ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで (中公新書) [Kindle]

  • 中央公論新社 (2025年1月25日発売)
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みんなの感想まとめ

ユダヤ人の歴史を古代から現代までの壮大な流れで描いた本書は、聖書やさまざまな資料を通じてユダヤ人の実像に迫ります。彼らの歴史を知ることで、苦難を乗り越えながら自らを変革してきたユダヤ人の生き方や、その...

感想・レビュー・書評

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  • ユダヤ人の歴史を、古代から現在に至るまで、大きな流れとして壮大に描かれています。聖書等の記述や資料から、ユダヤ人の実像に迫られています。ユダヤ人以外の(時代、人々、空間)との関わりの資料から、彼らの語る歴史や道のりについて、真実と思われる部分とそうでない部分が理解できます。そのようにして、ユダヤ人の苦難の歴史と、それによって自らを変革してきた彼らの生き方、そこから各地のユダヤ人が多様化していることを知ることができます。歴史的に大きな出来事に巻き込まれ、そのそばに居るがために誤解もされてきたこと。まさに世界史に関わってきた存在であること。そこから現在、ニュースにも頻出するほどの行動を起こす理由について、その歴史的な事由を理解することができます。

  • 第一次世界大戦前後よりさらに前のユダヤ人を取り巻く状況、高校世界史だと抜けがちなので、たいへん勉強になりました。

  • 「想像上の民族対立」という言葉が度々登場した。
    例えば14世紀後半の、ヨーロッパでのペスト流行での反ユダヤ的デマ。
    ソ連とドイツに挟まれた地域(ポーランドなど東欧地域)での農民主導のポグロム。
    ※(погром、パグローム)とは、ロシア語で「破滅」、「破壊」を意味する言葉である。特定の意味が派生する場合には、加害者の如何を問わず、ユダヤ人に対し行なわれる集団的迫害行為(殺戮・略奪・破壊・差別)を言う(Wikipediaより)

    冒頭のページ、ユダヤ人が拠点とした都市間ネットワークや移民の動きの概説図を見ると、いかにユダヤ人が様々に離散(ディアスポラ)しながら生きてきたかがわかる。それぞれの地域の法をふまえながらも、ユダヤ人としての教えを絶やさずに。

    宗教の違い、特にイスラーム、ユダヤ、キリスト教に於けるそれは根本にしているものが同じなだけに相互に認め合うのが難しいだろうと、想像はできる。十字軍の辺りが何となくポイントなのかなと感じた。今に繋がる西欧中心主義の始まりって。不利益を被っていること、自分が不幸なことを、自分と違う見た目や立場の存在、少数派、もしくは、そうであるにも関わらず自分よりも裕福である存在に対する一方的な憎悪。人種、という概念はあまりに乱暴な振り分けで、それなのに〇〇人、という括りで相手も自分も括ってしまう、その囲いで守られでもするように。「想像上の民族対立」が生まれる経緯だ。今よく知られているホロコーストは、ナチ・ドイツが絶対悪という話が主流で、農民主導のポグロムについてはあまり語られず、謝罪もないらしい。

    この本を読んでいると、今まさに世界史を学んでいる高校生が読んだとき、偏った見方をすることのないよう注意深く書かれているのがよくわかる。古代から現代まで、3000年を語る中で、どうしたって浮かび上がるのは差別だ。ましてや、女性に関する歴史は、ジェンダー観が今と昔でははるかに違う。それを、歴史の事実は事実として記述しながら、現代に置き換えた場合や、この考え方の間違いなどを示している。そこが素晴らしいなと思った。

    また、ユダヤ教は法が絶対であるので、文字が読めることが重要だったことや、法の理解という点で論理的思考をする為、優秀な人が多く輩出されてきた、という話に、改めて教育の大切さを感じた。

    ⚫︎ヴォロディミル・ゼレンシキー(ウクライナ大統領)
    ⚫︎ベンヤミン・ネタニヤフ(イスラエル首相)
    ⚫︎エレナ・ケイガン(アメリカ連邦最高裁判所判事)

    住む場所、立場、考え方。全く違う現代のユダヤ人3人がむすびに紹介される。3000年を経て今、歴史の巡り合わせと組み合わせからウクライナ、イスラエル、アメリカを「ユダヤ人」的なものから捉える思考と、その国の成り立ちから捉える思考が必要なんだと感じた。
    暗記科目じゃないんだよなあ、、と改めて思う。

  •  鶴見太郎さんの『ユダヤ人の歴史』を読みました。新聞をめくっていると「ユダヤ人三千年を一冊で」という見出しの書評に目がとまりました。書評の筆者が「読者として歴史家として、思いも寄らない企画・書物を形にした勇断と力量に拍手を送りたい」と書いています。へぇ〜そんなにスゴイんだ!と俄然興味がわきあがって本書を手にしました。

     見開き1ページの世界地図が強く印象に残ります。はじめの方に出てくる「ユダヤ人が拠点とした都市間ネットワークや移民の動き」を示す世界地図です。中近東やヨーロッパのいくつかのハブを中心に五大陸の各地との間に描かれる幾多の放物線。まるで航空機の路線図のような。本書に出てくるユダヤ人の足跡を記した概説図なのです。古代から近現代に至る長い歴史の中で、ユダヤ人がいかに移動を繰り返してきたかを、全世界に多くの拠点を作ってきたことを、視覚的に直感的に感じることができます。

     わたしが今まで知っていたユダヤ人の歴史は、古代のバビロン捕囚や民族離散や一神教の成立、近現代のホロコーストやシオニズム、現在のイスラエルをめぐる動き・・・それくらい。高校の世界史で学んだ記憶であったり、現代史への興味から様々な媒体で観たり聴いたり読んだりしつつ吸収してきたもの。それも表面的で断片的な知識です。古代末期から中世、近世に至る長い歴史はほとんど知りませんでした。シェイクスピア『ヴェニスの商人』の高利貸しシャイロックのイメージくらい。本書を読んでユダヤ人三千年の歴史が何となく繋がり、より深く理解することができたように思います。

     忘れられない一節があります。「人生は組み合わせである。重要なのは、何と何が組み合わさってそのような結果になったのか、ということだ。」「組み合わせは、巡り合わせのような偶然かもしれないし、自ら特定の組み合わせを狙うこともあるだろう。」と筆者はユダヤ人を念頭に書いています。だいぶ進んできた現在進行形のわたしの人生を考えてみても思いあたる節がある。そうなんだよなぁ〜思わず深くうなずいてしまう。

     ユダヤ人はディアスポラ以降の歴史の大半の時代と場所でマイノリティでした。彼らはさまざまなものと組み合わさって自らも変容をとげます。マジョリティが築いた構造と格闘したり、その構造を活かす道を考えたり、複数の構造を組み合わせて第三のものを作り出したりしてきました。著者はそう指摘しています。であるならぱ、現在のイスラエルとパレスチナを巡る問題も、ディアスポラとしての両民族の歴史を踏まえたうえで、『ガザの光』でどなたかが言っていたような共存共栄の「第三の道」に進む未来が期待できるのではないか。本書を読んでそう感じてしまいます。軽々に言えることではありませんが。

     320ページの中公新書で、古代から現代に至るユダヤ人三千年の歴史を、急ぎ足ではあるけれど通読することができました。著者も「はじめに」に書いていますが、本書は世界史を学ぶ学生の方々や世界史に興味を持つ皆さんに読むことを薦めたい。価値ある一冊です。

  • なんでイスラエルは、という素朴な疑問から手に取った本。研究書であり論文であり、おそらく違う論点というか主張を持つ人もいるのだろうとは思うが、今イスラエルで起きていることにつながるものがなんとなくわかったような気にさせてもらった。そもそもユダヤ人と呼ばれる人たちがなぜ世界中に広がっていったのかということも、おぼろげに理解できたと思う。

  • キリスト教とユダヤ教の関係とか、ガザで起きている件とか本で読んでみるものの、部分的な理解なんだろうなと思っていた。
    この「ユダヤ人」という定義にフォーカスし、その歴史を徹底的にたどっていくという視点が面白い。
    どうしてこういうことを引き起こす「人間の感情」が起こるのかということを説明してくれているので、その時代に身を置いた気になって理解できるところがすごい。まあ、本当のリアルさはないのだけれど、人間としてそれはそういう気持ちになるなあということを実感するという感じかな。
    こういう人間の感情から引き起こされたことの積み重ねというか、感情の影響が表出していく出来事が途切れず起こることで歴史は今も紡がれているのだなと本筋以外のところでも感じるものがあった。
    とても専門的な話もでてくるけれど、丁寧に読めば理解できる。自分は言葉の意味を忘れてしまうので、途中何度もググって意味を確認した。まあそれくらいの努力は必要ではあった。
    良書。

  • 鶴見太郎「ユダヤ人の歴史」(中公新書)
    旧約聖書に描かれた時代から現在に至るまでのユダヤ人の歴史を描く。ユダヤ人は度々迫害されたが、その原因として彼らが領主階級と農民の中間で現地管理者の職務に就くことが多かったからとしている。政情が安定している間は良いが領主支配が揺らいだ時に農民層から槍玉に上がる立場になることが多かった。また彼らがそういう立場に立った理由として、文字で書かれた律法を重視する彼らの識字率が高かったことを上げている。同じ理由で金融業を営む人も多かった。

    以下あらすじ
    1. ユダヤ人はカナン(現在のイスラエル・パレスチナ周辺)で発祥したと思われる。前10世紀あたりに王国を形成したことは事実と思われる。その後、南北に分裂し、北王国は前722年にアッシリアに征服され住民は離散、ユダヤ人としてのアイデンテティは失われた。南王国は前586年にバビロニアに征服され、バビロンなどに強制移住させられた。バビロンでは半自由民として自治が許され、ユダヤ人としての一体性が保たれた。またカナンに残留したユダヤ人もおり、両者の間で交流もあり、その中で独自の一神教が発展したと考えられる。バビロニアがペルシャに征服されるとユダア人はカナンへの帰還を許され、神殿の再興も許される。その結果「神の怒りによる亡国、神の許しによる再興」という観念が定着した。なおユダヤ人すべてがカナンに戻った訳でなくバビロニアに残った人たちもいた。その後、アレクサンドロスの征服に始まるヘレニズムの流れやローマの拡大のなかでユダヤ社会も分裂し、神殿の祭司と律法の教師の対立、ユダヤの伝統を守るものとギリシア・ローマ文化に親しむものの対立がおこり、その中で後にキリスト教を生み出すイエスもでてきた。1世紀にローマ帝国への大規模な反乱がおこり135年にエルサレムの神殿と市街が破壊されディアスポラとしての歴史が始まった。
    2.エルサレムからの追放後のユダヤ人はパレスチナとバビロニアに多く住んでいた。この2大拠点に律法を解釈する学者(ラビ)が集まりユダヤ人の生活の指針を与えるようになった。律法解釈の集成であるタルムードが4世紀にパレスチナで、6世紀にはササン朝ペルシアの統治下にあるバビロニアでも編集された。7世紀にイスラム教が発生し、メソポタミア地方はイスラムの支配下にはいる。そのなかでユダヤ人も帝国に組み込まれるようになり、その拡大とともにユダヤ人の居住空間も拡大した。イベリア半島ではキリスト教の西ゴートがイスラムに征服されたが、イスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ人が入り混じって居住していた。当地のユダヤ人はヘブライ文字を用いるスペイン語の方言(ラディノ語)を話し、スファラディームと呼ばれた。キリスト教の南進(レコンキスタ)とともにイベリア半島ではイスラム教徒が、ついでユダヤ人も追放された。彼らの一部はオランダに、また一部はイスラム諸国に移動した。のちにオスマン帝国ではユダヤ人が重用されることとなった。
    一方、欧州でも中世初期には金融業者として重宝されたが、欧州キリスト教社会自体の商業の発展とともにうとまれフランスやイングランドでは追放された。ドイツでは中央権力が弱いこともあり、諸侯によってはユダヤ人を保護することもあった。ドイツのユダヤ人はヘブライ文字を用いるドイツ語方言(イディシュ語)を用い、アシュケナージムと呼ばれた。ドイツでもあまり歓迎されなくなったユダヤ人はポーランド(当時はリトアニア、ベラルーシ、ウクライナまで広がる大国だった)に移動。ポーランドでは貴族の農園の管理・農民からの徴税を請け負うことが多かった。貴族からみれば重宝な部下、農民からみれば貴族の手先とみえる。その後、コザックによるウクライナの独立運動などが起こるたびにユダヤ人の迫害が発生することになった。貴族など支配層も農民の反感が自らにおよばないようユダヤ人を利用した。
    3.近代に入り、西欧では国民国家が成立した。国家単位では差別は禁止となったが、ユダヤ人の共同体は解体された。法的な差別はなくなるが差別感情が消えたわけではない。19世紀後半、ロシアでアレクサンドル2世が暗殺され、政府がユダヤ人のせいにしたため激しいユダヤ人弾圧(ポグロム)が起きた。当時ポーランドはロシア、ドイツ(プロシア)、オーストリアに分割されていたが、これらの国が対立する中で国境の両側に住むユダヤ人はスパイ扱いされがちだった。そんななかで故地であるパレスチナにユダヤ人の故郷を作ろうとするシオニズム運動が起きた。第一次世界大戦後、ドイツでも激しいユダヤ人排斥運動が起きた。それが最悪のホロコースに発展していったのにはナチスの責任が極めて大きいが、東欧社会の構造的問題も大きい。もっとも多くのユダヤ人が殺されたのはポーランド、次いでソ連、三番目がドイツである。欧州で迫害されたユダヤ人はアメリアに移民することが多かったが1920年代にアメリカが厳しい移民制限をしいたことで行き場を失った人も多かった。
    4. パレスチナではトルコ人地主から土地を購入してユダヤ人が入植していったが、現地で小作をしていたアラブ農民との紛争が大きくなった。1948年にイスラエルの建国が宣言され、やがてユダヤ人がアラブ人を暴力的に追放するようになった。イスラエルでは当初はドイツ・ポーランド系のアシュケナージムが主流であり、当初は集団農業(キブツ)を核とする世俗的・社会主義的な国家であった。イスラエル建国でアラブ世界での反ユダヤ感情が高まったためスファタディームやアラビア語を使用するイスラム圏土着のユダヤ人(ミズラヒーム)も次第にイスラエルに集まり出した。エリートである欧州系ユダヤ人の労働党政権に対して、差別されたと感じるアジア系ユダヤ人が反発して形成したリクードが1970年代以降政権を奪うことになった。社会も宗教主義者も増加し同時に資本主義的にもなった。また1990年代以降はソ連崩壊に伴い、旧ソ連に見切りをつけてイスラエルに移住するユダヤ人も急増した。高学歴の技術者が多く、現在のイスラエルのハイテクを支えてもいる。これらの新来のユダヤ人は概して拡張主義的でパレスチナ人への同情は見られない。「そもそもパレスチナ人という民族はない。アラビア語を話しイスラム教を信じるアラブ人である。広大なアラブ世界の中で居住地を見つければ良いではないか。なぜ貧しいパレスチナの地に執着するのか。」といった態度が典型的だという。

  • ユダヤ人が変えられない構造の中で主体的に道を歩んできたことが分かった。イスラエルの行動原理の根底には世界に対する諦めや強い被害者意識があるのだと感じた。

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著者プロフィール

鶴見太郎(つるみ・たろう)
1965年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。早稲田大学文学学術院教授。主な著書に、『柳田国男とその弟子たち――民俗学を学ぶマルクス主義者』(人文書院、1998年)、『柳田国男――感じたるまゝ』ミネルヴァ書房、2019年)などがある。

「2026年 『柳田国男 現代に生きる思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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