薤露行 [青空文庫]

  • 青空文庫
  • 新字新仮名
3.71
  • (2)
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 9
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 青空文庫 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 病院での待ち時間に読んだ。アーサー王と円卓の騎士を題材にした短編。ランスロットとグエネヴィアの恋物語を描いているのだが、古風な日本語がなかなか内容と合っていてよかった。しかし、この題名の意味が分からず、ネットで調べるという情けなさ。

  • タイトルの読みは「かいろこう」。漱石先生によるアーサー王と円卓の騎士伝説、そのなかでも筆頭の超絶イケメンでもちろん腕も立つ騎士、ランスロット卿にまつわるお話。

    最初にこの物語を書くに至った経緯が記されており、そのもってまわった言い回しがいつもの漱石先生節なので、思わずくすっと笑ってしまう。でも本編は、「漱石先生、こんなものも書けるとは!」というくらいに、気品にあふれ、華麗で甘さ炸裂な騎士物語絵巻。湖の騎士・ランスロットとアーサー王の妃・グィネヴィアの恋、ランスロットをひと目見たがために報われない恋に落ちる娘たちの悲しさと美しさが、これでもかとドラマチックに語られる。あまりに華やかな口調で、坪内逍遥先生の訳文かと思ったくらい。さすが、倫敦留学もなさった先生だ。『倫敦消息』で「英国なんて…ぶつぶつ」と愚痴ってるだけではなかったのね。

    アーサー王と円卓の騎士の物語はもともと、断片的な伝説をつなぎ合わせたものなので、物語としてはつじつまの合わないところばかりだけれど、漱石先生はテニスンの作品を踏まえ、燃え上がる恋と報われない恋をたたみかけるように、しかも破たんのない物語として描いていると思う。どの登場人物の恋も一途で美しくて哀しい。中でも、シャルロットの女のエピソード「鏡」はちょっとわかりにくいところもあるけれど、設定としては一番巧みで面白いと思う。それにしても、ランスロット卿はご婦人に優しい。あまりに優しすぎて、彼の行くところ、乙女の屍累々ではないか(笑)!

  • アーサー王物語をベースとした夏目漱石による創作。漱石の時代には既に現代的な日本語が用いられていたが、本書はあえて擬古文で執筆されており、また構成も素直なものではないので難解である。

    アーサー王物語を取り扱った古今東西の文学を読む講義にて読書課題となったのがきっかけで一度読み、「また余裕のあるときに精読しよう」と積んでいた。再び読み直したが全く理解できず、インターネット上の解説を読み込んでさらに読み直してようやく理解できた。
    描写が美しい。そして感情表現がとても良い! 儚い。(あとエレーンがエロい。) 確かに描く儚さに『こゝろ』と共通するものがある。
    なお、漱石が姦通を描いたのは本書が初めてだったらしい。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

夏目漱石の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×