「いき」の構造 [青空文庫]

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  • 青空文庫
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  • 作品名: 「いき」の構造
    作品名読み: 「いき」のこうぞう
    著者名: 九鬼 周造

    哲学者の「いき」は、あまり、いきでも、いなせでもないなあ、が第一感です。

    「いき」とは、日本民族的色彩の著しい語の1つである
    「いき」とは、上品、野暮、下品に対して、繊巧、卓越を表明している、洗練という意味をもあわせもつ
    欧州語には同一の価値を見いだすことができない、東洋文化、大和民族の自己表明の1つであると説く
    「いき」を理解するためにその存在様態を具体的に、解釈的に意識する必要がある

    ■内包的構造
    ①異性に対する媚態である なまめかしさ、つやっぽさ、色気
    ②意気地である 江戸の華、男伊達、いなせ、いさみ、伝法
    ③諦めである

    ■外延的構造
    上品、派手、渋み に対して、下品、地味、野暮
    歌麿の風俗三段娘 上流は高雅、下品は下卑

    いきと上品との関係は、趣味の卓越性、媚態
    いきと下品との関係は、媚態、意気で人柄がよくて下卑た事いったらこれっぱかりもない
    つまり上品と下品との間にあるのが、「いき」である

    いきと派手 きらびやかなてらい でも「いき」がもつ諦めとは相いれない
    いきと地味 一種のさびをみせて、いきの諦めにも通じる
    いきとは世情に通暁していること野暮は、野夫で、人情を理解しない野人をいう
    玄人の粋からみれば、素人は無粋
    甘味ーいきー渋み は直接的な関係 否定による肯定 極限に近づくにつれて、いきは、渋みに変ずる

    上品、意気、野暮、下品、派手、甘味、渋み、地味 の矩形
    上品、地味、渋みの頂点に、雅 の4面体
    甘味、意気、渋みの頂点に、味 の4面体
    他、乙、きざ、いろっぽさ、などを図形を通じて説明しているのがおもしろい
    著者のいう、外延的構造をいっているのである

    「いき」には、客観的表現として、自然形式と、芸術形式の2つに区別される

    ■自然的表現
    象徴的感情移入、本来的感情移入、姿勢、身振、男姿、立姿、居姿、後姿、前向き、横向き
    裸体は、いきではないが、湯上りはいきである
    幽霊もほっそりしていなければいきではない
    顔面の表情にも、眼、口、頬とに弛緩と緊張がなければならない
    流し目、伏目、横眼、上目
    上方風の厚化粧は、江戸では野暮で、薄化粧は、あだ(婀娜)という

    ■芸術的表現
    客観的芸術と主観的芸術とがある

    客観的とは芸術の内容が具体的表象そのものに規定される場合 絵画、彫刻、詩など
    主観的とは、芸術の形成原理が自由に抽象的に作動する場合 模様、建築、音楽など

    縦じまや、横じまがいきであるためにはどうだとか、幾何学的なこだわりが各所にみられる

    自由に形式を創造する自由芸術の意味は、模様として、幾何学的模様にのみ存しているとかたっている

    色も3色、ねずみ色、茶、紺、建築も煩雑になってはならない、なかなか細かいのである、後に続く、音楽もまた同様

    ■結論
    悟得せよといっている、 悟りをひらいて、真理を会得せよとのこと
    まず、趣味として体験せよ
    媚態、意気地、諦めは、いきの部分ではなく、契機にすぎない
    意識現象としてのいきの意味を民族的具体において、解釈的に把握し、然るのちその会得に基づいて自然形式および芸術形式に現れたる客観的表現を妥当に理解することができる と説く
    ひとことでいえば、いきの研究は民族的存在の解釈学としてのみ成立しうる
    いきの核心的意味は、その構造がわが民族存在の自己開示として把握されたときに、十全なる会得と理解とを得たのである が結言である

    目次


    1 序説
    2 「いき」の内包的構造
    3 「いき」の外延的構造
    4 「いき」の自然的表現
    5 「いき」の芸術的表現
    6 結論

    https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card393.html

    底本データ
    底本: 「いき」の構造
    出版社: 岩波文庫、岩波書店
    初版発行日: 1979(昭和54)年9月17日
    校正に使用: 1998(平成10)年12月4日第37刷
    底本の親本: 「いき」の構造
    出版社: 岩波書店
    初版発行日: 1930(昭和5)年11月20日
    244頁

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