感想・レビュー・書評
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檸檬の色彩が目の前に見る見る内に浮かぶような見事な情景描写。それまで美しいと思っていたものの価値が急にわからなくなったり、それに困惑したり、そういったものは私達も一度は体験したことがあると思う。
「カーンと冴えかえっていた」
ほんとこの一文がうっとりするくらい綺麗。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
青空文庫ではなく文鳥文庫(http://bunchobunko.shop-pro.jp/)という手紙のような装幀の冊子で読んだのですが、あいにくバーコードで読み込んでもヒットしなかったのでこちらで登録。
檸檬ってこういう話だったのか!というのが何よりの感想。
鬱鬱としているときの何をやっても心惹かれなくて、それまで好きだったものさえ鬱陶しい気持ちとかすごくよくわかる。
その鬱屈とした気持ちの描写のところに、一点冴えた色彩のレモンが爽やか。
文鳥文庫のデザインと相まって、印象的だった。 -
丸善に檸檬を置きに行きたくなる。
丸善だけといわず、気詰まりな場所全てに檸檬を置きたくなってしまったので、休日は鞄に檸檬を入れて街に出たい。 -
凄く好きな作品。最初に読んだのは教科書でだったろうか。
「カーンと冴えかえっていた」は有名ですよね! 確かにこの擬態語は良い。
夏の猛暑の日に外を出歩くと、必ずこの作品と『罪と罰』の冒頭を思い出す。で、自分が梶井基次郎になったりラスコリーニコフになった気分になります(笑)
暑い中病気の身体で借金苦の身で町をふらふら歩くところ、すごく似ていませんか?
モデルとなった丸善閉店の時には、最後の客が至る所に檸檬を置いていったとか。こういうエピソード、好き。 -
借金苦と病気をもち重く鬱屈とした世界で、檸檬は幸福の色と形と重さを持っている唯一無二の実体。人類の崇高な精神を築いた芸術、陰惨な画集らの城を幸福の爆弾でこっば微塵に破壊する。そんな空想の追求こそ、芸術の種子かな。何となく檸檬は妊婦と被る気がした。男が悲惨だからこそ物語が何だか立体的。
妙に頭に残る本。 -
高校の時に授業で習った。その時は特に何とも思わなかった気がする。
短いし、特にオチがあるわけでもない。
でも、びいどろ、南京玉、オードコロン、香水瓶、煙管などレトロチックな言葉はその時から好きだった。
昭和っぽい、というか明らかに現代ではない、ノスタルジックな小物達が印象的だった。
と言っても、当時はそれだけだった。最後、美術書を積み上げて檸檬を置いてくるってことさえ私には理解できなくて完全に興味を失っていた。
ただしその後クラスで担任の似顔絵を檸檬に描く、という遊びが流行ったのはちゃんと覚えている。
借金を抱え、肺を患い、友達の家を転々としている身。それらが原因かはわからないが、「えたいの知れない不吉な塊」のおかげで塞ぎ込み、以前のように音楽や高級な商品に惹かれなくなった主人公。そんな状況を変えるきっかけが檸檬だった、という話。
高校生の時は、なぜ美術書を積むのかとか、なんで檸檬が「爆弾」なのかとか考えていたと思うけど、檸檬の色合いと合わせるために美術書の配置を考えて積んでいたのだし、閉塞した気持ちを吹き飛ばしたくて檸檬という爆弾を生み出したのだろう。それだけのこと。
人間は常に同じテンションでいられる訳ではないので、良い時もあれば悪い時もある。だから、どうしようもない時は誰にでも「檸檬」を必要とすることがあるのだ、きっと。
★3.5ぐらいの気分。(20130503) -
あの頃、憂鬱な気分を檸檬だけが吹き飛ばしてくれた、という話。他人の見た夢を聞かされているような退屈さに近い。一時間もあれば読めるのが利点かな。
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情景描写と檸檬のすっぱさが画面からにじみでてくるような。
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体調をくずしたりお金がなかったりで心身疲弊ぎみの主人公の、ささやかな気分転換と現実逃避。このお話の雰囲気を決定づけているのはやはりレモン。レモンの爽やかな描写が光る。話自体はとても短くてすぐ読める。
著者プロフィール
梶井基次郎の作品





