Lolita

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  • Amazon.com ・洋書 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780679723165

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  • 「ロリコン」の生みの親。
    "Lolita, light of my life, fire of my loins. My sin, my soul. Lo-lee-ta: the tip of the tongue taking a trip of three steps down the palate to tap, at three, on the teeth. Lo. Lee. Ta. She was Lo, plain Lo, in the morning, standing four feet ten in one sock. She was Lola in slacks. She was Dolly at school. She was Dolores on the dotted line. But in my arms she was always Lolita."(原文)
    原文の英語で読んだのですが、冒頭の上記一節で雷に打たれたかの様な衝撃を受け、しばし放心。今回本作を紹介するに当たってそのまま転記せずにはいられませんでした。"plain" "slacks" "school" "line"など「L」の音がふんだんに使われ、読むと跳ねる舌は、まさしく主人公の愛玩少女ロリータの子供の姿。そんな彼女が肉欲の対象となっているその皮肉も同時に伝わります。日本語訳では新潮文庫の若島訳より大久保訳の方がしっくり:
    「ロリータ、わが生命のともしび、わが肉のほむら。わが罪、わが魂。ロ、リー、タ。舌のさきが口蓋を三歩進んで、三歩目に軽く歯にあたる。ロ。リー。タ。」(大久保訳)
    「ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩めにそっと歯を叩く。ロ。リー。タ。」(若島訳)
    この一節だけのために本作を読んで欲しいし、この一節が物語の全てを集約していると言っていい。大筋は主人公ハンバート・ハンバートが運命のいたずらから未成年の少女を義娘にするに居たり、ついには手を出し、約一年余り彼女を囲いながらアメリカ中を逃亡する話なのですが、とにかく始終、ナボコフの文才に唸り、悶え、惑わされる事を禁じ得ません。小児性愛を美化しようとする主人公に嫌悪感しか湧かないはずなのに、彼がのたまう愛ゆえの庇護だ、という釈明に呑まれてしまいそうに。ナボコフの絶技に翻弄され、ただ、ただ、悔しいです。
    冒頭が有名な本作ですが、実は最後の一文も酷く美しいので、興味が湧いた方は是非最初から最後までこの美酒の様な作品に酔い痴れてください。

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