肉を別の雌ヤギの乳や、牛乳で煮るのはOKとした。しかしこれをはるかに広い意味で解釈した人たちは「肉と乳製品を混ぜてはならない」とした(これを多くのラビは支持)。そしてフライドチキンセットのドリンクをミルクシェイクにするのは戒律違反になる。鶏は乳を出さないのに129
イスラエルが現在強力な軍事国家になったのは、20世紀初めに活躍したウクライナユダヤ人の詩人ハイム・ビアリクの影響。『虐殺の町にて』でロシアに虐殺凌辱されるユダヤ人が、逃げて祈るばかりで(虐殺後も)何もしなかった反戦主義のユダヤ人を痛烈に批判。イスラエルでビアリクは国民詩人。中東戦争も部分的にはビアリクのせい82
ドイツ人はナチスを通過せず自由民主主義を手に入れられた可能性はある。なぜなら歴史は、決定論的な力関係によってではなく、魅力的ではあるが有害な物語を信じることから起こる悲劇的な間違いによって決まる場合が多いからだ70
「情報とは真実を提示するもの」は本当か。空の星は天文学者にも占星術師にとっても「情報」である。しかし占星術占いの結果で結婚を決めたとしたら「真実の提示」なのか。つまり「情報」の定義とは「物事を提示ではなく、物事を結びつけ」して「新しい現実を創り出すもの」なのである46
ポピュリズムとはどんな定義か。「社会は『高潔な人民』と『腐敗したエリート』という二つの、それぞれ同質で互いに対立する集団に最終的に分けられると考えるイデオロギー」とカス・ミュデは言った。マルクスを初め初期型の左派の思想、逆にトランプやQアノンの思想もこのポピュリズムだ25 -
脳の筋トレのような本でした。
色々な宗教の成り立ち、いまに至るまでの闇。
あの国が農業大国になれなかった本当の理由。
世の中をハンドリングしたい人たちは、最新のテクノロジーやAIに何をみているのか。
下巻が楽しみです。
著者プロフィール
ユヴァル・ノア・ハラリの作品
