円の興亡

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  • 朝日新聞出版
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  • / ISBN・EAN: 9784023312470

感想・レビュー・書評

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  • あるブログに素敵な知り合いがおりまして、お会いしたことは無いのですが、その方が通貨に関する本を紹介されていて、発売と同時に取り寄せて読みました。

    この本の著者である行天氏は、この本で初めて名前を知りました(この珍しい名字は、沈まぬ太陽の主役の一人ですね)が、凄い経歴の持ち主ですね。円が固定相場制から変動相場制になったころから通産省で活躍されていて、マエストロとして名高い「グリーンスパン氏」ともお知り合いのようです(p175)。

    金(ゴールド)と連動しない通貨制度を世界が採用し始めて、通貨量は劇的に増えましたが、特に増えた部分については裏付けのない借金が積みあがっているということで、いずれ調整が来てすべてご破算になる可能性もありますが、果たしてどうなるのでしょうか。(これは私の単なる私見です)

    行天氏はそれに関して直接回答はされてないように思いましたが、ポンドからドルに移った通貨覇権がどうなるのか(新G5体制となる、p24)、更には、中国の台頭の可能性等について、本書の後半部分で解説されています。

    増税・歳出削減・成長による税の自然増収の3つのバランスの重要性(P248)と、それを実行するためには、高齢化に伴う労働力の確保、近隣のアジア諸国との連携の重要性を説かれています。このような方が、良い意味で影響力を官僚や政治家に及ぼして欲しいものですね。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本の巨額の財政赤字がGDP比較ではギリシア以上とされながら、国債や日本経済の信認が崩れていないできたのは、独自の通貨と中央銀行を有する日本が、適切な経済政策と構造改革によって赤字を克服する能力を備えていると市場関係者が見ているから(p2)

    ・当面は、ドルを中心として、ユーロ・元・円・ポンドが国際通貨として主要な役割を共有する、世界経済の安定には、米国・EU・中国・日本・英国の「新G5]が発言権と負担を公正に分かち合う必要がある(p24)

    ・1971.8.16のドルショックの発表後も、日本は市場を閉鎖せずに、1ドル=360円というそれまでの固定相場で度つを買い続けた。市場を閉鎖すれば、再開時には、変動相場制か円の切り上げしか選択肢がなくなるという判断のもと(p31)

    ・日本は占領下で世界貿易に復帰して、1949年には占領軍の許可を得て、1ドル=360という単一レートができた。それまでは、商品によって複数の為替レートがあった。(p33)

    ・米国はレーガノミックスで強いドルを掲げ、欧州は変動幅と大きいドルから加盟国を守るために1979年にEMSを作って単一の通貨ブロックへ向かう決定的な動きを開始した(p55)

    ・米国は1981年には 1410億ドルの対外純資産の債権国だったが、1985年には1110億ドルの対外純債務をかかえた国に転落した(p74)

    ・長期的に見れば、購買力というのは為替相場を決める唯一最大の要因である(p158)

    ・世界経済の構造的変化とは、1)経済成長パターンの変化、2)金融と情報のグローバリゼーション(国際化)、3)世界経済の重心の移動(p187)

    ・世界の金融資産残高は、世界各国GDPの合計値の60兆ドル、貿易年間総額の15兆ドルをはるかに上回る300兆ドル、デリバティブの想定元本は600兆ドル(p192)

    ・EU危機の原因は、制度の未整備もある、通貨統一の一方で、財政・金融監督規制は、それぞれの国の政府に握られたまま、税制・社会保障も異なる(p201)

    ・ユーロの将来は、ドイツ・オーストリア・オランダ・フィンランドといった経済力の強い国が、弱い国の面倒をどこまで見るかにかかる。悲惨な戦争を繰り返さないよう、統合の道を選んだ歴史があることも大事(p201)

    ・中国はまだリアルエコノミーの要素で米国に遅れている、交換可能性・資本取引の自由化・相場の自由化が欠如している(p206)

    ・中国は1981年に、輸出促進のためのレートと、公定レートの二重相場制を導入したが、1994年に一本化。95年以降は米ドル固定のドルペッグ、2005.7には、管理された変動相場制となり通貨バスケット方式を導入した(p207)

    ・取引決済に使われる通貨の比率は、米ドルとユーロが各36%、円:2.7%、元:0.87%である(p209)

    2013年11月17日作成

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