夫婦善哉 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 6
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感想・レビュー・書評

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  • この作品を書いた織田作之助は大阪出身で、本人が深く大阪を愛していたことで知られている。デビュー作で一番有名なこの夫婦善哉も大阪を舞台にした夫婦の話だが、夫婦善哉などと言うからどんなに円満な夫婦の話かと思えば全く仕方のない夫婦なのである。天麩羅屋に生まれ芸者になった蝶子と、十以上も離れ女房も子どももいる柳吉はやがて惹かれあい駆け落ちする。しかしこの柳吉が本当にどうしようもない人間で、読んでいてほとほと呆れてしまった。反対に蝶子は我慢強く働きもので、どうして二人は結婚するところまでいったのかとわからない気持ちになった。織田作之助はこう言った人間の情や関係性に焦点を置いた作品を書く反面、当時文壇の最重要人物であった志賀直哉を真っ向から批判するなど、無頼精神の持ち主でもあった。太宰治や坂口安吾と並んで無頼派と称され、戦後文学の先駆けとなった人物である。彼の愛した大阪に思いをはせながら読んでみるのもいいかもしれない。

  •  読んだとき最初に感じたのは、グルメ小説というより、近代日本文学ーー純文学で模範とされる私小説的リアリティーを追及した小説だということです。

     出会いから初老になるまでの夫婦の半生を描いた作品。主人公夫婦はヒロイックファンタジーに出てくるヒーローやヒロインとは真逆の、どこにでもいる平凡なダメ男とダメ女。既婚の柳吉が不倫し、うどん屋の娘で芸者の蝶子と駆け落ち。大阪に戻って、男は様々な商売を始めますが、どれも中途半端で店をつぶします。しかし悪い事ばかりでなく、親戚の遺産でまとまった金が入るなど、山あり谷ありの人生。

     ラストシーンの蝶子の台詞「一人より女夫の方がええいうことでっしゃろ」は、倦怠期をとうに過ぎ、人生の酸いも甘いもかみ分けた熟年夫婦へのエールと読みました。

     しかしながら、放蕩亭主にひたすら耐える女房の悲劇、といった単純な論評でおさまりきらない私小説ワールドのリアリズム。これが「夫婦善哉」執筆時の、作者、織田作之助の企みだったと推測します。

  • 繰り返し読んでる
    今年に入ってからも読みました
    何度読んでもしょうもない話だ最高だ

  • カレー通の中では、大阪・自由軒のシーンが有名な作品。通して読んでみると、いかにも大阪らしい商人話の展開に納得。ダメ男にしっかり女という男女が惹かれあう不合理性にフィクションを超えた不可思議さを覚える。

  • 「大阪学」という本で言及されてて気になったので、青空文庫で読んでみた。ダメ夫って好きじゃないんだけど、意外と抵抗なく読めた。スマホを買って、アプリを入れてから、青空文庫がとても読みやすくなり、読むことが多くなった。

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著者プロフィール

一九一三(大正二)年、大阪生まれ。小説家。主な作品に小説「夫婦善哉」「世相」「土曜夫人」、評論「可能性の文学」などのほか、『織田作之助全集』がある。一九四七(昭和二二)年没。

「2021年 『王将・坂田三吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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