文字禍 [青空文庫]

  • 青空文庫
  • 新字新仮名
4.31
  • (7)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 43
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 青空文庫 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 作品データ
    分類: NDC 913
    初出: 「文学界」(「古譚」の題で)
    作品について:「文字禍」
    1942(昭和17)年2月
    備考: この作品には、今日からみれば、不適切と受け取られる可能性のある表現がみられます。その旨をここに記載した上で、そのままの形で作品を公開します。(青空文庫)

    中島敦の不思議な話、古代の情景が浮かんでくるようです。

    デビュー作のひとつとあります

    アッシリアの非道なアシュル・バニ・アパル大王が、図書館でうごめく、文字の霊。
    その未知なる精霊の調査を命じられた老博士ナブ・アヘ・エリバ
    かくして、博士と粘土板でできた本の精霊との対話が始まった。

    文字を知ること、それは、古代のおいては、柔弱となるということだった

    本の精霊に魅入られた、老博士ナブ・アヘ・エリバの運命とは……

    底本データ
    底本: ちくま日本文学全集 中島敦
    出版社: ちくま文庫、筑摩書房
    初版発行日: 1992(平成4)年7月20日
    入力に使用: 1996(平成8)年4月20日第3刷
    底本の親本: 中島敦全集 第一巻
    出版社: 筑摩書房
    初版発行日: 1987(昭和62)年9月
    A4にて、9枚相当

    作家データ
    分類: 著者
    作家名: 中島 敦
    作家名読み: なかじま あつし
    ローマ字表記: Nakajima, Atsushi
    生年: 1909-05-05
    没年: 1942-12-04
    人物について: 東京市四谷区箪笥町生まれ。1942年『文学界』に「古譚」の名で「山月記」と「文字禍」が掲載され、「光と風と夢」で芥川賞候補になり活躍が期待されたが、持病の喘息が悪化し同年12月4日死去。遺稿「李陵」「弟子」が発表され、類まれな才知の早世が惜しまれた。
    wikipediaアイコン「中島敦」

  •  個人的には異色だなあーと思った作品。漢詩に詳しかったこともあって、中国が舞台になることが多い印象があったので。
     文字とはという大前提を突き詰めすぎて、ゲシュタルト崩壊してしまった人の末路。特に、楔文字は文中にもあったように、線が多いので、ゲシュタルト崩壊しやすかったろうな。漢字だったら、文字がそのモノを表すことが多いので、文字は影であるという説は当てはまりやすいのかも。
     歴史とは文字とはと考えすぎた博士の意見はいろんな解釈が出来そう。

  • 11月前半のブンゴウメールにて読みました。
    面白かったです。
    文字についてとことん考えると、確かによくわからなくなります。そのものを見ないで、影を見ているのかも…と。
    書き残されなかったことは、無かったこと。ううむ、と思いました。

  •  なるほどわからん、の一言に尽きる。どれだけわからなかったというと、読み終わった後、Wikipediaに助けを求めるほどに頭が追いつかなかった。もちろん今もわかってない。

     まだ「文字」というものが存在しなかった時代は、おそらく、口頭で物事を伝えていたのだろう。だが、石や粘土の板に「文字」を起こすことを始めてから、人々はそれ(文字)を頼りにしなければ、物事を覚えることができなくなってしまった。
    「記録」されなかったことはなかったこととなり、誤って、もしくは意図的に「記録」されたものは、それが正しいものとして後世へと伝わってしまう。なるほど、なんとなくわかった。

     現代でいえば、「ネット上のありもしない書き込みが鵜呑みにされて、なにもしてないのに謝罪に持ち込まれる」……これはたしかに「わざわい」である。

  • ある意味正鵠を射たニヒリズムに苦悩とシンセリティを感じる。

  • 非常に色々なことを示唆する物語。
    歴史とは、文字とは、そうしたことを考える上で非常に面白いと思う。
    文字に操られているという感覚、文字の無かった時代には物事が直接入ってきたのでは?という疑問。
    とても面白かった。

  • 以前読んだ『反歴史論』でとりあげられていた。歴史とはあったことなのか?書かれたことなのか?はとても探究し甲斐のあるテーマだ。

    学校で教えてくれるのは「書かれた歴史」だ。では書かれなかったものは歴史ではないのか?でも確かに存在しているその書かれなかったものはいったい何なのか。問いが次から次へと湧いてやまない。

    そして、もう一つのテーマである「文字」もまた面白いテーマだ。池田晶子氏も述べていたが、人間は言葉を操っていない。言葉によって人間が使われている、そんな気がしてならなくなる。

    これほど様々なことを考えさせてくれる作品に、明確な答えを出さず終結させた筆者に感謝したい。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

東京都生まれ。1926年、第一高等学校へ入学し、校友会雑誌に「下田の女」他習作を発表。1930年に東京帝国大学国文科に入学。卒業後、横浜高等女学校勤務を経て、南洋庁国語編修書記の職に就き、現地パラオへ赴く。1942年3月に日本へ帰国。その年の『文學界2月号』に「山月記」「文字禍」が掲載。そして、5月号に掲載された「光と風と夢」が芥川賞候補になる。同年、喘息発作が激しくなり、11月入院。12月に逝去。

「2021年 『かめれおん日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中島敦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×