百物語 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 3
  • 青空文庫 ・電子書籍

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  •  今更ながら読んでみたけど、思ってた意味での怖い話ではない。傍観者をめぐる話であり、個性があるようで正体がつかめない者の話。そういう意味では怖い話になるのかもしれない。「いったいどういう関係なんだ。。。」ともやもやしたまま終わるのが百物語らしいところなのかもしれない。

  • タイトルの「百物語」とは多勢の人が集まって、蝋燭を百本立てて置いて、一人が一つずつ化物の話をして、一本ずつ蝋燭を消していくことだ。そうすると百本目の蝋燭が消された時、真の化物が出ると云うことである。しかし、この話は怪談話ではない。自分を生まれながらの傍観者であるという主人公が、百物語の催しへ参加し、主催者の飾磨屋と芸者の太郎について人間観察をする話である。飾磨屋は新聞に出たこともあり、噂話で耳にしたこともあるが、どうも主人公の思っていたイメージと違う。「あの目の血走っているのも、事によったら酒と色とに夜を更した為めではなくて、深い物思に夜を穏に眠ることの出来なかった為めではあるまいか。強いて推察して見れば、この百物語の催しなんぞも、主人は馬鹿げた事だと云うことを飽くまで知り抜いていて、そこへ寄って来る客の、或は酒食を貪る念に駆られて来たり、或はまた迷信の霧に理性を鎖されていて、こわい物見たさのおさない好奇心に動かされて来たりするのを、あの血糸の通っている、マリショオな、デモニックなようにも見れば見られる目で、冷かに見ているのではあるまいか。」このように主人公は飾磨屋のことを考える。この男のことを考えていると、どうも附いている女のことを考えずにはいられない。芸者の太郎は東京で最も美しいといわれている。しかし、身綺麗にして、巧者に着物を着こなしているのに、芸者らしくないのだ。この二人は一寸見たときから、何となく病人に看護婦が附いているように見え、その印象が消えない。また、飾磨屋について、「どうかした場合に、どうかした無形の創痍を受けてそれが癒えずにいる為めに、傍観者になったのではあるまいか」と推測する。そのように観察をしているうちに、百物語がどんな事をするだろうかという好奇心も、飾磨屋がどんな人物だろうかと思った好奇心も満足させられ、百物語が始まる前に主人公は帰ってしまう。後日、飾磨屋が怪談話の途中で太郎を連れて二階へ上がってしまったという話を聞き、主人公は「傍観者と云うものは、やはり多少人を馬鹿にしているに極まっていはしないか」と思う。この文は生まれながらの傍観者であるという主人公自身に対しての皮肉も込められているように感じた。結局のところ傍観者である主人公が同じ傍観者である飾磨屋を観察するという話で、怪談話がないのにも関わらず、何だか気味の悪い印象を受ける文章だった。

  • 怪談や妖怪よりも、人間の方がよっぽど不可思議だと言われてるような話。
    淡々と場面が移ろう一方、徐々に飾磨屋への興味や想像が熱を帯びていくようで、同じ傍観者だと感じつつも自分と似て非なる飾磨屋に魅入っていくのを感じた。
    ただ自分の不勉強故に不慣れな表現がいくつかあって読み取るのに苦労した。

  • 語り手(森鴎外自身?)が『百物語』という怪談の会合に出かけた際の観察記といった体裁のお話。
    『百物語』という表題ながら、語り手は『百物語』には全く興味がなく、ひたすら人間観察に注力している様が面白い。ちなみに怪談話は全く出てきません。
    語り手は自分のことを「傍観者」と呼び、同様に会合を主催している飾磨屋も傍観者で同類だ、とする考察が入っていますが、語り手自身は「傍観」どころか、鋭い観察力でまわりを見渡し考察していて、なんだかそのことの方にゾッとしてしまいますね。
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    さて、ここまで青空文庫で『山月記』、『藪の中』、『走れメロス』、『桜の森の満開の下』、『百物語』と読んできたのですが、実はコレ、森見登美彦氏の『【新釈】走れメロス 他四篇』で原典として使用されているお話なのです。
    さあ、満を持して、『【新釈】走れメロス 他四篇』を再読しよう!

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著者プロフィール

1862-1922年。小説家、評論家、翻訳家。本名は森林太郎。陸軍軍医として最高位を極める一方で、旺盛な文筆活動を展開し、晩年は歴史小説、さらに史伝に転じた。1917年から没するまで帝室博物館総長兼宮内省図書頭を務め、歴代天皇の諡号(おくりな)の出典を考証した『帝謚考』(1921年)を刊行。主な著作に『舞姫』(1890年)、『高瀬舟』(1916年)など。

「2019年 『元号通覧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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