チャンス [青空文庫]

  • 青空文庫 (2000年4月7日発売)
  • 新字新仮名
3.33
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 16
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 青空文庫 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • チャンス」  太宰 治

    「人生はチャンスだ。結婚もチャンスだ。恋愛もチャンスだ。と、したり顔して教える苦労人が多いけれども、私は、そうでないと思う。」「少くとも恋愛は、チャンスでないと思う。私はそれを、意志だと思う。」という印象的な書き出しで始まるのは、太宰治によって書かれたチャンスという「恋愛」について述べたとされる随筆だ。
    太宰治は、波乱万丈な生涯を歩んでおりそんな生涯におけるプライドとコンプレックスの葛藤から生み出した自伝的作品といわれる「富嶽百景」、「人間失格」や物語的作品である「お伽草子」、「走れメロス」 で知られている。入水自殺によって亡くなるまでのわずか39年の人生において挫折や苦難を味わう度に自殺を試みたことでも知られているが、そんな彼のかくチャンスという題名の作品に惹かれたのだ。
    小説と違って随筆なので説明をするのは難しい、というより内容を話してしまうと想像の余地もなくこの後読む人がつまらなくなってしまうので書けない。内容としては、ただひたすらに太宰治の思う恋愛の定義や思うところがあればそれについて語るものだ。随所に自身の体験などが入れられていて、思わずくすっと笑ってしまう部分もあるだろう。
    これを読むにつれ共感する人もいればモヤモヤとした気持ちを抱える人もいるかもしれないが、どの立場の人も一読してみてほしい。読み終えたときと読みはじめではきっと抱く感想は変わってくるはずだ。そして最後に書かれた庭訓が、私たちの背中をそっと押してくれるはずだ。

  • 『ただもう「ふとした事」で恋愛が成立するものとしたら、それは実に卑猥な世相になってしまうであろう。恋愛は意志に依るべきである。恋愛チャンス説は、淫乱に近い。』(本文より)

    「どうしたんだ、太宰治!? 」と思ってしまう、彼の作品の中では珍しい感じの、どこかクスッと笑ってしまうような作品でした。でも、この作品内で展開される太宰の鋭い感性は読む人の心を衝くものがあるし、最後のまとめだって、これも太宰らしいちょっとキザな感じで、結局全部好きなんですよねぇ

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

太宰治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×