夢 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  • 意味が分かると怖い話と近しいものを感じました。
    やたらと色彩豊かな夢を見ていると思っていたら、それは実は現実であったというのはよくあるネタのように見えます。ですが、これが書かれた時代を考えると、むしろこの作品はそういった意味が分かると怖い話のもとになっているような物語なのではないかと思います。
    例えば今自分たちが生きている現実だって、自分や、他の誰かが見ている長い長い夢かもしれません。でも、私たちが生きている現実が現実であると証明できる人なんていません。この作品のように現実が夢であったところで、誰かに今いるここが現実であると証明されないと夢であることにも気付かないでしょう。作品の「わたし」が夢だと思い込んでいたものが現実であったことに気がついたのも他人の言葉と言う干渉があったからです。
    それに、もし、この現実が夢だと気付いたところで、または夢が現実だと気付いたところで、「わたし」のように取り返しのつかないことをしてしまわなければ問題は起こりません。驚いたりやや影響を受けたり、幸せな時間が終わりを迎えて落胆することはあるかもしれません。ですがそれによって肝が冷えてしまうようなことはほぼありません。
    だからこそ、「わたし」のおかしいところは夢と現実を混同してしまったことではなく、夢の中でなら人を殺してもなんとも思っておらず、夢から覚めたと錯覚しても後ろ向きな感情を一切抱いていないことなのではないかと思いました。現実でないなら何をしてもいいと思い込んでいるその精神状態こそ異常だと言えるのではないでしょうか。
    なんだかんだ、一番この物語で恐ろしいのは、「わたし」が夢の中で殺人を行っていたことが実は現実だったということではなく、「わたし」が夢の中ならいいだろうと人を殺し、それが現実だとわかったところでようやく不安の気持ちを抱いたことなんじゃないかなと思います。その後すぐに切り替えて殺人の罪を疑われないように警戒したこともまた、彼のサイコパスさが出ていて、物語の中で一番恐ろしいのは主人公の精神であるというのがこの物語の面白いところなんじゃないかなと感じました。

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