駈込み訴え [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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本棚登録 : 77
感想 : 17
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感想・レビュー・書評

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  • 口述筆記で書かれていて、戸惑いながらも一気に読めてしまう魅力的な作品。最後に語り手が何者なのか分かったときには驚いた。私はキリスト教や福音書についてはあまり詳しくなかったので誰なのか予想が出来なかった。勘のいい人は気づいただろうか。これを機にキリスト教について調べてみようと思う。
    語り手ユダのキリストへの愛情や憎悪が書かれていて面白かった。しきりに自分がキリストより「二月遅く生まれた」を言っていることが違和感に思った。そんなに年齢が大事なのか。日本の上下関係的なものを感じる。もしかするとユダはキリストと対等になりたかったのではないだろうか。だから「二人きりで一生永く生きる」と言ったり、足を洗う場面で恍惚としたりしたのではないだろうか。主であり師である人にプロポーズのようなことは言えないし、足を洗わせるなんて出来ないだろう。実際に他の従者たちは戸惑っている。また、ユダのキリストへの恋愛感情的なものも感じる。ただし愛情、憎悪、独占欲、執着がない交ぜになって歪んでいる。正反対の言葉が次の行で出たりしていて本心が分からなくなっている。全部本心であろうが。無報酬の愛と言いながらも受け取ってほしいと言っている。「キリストが死んだら自分も死ぬ」と言っているのに、少し話すと「キリストを殺して自分も死ぬ」と言っている。最後はキリストを密告して自分は生きている。他に「美しい人」と言っているのに「だらしが無え」と言っている。しかし、問題となるのはキリストとユダが同性愛的関係であるかどうかではない。問題なのはどうしてユダの感情が歪んでしまったのかである。キリストはユダからの愛情は受け取らなかったとユダの言葉からうかがえる。与え続けても一向に相手から何も返ってこない。上下関係がなくても無報酬の愛と言っても一向に何も返ってこないのは不平不満が募るだろう。これがユダのキリストへの愛情を歪ませていった原因のひとつだと考えられる。それに、ユダは年老いた父母も土地も捨ててきたと言っている。自分から捨てたのでこれを引き合いに出すのは逆恨みだとは思うが、持っていたものすべて捨ててキリストに尽くしてきた。それなのに、何も返してもらえないことに不平不満が募ったのではないか。
    ユダは最後の晩餐でキリストが寂しいと思っていることに気がついた。そこから私は密告なんてしなくてもいい展開になるのではないかと思った。しかし、キリストからユダに密告を促した。ここでキリストが促さなければ密告されることはなかったと思う。

  • 人間関係のあるあるを感じた。

  • ヨーロッパ文化論の課題で読んだものだが、やはり太宰治の本は難しかった。愛憎に悩むユダのお話なのだが、一回読んだだけでは自分にはよくわからなかった。課題のレポートは大丈夫だろうか。

    おすすめ度:
    ★★★☆☆

    あぶらむし(海洋政策文化学科)

  • この作品は、1940年に太宰が発表した口述筆記の作品である。物語は、一人の男が自らの師の横暴を訴えに来る場面から始まり、そこからずっとその男の語りによって話は進んでゆく。最後の場面では、この作品の主人公はユダであり、師とはキリストであることが明かされる。ユダは、世界的にも裏切りものの代名詞であり、銀30でキリストを裏切ったことから、金銭にがめつい嫌なやつだと思う人も少なくはないのではないか。キリストからの評価も、「生まれなかったほうが、その者のためによかった」と言われているなど、散々な評価である。(『マタイによる福音書』26章24節より)しかし、この作品はそうした従来の「嫌なやつ」とは異なり、「キリストを愛していたからこそ、キリストを憎悪し、裏切りを決意してもなお割り切れない悲しい人間」としてのユダを描いている。聖書内でもキリストではなく、ユダに着目したのは、既成の道徳観に反逆した無頼派の一人である太宰らしい。また、この他にもこの作品の注目すべき点は退廃的な美しさが溢れる真に迫った文章である。これにより、ユダのキリストへの愛憎が、より強調されている。「他人に殺されるくらいなら、いっそこの手であの人を殺したい」と言ってしまうほどの激情が、生々しくも儚く描写されている。また、太宰作品は、『走れメロス』しか読んだことないという人も多いのではないだろうか。この作品は、あの爽やかな文体とは正反対の雰囲気であり、太宰作品の新たな一面が見られるだろう。

  • ユダの情緒が不安定

  • フェリス女学院長の著書に紹介されていたので、ちょっと読んでみた。イエスを裏切った(ことになっている)イスカリオテのユダの独白。2000年前のユダヤ人が、江戸っ子調に喋るのはシュールだが、視点の逆転が面白い。親を桃太郎に退治された鬼の子供CMを思い出したり、ダースベーダーの誕生(スターウォーズ『シスの復讐』)を連想したり。

  • ユダが裏切るまでの心情が、冷静な告白から始まったと思ったら、興奮して来て、半狂乱になって、最後は自分がしたことに、悲しくて、ショックで、とどんどん変わっていくのが凄かった。

  • 来月観に行くお芝居の原作を予習するつもりで
    電子書籍を読んでみました。

    昔のBLなの?と思いながら読み進めるうちに
    語り手の感情がどんどん不安定になって
    戸惑いながらの一気読みでした。

    何度か読み返すか、キリスト教について
    もう少し詳しく知っていたら
    もっと理解できるのかもしれない。

  • キリストへの愛が強すぎるが故に拗じ曲がってしまい、裏切りという形をとってしまったユダの訴えが綴られる。
    愛から憎悪。憎悪から愛へ。
    一瞬で気持ちが変わったと思えば再び揺り戻される。
    ヤンデレのユダの駈け込み訴え。とても面白かった。

  • 個人的には最上の短編。
    段々と増していく愛と狂気のスピード感、怒涛を寸断する最後の一行。衝動的ながらも本当によく作られた印象を受けます。何度読んでも誰かに伝えたくなる作品。

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著者プロフィール

太宰治(だざい おさむ)
1909年、青森県生まれ。本名津島修治。東京帝大仏文科に在学中、酒場の女性と鎌倉の海岸で心中を図り、一人生き残る。また、左翼思想に共鳴して非合法活動に加わり、大学を中退。1935年、「逆行」が第1回芥川賞候補となるが落選。腹膜炎治療時の鎮痛剤パビナールの中毒となって不眠・幻聴に悩み、東京武蔵野病院に1カ月入院する。1939年、井伏鱒二の媒酌で石原美知子と結婚。戦後は「斜陽」などの作品で流行作家となり、坂口安吾、織田作之助らとともに新戯作派、無頼派と称される。1948年、愛人の山崎富栄と玉川上水で入水自殺を遂げる。
 主な著書に『晩年』『女生徒』『皮膚と心』『女の決闘』『津軽』『右大臣実朝』『お伽草紙』『パンドラの匣』『ヴィヨンの妻』『斜陽』『人間失格』『桜桃』などがある。

「2021年 『黄金風景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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