本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
- Reader Store ・電子書籍
- / ISBN・EAN: 9784062579810
感想・レビュー・書評
-
量子論の謎であった「もつれ」について、その黎明期から現在まで、物理学者たちにどう語られてきたかが述べられている。有名なアインシュタインとボーアの論争や、EPR論文についての様々な物理学者の反応、さらには「実在とは」という問いに関して、エピソードを交えながら物語風になっていて面白かった。
最初、これは物理学の本だと思って購入したのだが、特に量子論に関する詳細な記述があるわけではなく、個人の書簡や会議での記録、取材をもとにした科学史みたいなものだと思った。ただ、それで期待はずれだったというわけではなく、著名な物理学者の様々な側面が見えて興味深かった。
エーレンフェストの晩年と死、ボームの終戦後の研究生活などは結構衝撃的で、読んでいて胸にくるものがあった。また、ボーアがなかなかコペンハーゲン研究所の独裁者という感じで、それまでの印象が変わってしまった。
21世紀に入り、実験技術も発達し、「もつれ」についての理解は前世紀に比べて大きく前進した。量子論は現代では情報理論だと言われている。波動関数は知識の束であり、物理学では局所的な実在というものは否定されている。
エピローグでのフックスの言葉は印象的だった。「量子論の構造は、物理学について何も語っていない。」、「量子論とは、我々が知っていることを記述する形式的なツールだ。」
量子力学から情報理論を切り離せば何が残るのかというフックスとルドルフの問いはこれからも議論されるのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示
全1件中 1 - 1件を表示