意味ある仕事の分配論

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  • 人々が仕事に対して与える「意味」はさまざまである。仕事には例えば、以下のようなさまざまな意味があるだろう。(1)生活するための賃金を得ること、(2)仕事仲間との楽しい
    交流、(3)人々に役立っているという意識、(4)熟練を要する仕事への挑戦、(5)リスクを背負うことのスリル、(6)成功すれば得られるだろう「賞」への期待、(7)共通のコミットメントによって生じる連帯の感覚、(8)仕事における遊びの要素、(9)創造性の発揮、(10)人よりも優ろうとする動機、(11)仕事量や仕事の質に対する評価、(12)経営の意思決定に参加する機会、(13)仕事のペースを自由にコントロールできること、(14)労働者によって民主的に決定する経営への権利、(15)仕事仲間のなかで指導者になることの喜び、(16)任務に対する他者からの信頼、(17)まさかの時のための貯蓄、等々3。

    3 以上は、Arneson [1983: 528-529]のリストを若干修正したものである。

    ーーー
    ここで「アリストテレス原理」は、人間をたんに「より複雑な能力の発揮を求める存在」として規定するのではな
    く、そのような能力の発揮によって他者から承認され、人々が社会全体に結合されることを前提している。これに対してもう一つの「合理的な長期的計画」は、必ずしもそのよう
    な社会結合を前提とせず、各自の個人的な善の構想のみを前提とするものである。ロール
    ズは、アリストテレス的な社会的善と、社会的関係性に還元されない個人的な善という二つの視点から、「意味ある仕事」の特徴を捉えている5。
    こうした二つの「意味ある仕事」の観点から、ロールズは次のような「秩序だった社会」
    を展望した。それはすなわち、誰も他者に隷従することなく、また単調で決まりきった仕
    事の中から選択を迫られるわけでもなく、各人が自分の自然な本性の諸要素を適切に表現
    することができるような仕事に就けるような社会である。
    ーーー
    に「意味」は、それぞれの個人に分化して評価帰属されるような、個人的な価値で
    あると言える。ただし「意味」は、決して主観的な意識に還元しうるものではなく、間主
    観的な観点から、個人の生に帰属されるものである。意味は、間主観的な視点による評価
    帰属という次元をもっており、その次元において仕事は「意味ある仕事」という実質を受
    け取る。
    ーーー

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著者プロフィール

橋本努(はしもと つとむ)1967年生まれ。北海道大学大学院教授。専門は社会経済学、社会哲学。単著に『自由の論法』(創文社、1994)、『社会科学の人間学』(勁草書房、1999)、『帝国の条件』(弘文堂、2007)『自由に生きるとはどういうことか』(ちくま新書、2007)、『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社選書メチエ、2008)、『自由の社会学』(NTT出版、2010)、『ロスト近代』(弘文堂、2012)、『学問の技法』(ちくま新書、2013) など。 共著に『日本を変える「知」』(光文社、 2009)、『一九七〇年転換期における 『展望』を読む』(筑摩書房、2010)など。

「2014年 『現代の経済思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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