非凡なる凡人 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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レビュー : 2
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感想・レビュー・書評

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  •  五六人の年若い者が集まって互いに友の上を噂しあった時、一人が物語った桂正作という男の話です。
     桂正作はそんなに出来がいい子ではなかったが、『西国立志編』を愛読し、人生に目標を立て毎日コツコツと努力を継続し、計画的に人生を築いていくのであった。
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     自己啓発書とか成功哲学とはこう読んで実践するのだ、という活きた活用例ですね。
     カンドーした!
     声に出して小学生に読ませたい名作です。
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     で、国木田独歩とは、名前こそ有名ですが、あまり読まれているとは思えませんが、こんな名作を描かれているのであれば、他にも埋もれた名作があるのではと思いました。
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     しかし作品の構造が面白いですね。
     単に三人称的に桂正作という男を描いたり、桂正作が自ら一人称で自分の人生を語るというのではなく、桂正作の友人に語らせるという。
     それで、この“友人”というのがどのような人物なのか、興味深いところです。
     この語り手は、小学校卒業後、県下の中学校に入学したそうですが、
     桂正作の方は、家が没落したせいで中学校へは行けず、就職しています。
     冬休みに帰省した語り手が、仕事帰りの桂正作と再会し、語り合うシーンがあります。
     語り手は車夫を雇っているようだから、かなりいい暮らしのエリートのようです。
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    「天が与えた才能からいうと桂は中位の人たるにすぎない。学校における成績も中等で、同級生のうち、彼よりも優れた少年はいくらもいた。」
    「それで学校においても郷党にあっても、とくに人から注目せられる少年ではなかった。」
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    ……という風に、どことなく上から目線も感じられます。
     想像するに、語り手は、能力も地位も学歴も桂正作より上のエリート階層に属しているのではないでしょうか。
     そんな桂正作でも、『西国立志編』を愛読し目標を立て努力を継続すれば、エリート階層の友を感心させるほどの成果を上げることができるのです。
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    「桂正作のごときは平凡なる社会がつねに産出しうる人物である、また平凡なる社会がつねに要求する人物である。であるから桂のような人物が一人殖ふえればそれだけ社会が幸福なのである。」
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     ここに述べられている「平凡なる社会」とは、日本の国柄そのものでしょう。
     明治の開化期、富国強兵の不幸な時代、戦後の高度成長期、こういった人々のこつこつとした努力で日本は豊かになっていったのです。
     また、こういった平凡なる人々の努力が報われる社会であってほしいものです。
     諸君!凡人である我々も、計画的に日々目標に向かって継続することで、非凡なる凡人になれることができるのだ!
     非凡なる凡人を目指そうではないか!
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150331/p1

  • 人の心を打つ生き様を、いい噂話の形で作品にしているのがすごい錬金術感。
    なんのドラマもないしそれを求めもしない、自分の信じる通りに生きる男の話。
    友人にここまで言わせるのは、もう凡人じゃありませんよ。

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