或る女 2(後編) [青空文庫]

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  • いやあ、すさまじかった!特に主人公が死にゆくまでの心情が!予備知識はあったものの、葉子が心を病んでから見える風景があまりにも写実的でぞくぞくしてしまった。まるで作者自身が葉子になりきっているようで、恐ろしくなった。

    作者の葉子に対する悪意も感じてしまう。彼女の美しさを描きながら、伝わってくるのは果て無い醜さだ。彼女を憎しみぬいて描いているとしか思えない。葉子を倉地と出会わせたのも、彼女を破滅に導くためか。作者は最初からこのラストを想定していたのだろうか。少なくとも前編の中ほどを読んでいるときは、彼女がアメリカで一旗揚げるのだろう、くらいの想定しかできない。

    葉子の描写が主であるが、他のキャラクターもそれぞれ個性的で見逃せない。作者のモデルが古藤とのことで、葉子に対し説教する場面もある。この人物が著者の精神を軌道に乗せる役割を果たしていたのではないだろうか。本作ではっきりと気持ちが表れているのは、主人公のほかに、この古藤のみだと思う。作者は葉子になったり、古藤になったりしながら筆を進めている。とすれば、作者の中の古藤を強い存在にしないと作者自身がつらいだろう。

    葉子にはモデルとなる人物がいるとされるが、著者のあとがきでは、後半の経緯はオリジナルである、といったことを述べている。著者が情死して、モデルの方は長く生きたとのこと、皮肉な運命を感じずにはいられない。

    ここ数日PCの青空文庫ビューアーで読んでいる。とても読みやすく、目が悪い私にとってはとてもありがたい。

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著者プロフィール

1878年、東京生まれ。札幌農学校卒業。アメリカ留学を経て、東北帝国大学農科大学(札幌)で教鞭をとるほか、勤労青少年への教育など社会活動にも取り組む。この時期、雑誌『白樺』同人となり、小説や美術評論などを発表。
大学退職後、東京を拠点に執筆活動に専念。1917年、北海道ニセコを舞台とした小説『カインの末裔』が出世作となる。以降、『生れ出づる悩み』『或る女』などで大正期の文壇において人気作家となる。
1922年、現在のニセコに所有した農場を「相互扶助」の精神に基づき無償解放。1923年、軽井沢で自ら命を絶つ。

「2024年 『一房の葡萄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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