桃太郎 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
3.67
  • (0)
  • (6)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 32
レビュー : 5
  • 青空文庫 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 題して、「芥川龍之介が贈る最高に基地外じみた桃太郎」。これは誇張でもなんでもなく、マジで基地外じみている。まずその筋書きである。世間一般に知られている桃太郎…かと思いきや、この桃太郎が生まれたのは、地上から天空に至る大きな樹の実の一つで、そこへ八咫烏がやってきて、この実を一つ地上へ落とす。桃の実となって川へ流れたところは皆の知っている桃太郎だが、何とこの桃太郎が鬼退治に行く理由は、「おじいさんやおばあさんのようにあくせく働きたくないから」。日本一の黍団子、と銘打って入るけれども実際に日本一かはわからない。出会った「一つくれ」と言われても、半分しかやらないなど、ケチと怠惰と強欲を煮詰めたような飛んでもない桃太郎がここに爆誕したのである。とかく登場人物が我々の知っている桃太郎と大違いである。
    主人公の桃太郎がこれだけの人物なので、他の登場人物のキャラ立ちも恐ろしい。犬・サル・キジは黍団子欲しさに喧嘩して仲間割れするし、逆に退治される側の鬼は極楽浄土に住んでおり、腰が低く、人間を同族で殺しあうし欲は深い、全くわけのわからない種族だと考えている。平穏に鬼たちが暮らす鬼ヶ島へ、黍団子半分で手懐けた犬サル雉を従えて、放蕩の桃太郎が乗り込んでくる。桃太郎は鬼たちを手当たり次第根絶やしにして、鬼ヶ島の首長たちだけを見逃し、その子供を人質にしながら鬼ヶ島の宝物を引かせて故郷の村に帰っていくのである。。
    ぶっちゃけ子供に読み聞かせたら泣くレベルの代物なのだが、これが文学になった途端に素晴らしく滑稽な話に反転するのだから大変業が深い。というのも、ここに芥川が表そうとしたのは、おそらく人間の恐ろしい一面、浅ましいほどの欲にまみれた一面であるからだ。桃太郎という、大変メジャーなプレテクストを使ってまでそれをやってのけたのがこの人の筆の力なのである。名作を引くということは、それを超える衝撃を与えるほどのものを書かねば人の印象には残らない。この話は、元の話が持つ物語としての文脈を、キャラクター名だけ残してすべて換骨奪胎させ、さらに自身の著作らしさである「人間とは何か」を加えた代物である。
    つまりこれぞ芥川流、最高に基地外じみた桃太郎である。朗読で聞いたが面白くてところどころ笑ってしまった。

  • 無限ループって怖くね?

    勧善懲悪の落とし穴。なんというか黒い。

  • ダークな桃太郎。普通に面白かったー
    昔話のサルや鬼は、別々の話でも同一人物だったのか。笑

  • とんでもない桃太郎がとんでもないことをする、本当は怖い桃太郎。ブラックユーモア。

  • 龍之介の見事な筆致。
    ロシュフーコーのように
    これが真実、真の桃太郎ではないか。

全5件中 1 - 5件を表示

芥川竜之介の作品

ツイートする