Kの昇天 或はKの溺死 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 6
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  • 「あなた」からの手紙には「Kが溺死した」ということが記されていた。主人公の「私」は療養に訪れていた海岸で奇妙な行動をしていたKに出会う。一体何をしていたのかと私が尋ねると、Kは「自分の影を見ていた」と言った。月光に照らされた自分の影を見ていると自分の姿が見えてくる。だんだん姿があらわれてくるにしたがって影は人格を持ち始め、自分の魂は月に向かってスーッと上っていく、とKは語った。私の病気が回復する一方でKの体調はどんどん悪化していき、Kはその海岸で溺死した。
    この作品のポイントは「影」の存在である。影は影でも「月光の影」であることに意味があり、Kは影がもう1人の自分だと語る。私が「あなた」からの手紙でKの死を知った時、「K君は月へ登ってしまったのだ」と感じた。また、タイトルは『Kの昇天』であるが、サブタイトルに「或いはKの溺死」とつけられている。このサブタイトルは作品の解釈に大きく繋がり、Kの月への昇天とKが溺死したことは同じことを意味している。月へ登ってしまったのはK自身なのか、Kに影なのか。溺死したのはどちらのKなのか。また、私に手紙を書いた「あなた」は誰なのか、読み手によって様々な解釈ができる作品である。Kと出会った海岸の情景や「あなた」からの手紙を読んだ「私」の視点で描かれている点など、最後まで幻想的な雰囲気のある作品である。

  • 「K君は月へ登ってしまったのだ」
    Kは自殺かあるいは過失か。月夜の浜辺で自らの影を追うKとわたしの奇異な出会いから始まるあなたとわたしがKの死に迫る物語。
    『Kの昇天--或はKの溺死』という本題と副題が逆転しているような題名。この本当の意味が本文に隠されている。月を題材とした神秘的な死について語られた幻想文学を味わえる1冊になっいると思う。

  • 昇天って言葉が、なんつーか、ちょっと最近見ないというか、東スポあたりでしか見ない?くらいで、それだけ妄想力が広がって楽し気。でも中身は全然昇天とは程遠いというか。まぁ死人に口なしで、きっと昇天したんやで、って言いきるお前はけっこうできるやつ。

  • 梶井基次郎の雰囲気小説かな‥‥あんまホモとは思えんのだけど

  • 寝る前にゆっくりと読みたい本。
    静かで繊細で表現のしようのない透明感に溢れていると思う。その世界観に大感動する。
    流れるような話の中で、他人のはずの私とKが静かに心を通わせている。その空気感に引き込まれた。
    話が、空気感が頭に浸透してくるような独特の雰囲気を持っている。読んでいる内におなじ海にいるような気にさえなる。

    これは個人的な願望になるが、生涯隣に置いておいて、死ぬまで読み続けたい。

  • 月に向かって昇っていったというKという青年について語られる短編。30分ほどで読めるだけが利点ではなく、Kという人物が興味深かった。

  • 何度でも読む好きな小説。

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著者プロフィール

明治34年(1901年)大阪府生まれ。同人誌「青空」で活動するが、少年時代からの肺結核が悪化。初めての創作集『檸檬』刊行の翌年、31歳の若さで郷里大阪にて逝去した。「乙女の本棚」シリーズでは本作のほかに、『檸檬』(梶井基次郎+げみ)がある。

「2021年 『Kの昇天』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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