地獄変 [青空文庫]

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  • 青空文庫
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感想・レビュー・書評

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  • 今までにも読んだことがあったが、宇治拾遺物語の『絵仏師良秀』をたたき台にしているにしては牛車の部分は完全な創作に思えるし、芸術至上主義を描いているのだという評も理解が出来なかった。再読したことでこの疑問を解決する糸口が見えた。

    再読のきっかけは、阿刀田高の『楽しい古事記』を読んでいて、『地獄変』と日本書紀の以下の描写が似ていると思ったことである。第11代垂仁天皇の治世に起きたサホヒコの反乱の結果、サホヒメ(狭穂姫)は火のついた稲城の中で死ぬのである。

    十六の段で檳榔毛の車が焼かれたのは春である。これは、春の女神かつ季語であり、元は佐保山の神霊であったサホヒメ(佐保姫)を思わせる。佐保山にも勢力を伸ばしていた豪族の和珥氏の系譜に、サホヒメ(狭穂姫)があることも意識されているだろうか。

    「雪解の御所」「遣り水の音」「陰」「大殿油の灯影」「金物の黄金」「春」と出てくるのは何れも陰陽五行説を思わせる。陰陽五行説が陰陽道となって律令制に取り込まれたのは第40代天武天皇の治世である。

    平家物語によれば、五位鷺は第60代醍醐天皇より正五位を賜った事が名前の由来とされており、語り手が醍醐天皇の治世以降の視点を持っていることが分かる。

    「御側の者ども」のうち「陸奧の戰ひに餓ゑて人の肉を食つて以來、鹿の生角さへ裂くやうになつたと云ふ強力の侍」は記紀にあるヤマトタケルに関する記述を言っていると思われる。

    十八の段で「流石にあの強力の侍でさへ、思はず色を變へて、畏る〱大殿樣の御顏を仰ぎました。」というのは、西方の征伐を終えて戻ってきたヤマトタケルが東方へ征伐に行くように第12代景行天皇から言われて、「父は自分に死ねと思っておられるのか」と嘆いたとの古事記の記述を指していると思われる。

    十九の段における「獅子王」は、第74代鳥羽天皇に縁起がある名剣とも考えられる。鳥羽天皇は第73代堀河天皇の皇子である。

    全体を通してみると、夏目漱石の『夢十夜』と同様に時代設定が一応されてはいるものの、幅広い時代背景と知識を基に書かれた作品であることが分かる。芥川は記紀をどのように捉えていただろうか。『素戔嗚尊』が改編、改題され『老いたる素戔嗚尊』として発表された事実も併せて考える必要があるだろう。

  •  チョー久しぶりに小説読んだわー!
     こないだ「プレステージ」「カポーティ」といった映画を観てふとこの小説のことを思い出した。
     芸のためなら女房も泣かす~♪ みたいな歌が昔あったらしいが、良秀は芸術のためなら娘も焼き殺すのですな。でも、平気ではいられず自らも命を絶ってしまった。
     芸術は、人の命よりも尊いのかもしれない。二人分の命を吸って燃え上がる地獄変の屏風は、さぞかし素晴らしい出来だろうと思った。

  • すごい迫力。恐ろしい。

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