藪の中 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  • 『藪の中』芥川龍之介
    本書は、1922年に発表された短編小説であり、芥川龍之介の最後の王朝物作品として知られている。藪の中で起きた殺人事件について、尋問を受けた7人の証言が書き並べられている。しかし、7人それぞれの証言は微妙に食い違い、また誰が真実を語っているのかわからず、真相がますます見えなくなってしまう。「真相は藪の中」という言葉があるが、これは本作から生まれた言葉であるのだ。
    7人の証言者とは、木樵り、旅法師、放免、媼、多襄丸(盗人)、妻(真砂)、夫(金澤の武弘)の霊である。木樵りの証言。自分は第一発見者。山科の駅路から、四、五町離れた、竹の中の痩せた杉があるところで男の死体を発見。胸元のひとつの突き傷はすでに乾いていた。杉の根には、一筋の縄と櫛があっただけ。辺りは一面踏み荒らされていた。馬が入れる場所ではない。旅法師の証言。殺される前日の昼頃に男(夫、金澤)に会っていた。関山から山科の途中、馬に乗った女(妻、真砂)と一緒にいた。女の顔は見えなかった。馬は法師髪の馬。男は太刀と弓矢20本ほどを所持していた。放免の証言。橋の上で唸っていたところを捕縛。多襄丸は太刀と弓矢17本を持っていた。近くに男の妻のものと思われる馬がいた。媼の証言。媼は真砂の母親。金澤の武弘は若狭の侍で26歳、真砂は19歳。娘の真砂は行方不明。多襄丸の証言。男は殺したが、娘は殺していない。昨日の昼過ぎに夫婦とすれ違った際に娘の顔に惹かれ、彼女を奪うことを決意。財宝があると嘘をつき、夫婦を誘導。藪の中にて男を縄で縛り、娘に乱暴した。娘はそのまま立ち去ろうとした自分を止め、「二人の男に恥を見られては生きていけない。夫か、あなたか、どちらか生き残った方についていく」と言った。自分は男の縄をほどき、決闘の末に殺害した。しかしその隙に娘は逃げてしまった。真砂の証言。男に乱暴された後、夫に駆け寄ろうとしたが男に蹴られ、転んだ。夫の瞳には、蔑みの色が浮かんでいた。あまりのショックで気絶し、目覚めたときには男は消えていた。私は夫と一緒に死のうと思い、足元に落ちていた小刀で夫を殺害。そして夫の縄を切り、自分も死のうとしたが、死に切れなかった。夫の証言。盗人は妻を手籠めにした後、彼女を慰めながら自分の妻になれと言った。妻は承諾。藪の中から2人で出て行く際妻は、夫を殺すよう盗人に頼んだ。すると盗人は妻を蹴り飛ばし、自分に向かって「あの女を殺すか、助けるか、お前が決めろ」と言った。答えに迷っているうちに妻は逃走し、盗人も自分の縄を切って逃げていった。その後自分は、落ちていた小刀で自害。意識を失う直前に誰かが来て、胸の小刀を抜いて逃げ去った。

  • 新型コロナウイルスの影響で自宅にいることを昨年と同様に余儀なくされたこの夏、ぜひこの作品に1度目を通して見て欲しい。まずこの作品を読もうと思ったきっかけは友人の影響である。友人は数ある著者の中でも江戸川乱歩が特に好きだと言う。だが、私は本を読む習慣がないため、恥ずかしいことに江戸川乱歩の名前だけしか知らなかった。そこで友人が世間でも有名で中学校、高等学校の教科書などにも紹介されている著者を私に紹介した。そこで私は高校時代に現代文の授業で深く学んだことのある芥川龍之介を選び、彼の作品の中から『藪の中』を手に取った。この作品は「今昔物語集」をもとにした芥川龍之介最後の王朝物語作品として世間でも有名である。
    数多く作品がある中なぜ『藪の中』という作品を選んだのか。「真相は藪の中」この言葉は誰もが聞いたことがあるはずだ。私自身も聞いたことがある。その時に「もしかしたらその言葉と作品が関係あるのかもしれない」と思ったのがきっかけでこの作品を手に取った。この私の予想は的中し、実際に調べてみると語源はこの『藪の中』だと言う。「藪の中」とは"関係者の言うことが食い違うなどして、真相がわからないこと"という意味だ。この作品でとある事件に対して複数人の関係者が証言をしている。揉めごとなどをした時に意見が食い違うという経験は誰もが経験したことがあるはずだ。それによりどれが真実なのか見極めることが困難になる。実際に私も高校生時代にあった揉め事で同じことを体験した。当事者のうちの1人がその責任を負いたくないという気持ちのせいでどれが真実なのか分からなくなってしまい、話がまとまるのにかなり時間が掛かってしまった。結局、両者の意見が食い違い、まさに真相は"藪の中"となってしまった。
    この作品ではサブタイトルを〇〇の物語といった表記をしている。それにより、登場人物のそれぞれの証言が際立つため、あまり本を読む習慣がない人でも飽きることなく最後まで読み切ることができる。また、読み手によって様々な解釈ができ、誰がどのような考えに至ってもそれが真実であるという点において読んでいて深く考えさせられる作品だ。昨今、秋元康が脚本を書いた『あなたの番です』やジャニーズ事務所に所属するSnowManの4人が主演を果たした『簡単なお仕事です。に応募してみた』などのテレビ番組が世間に考察ブームを引き起こした。その考察によって自分の考えが揺らいだ人も多いはずだ。私はそういった考察をすることが得意な人にぜひこの作品を読んでもらいたい。

  • 森見登美彦「新釈走れメロス、他四篇」から遡って原典に来た。
    「藪の中」という言葉がこの作品から来たのを初めて知った。
    スルリと読めるが、謎については全く目処もつかない。
    今まで数多の研究者たちが激論を交わしてきても真相は「藪の中」なのだから当然ではあるが。
    保身なのか錯乱しているのか庇っているのか…現代風アレンジがなくても読み応え、考え応えがある作品。

  • 推理小説のような形をとりながら最後まで犯人が誰か分からない、タイトル通り結末は「藪の中」にある作品です。事情聴取のような形で登場人物それぞれの視点に沿って物語が進むので、読んでいるうちに引き込まれてしまいます。繰り返し深く読み込んでいくことで面白さが増す作品となっているので、ぜひ自分の中で犯人は誰なのか、想像を膨らませながら読んでみてください。

  • ちょうどよくモヤモヤして楽しいよ

  • 黒澤明の「羅生門」を見終わって、読みたくなった。
    もちろん初読ではない。
    芥川の文章はもしかすると音読に耐えうるほどの名文なのかもしれない。
    映画での台詞に丸々使われていたが、脚本で作られた部分と比較して明らかに整然とした格調高い日本語だった。
    むしろ三船敏郎には言わせられないような文章だったから改変したのかもしれないと思った。
    芥川龍之介、若い頃に読んだが50も半ばを過ぎた今読み返すのも楽しそうな気がしてきた。
    どれも短編なのでスマホのアプリで読むにはとてもいいだろう。

  • 短いながらもぐいっと引き込まれる作品。
    薮の中で見つかった男の死体。行方の知れない妻。盗賊の多襄丸。一体誰が男を殺したのか。真相はまさに藪の中。

    小栗旬主演で「TAJOMARU」という映画があるが、それはほぼオリジナルストーリーらしい。

  • 芥川王朝物最後の作品、今昔物語のひとつを基に彼が書き直したもの。
    夢野久作の『瓶詰地獄』や『少女地獄』に通じるところがあり、空想とフィクションの境界の溶けた不思議な話。
    事件の真相を求めることは、やはり芥川の意図した物語の策略に乗っかることであろう。そうでなければ、こんな矛盾した人々の検証をひとつの物語にまとめようとは思わないはずだ。むしろ、こうした人々のうわさ・口伝を通じて真相は形作られるのだという感じがしてならない。主観も客観も、主観の働きによって生まれる。人の世は間主観によって成り立っている。
    酒井紀美の『中世のうわさ』でまとめられていた、うわさが持つ身的・神的な側面というものがよくわかる。うわさをこのような形で人に語らせる芥川の策略には本当に驚かされる。

  •  風邪っぴきでごろごろしながら読んだその3.
     永遠に解けないミステリー。誰が本当のことを言っているんだろう。
     しかし誰の言葉が真実だとしても、この女、相当怖いと思うのですが。。。

  • 皆の証言が食い違っているから、犯人が誰か分からない。まさに真実は「藪の中」。

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