老いの思考法 (文春e-book) [Kindle]

  • 文藝春秋 (2025年3月19日発売)
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    ── 山極 寿一《老いの思考法 20250319 文藝春秋》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B0F1DTLCZC
     
    …… 「日本人は長寿で羨ましい」
     米国に住んでいた頃、現地の友人たちにそう言われるたびに、胸が苦
    しくなった。医療技術の進化によって物理的寿命が延びてはいても、日
    本で「歳をとること」は、不安の方が大きいからだ。
     
     マスコミには老害孤独死」という言葉が溢れ、事故を起こせば薬
    の副作用より「高齢者の運転」が責められ、医療費や社会保障費を押し
    上げて若い世代に負担をかけると批判され、三〇代の経済学者は「解決
    策は高齢者の集団自決」などと平気で言う。流行りの「アンチエイジン
    グ」でさえも、社会のお荷物になる恐怖の前では、年齢の変化に抗い走
    り続けねばという、無言の圧力になるだろう。
     
    『老いの思考法』は、そんな社会が押しつけた負のイメージを吹き飛ば
    す、慈しみに溢れた一冊だ。ますます高速化する日々の中で時間に追わ
    れる私たちも、かつて子供だった頃は、生産性や効率性を考えず、刻々
    と変化する自然に心身を合わせるように生きていた。だからこそ、老い
    と共に、体が自然に合わせるようになってゆく高齢者は、効率という呪
    縛に風穴を開けられるのだと。
      
     科学技術が自然との距離を拡げ、AIが私たちの思考まで先読みする今、
    効率と無縁でいられる老年期には、美しい時間が未来から流れ込んでく
    る。それが、瞬間瞬間を生きられる子供時代に、誰もが手にしていた
    「特権」だと気づかされた時、老いることの価値は、180度意味を変え
    るだろう。
      
     銀色の背中で群れを守るゴリラのように、譲り、伝え、寄り添うとい
    う、江戸時代に花開いた利他と共感文化に、再び息を吹き込めるかどう
    か。著者はその伝統は、日本にこそ力強く息づいていると希望を語り、
    読者に思い出させてくれる。ゆっくりと最終地点に向かう道中に、落と
    してきた大切な物を一つ一つ拾い上げてゆく、そんな幸福な老い方を、
    私たちは選べるのだと。【評者】堤未 果(国際ジャーナリスト)
     
    (20250530 週刊ポスト 20250522)

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著者プロフィール

第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。

「2020年 『人のつながりと世界の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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