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感想・レビュー・書評
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病院での待ち時間に読んだ。アーサー王と円卓の騎士を題材にした短編。ランスロットとグエネヴィアの恋物語を描いているのだが、古風な日本語がなかなか内容と合っていてよかった。しかし、この題名の意味が分からず、ネットで調べるという情けなさ。
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タイトルの読みは「かいろこう」。漱石先生によるアーサー王と円卓の騎士伝説、そのなかでも筆頭の超絶イケメンでもちろん腕も立つ騎士、ランスロット卿にまつわるお話。
最初にこの物語を書くに至った経緯が記されており、そのもってまわった言い回しがいつもの漱石先生節なので、思わずくすっと笑ってしまう。でも本編は、「漱石先生、こんなものも書けるとは!」というくらいに、気品にあふれ、華麗で甘さ炸裂な騎士物語絵巻。湖の騎士・ランスロットとアーサー王の妃・グィネヴィアの恋、ランスロットをひと目見たがために報われない恋に落ちる娘たちの悲しさと美しさが、これでもかとドラマチックに語られる。あまりに華やかな口調で、坪内逍遥先生の訳文かと思ったくらい。さすが、倫敦留学もなさった先生だ。『倫敦消息』で「英国なんて…ぶつぶつ」と愚痴ってるだけではなかったのね。
アーサー王と円卓の騎士の物語はもともと、断片的な伝説をつなぎ合わせたものなので、物語としてはつじつまの合わないところばかりだけれど、漱石先生はテニスンの作品を踏まえ、燃え上がる恋と報われない恋をたたみかけるように、しかも破たんのない物語として描いていると思う。どの登場人物の恋も一途で美しくて哀しい。中でも、シャルロットの女のエピソード「鏡」はちょっとわかりにくいところもあるけれど、設定としては一番巧みで面白いと思う。それにしても、ランスロット卿はご婦人に優しい。あまりに優しすぎて、彼の行くところ、乙女の屍累々ではないか(笑)!