星を掬う (中公文庫) [Kindle]

  • 中央公論新社 (2024年9月25日発売)
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本 ・電子書籍 (335ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 町田そのこさんの作品であることに興味を持ちながらも、「星を掬う」というタイトルからはどのようなテーマの作品なのか想像できないまま読み始めた。

    母親に捨てられた・母親を捨てた母娘の物語。元夫のDVから逃げ出した主人公が母親の家に逃げ込み、主人公と同様に普通の母娘関係を築けなかった同居人の女達と一緒に暮らすことになるのだが、既に母親は若年性認知症に侵されいた。

    タイトルについての疑問の答えは作品中のこの文章で明かされる。
    「手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
    そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。」
    認知症の母親が時折「掬いとる」過去の記憶⋯

    すれ違う母娘の思い、主人公や同居人にに襲いかかる恐怖。辛いストーリー展開になかなか読み進められなかったこともあったが、ラストは感動してあっという間に読み終えた。
    予想を上回る良い作品でした。

  • 「自分の人生が上手くいかない原因を親や家庭環境のせいにするな」という結城さんの台詞にはっとさせられた。
    人は皆大なり小なり痛みや悩みを抱えて生きている。
    何か上手くいかない時に人に当たったり、誰かのせいにしたりする事がある自分を見つめ直すきっかけになった。
    もし自分の記憶が曖昧になっても、記憶の海から美しい記憶だけを掬い上げられたらいいな。

  • 星3.5

    親に捨てられた過去を持つひと
    性的な対象に晒された過去を持つひと
    子に捨てられた過去を持つひと
    DV、認知症、言葉に並べると様々な要素が多いストーリーだがバランスよく絡み合ってゆく
    私の人生は私のもの、と言う言葉は我儘さを孕んでいるが”生きていく”覚悟も感じる

    星を掬うというタイトルの通り、認知症の方は、自身の思い出の世界の中で生きていると感じる事が多い
    時に幼少期や、青年期など若かりし頃の思い出である事が多い

    しかし、認知症でなくとも幸せな思い出が日々の糧になる事があるのではないかと思う
    思い出の続きを一緒に見たいと思う相手が、自分にとってかけがえのない人なのだと再認識できた一冊

  • 家族、近い人へなかなか素直になれなかったり、みんな何か生きづらく抱えてるものがある中少しずつ気持ちを伝え合い関係が変化していくのが心を奪われました。星を掬う素敵な表現です。私も大切な星を掬いながら大切な人たちへの感謝の気持ちを忘れず伝えていきたいと思います。

  • なんだろう、感情が先行してしまいうまく感想がまとまらない。書いては消している。

    つらくて何度も泣いてしまい途中で読むのをやめそうになった。

    千鶴が、聖子の中にある星を掬えたことは本当に奇跡みたいなこと。よかった。ほんとに。

    またふとした時に何かかけそうだったら書き足す。本日はこれまで。。。

  • 自分が母という立場になったから、もう一度読みたくて文庫になったタイミングで再読。
    再読なのにまー号泣した。やっぱり町田そのこ作品で1番好きな作品だ。
    母と娘の色んな繋がり。母と娘って、なまじへその緒で繋がってたからこそ同一視してしまいがちな気がするけど、それぞれがそれぞれの人生に責任を持って歩んでいくべきの存在なんだよね。その人生の中で、お互いの存在が、過ごした日々が『いっとう輝くうつくしい星』であれたらそれでいい。

  • かつて親に対して拗らせた呪いがある人、その呪いによって生きづらいなって経験をした人にはすっごくすっごく刺さると思いました

    とにかくあらゆる描写がリアルでひぇって声が出そうなくらい、生々しかった、どん底の表現がほんとにすごい
    ずっとずっとどん底だからこそ、ずっと拗らせてたからこそ、いろんなことに気付いてどんどん乗り越えてゆく主人公にあたたかい気持ちになったな


    自分が主人公のようにまだ呪いの途中の人だったら苦しくて仕方なかったのかなって思ってしまったり、わからないけれど、
    今このタイミングで巡り会えたのすごく幸せだなっておもったよ

  • 終盤まで主人公や周りの生きにくさがリアルに描かれていて読んでいて苦しくなった。
    ただ母の愛情はどんな形であれ伝わるとここまで心強いものかと思い知らされた。

    現実でもこのような救いが全ての人にあることを願う。

  • DVをうけて逃げ出した主人公が転がり込んだのは、小学生の時にいなくなった母親と20数年ぶりの同居生活。しかしその母親は〜というストーリー。
    自分の人生は自分のもの。他の誰かのものじゃないし、他の誰かのせいでもない、全部自分が選んだことだし、他人のせいなんかじゃないのだ。
    自分を掬うのは自分なのだ。他人を変えようとは思ったら自分を変えなくてはいけない。

  • 題名の意味を考えながら,ストーリーを読み進めるのですが,最後の最後になるほど!
    という心温まるストーリー

    それぞれの想いがあって,行動を起こす。
    その想いに相手は気付くことはなく,本人が想ったのと正反対の印象を感じている。
    そんな想いの錯綜がそれぞれあり,まさかの数十年ぶりに再会し,その想いの感じ方,それからそれまで生きてきた人生。。。
    色んな要素が最後に特にギュッとなっていて素敵です。

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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