明暗 [青空文庫]

  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想・レビュー・書評

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  • 「明暗」は、夏目漱石の最後の作品であり、未完の作品である。
     この物語では、主人公の津田由雄、その妻のお延、津田の妹のお秀、津田の上司とその妻、吉川夫人、津田の元恋人の清子などが出てくる。当然ながら視点の中心のほとんどは津田由雄である。しかしたまに、別の登場人物にも焦点が当てられて話が進むことがある。それ故に、それぞれの登場人物がどんな人物かというのが分かりやすくなっている。
     この作品、いろいろな見方、どこを中心に取り上げるか、によって感じることやわかることに違いが出ると思われる。しかし描かれているそれぞれの女性に着目すると、対比が描かれていることに気が付く。描かれている対比は、近代的な女性と前時代的な女性の対比だ。ここで中心となるのは、お延、お秀、そして吉川夫人の3人だ。お延は近代的な女性として描かれている。その一方でお秀と吉川夫人は、前時代的な考えが根付いているのである。お延は自立した性格で、主体的で行動的、理想主義、そして自尊心が強いのである。そういった近代的なお延に対して、お秀は家制度的考え方を持っている。男女差別されているような生活でも、当然のことのように受け入れている。また吉川夫人も、お秀とは少し違えど、前時代的な考えを持っている。夫の権力と財力を得ることによって津田やお延よりも強い立場にある人である。そしてなによりもお節介なのである。何かと少し上から目線で語っている。作中ではお延の自立した性格を否定するような発言も見られる。妻は夫の後ろを歩くべきだ、というような考えを持っている。
     こうしてみていくと、前時代的な考えを持つ2人と違って、お延は自立している女性のため、しっかりと自分の意志を持っているということになる。夫にただ従って、周りに従って、閉じ込められれた生活を送るのが嫌なのだろう。もっと明確な理想を持っているのだ。その点が現代の女性とも結びついていくのである。古い考え方に縛られて女性は夫に従うべきだ、これをすべきだ、という差別的な考えに対する形でお延は描かれている女性なのではないだろうか。

  • 未完っちゅうことだけど、実際終わったとしても多分このままウダウダしながら進むんだろうし、そんな違わないよね、きっと。
    とは言え、けっこうイケメンなのに、妹も美人で元カノも美人なのに、何故かイマイチな娘と結婚までしてしまう、ってなんかあるあるだよね。何だろうね、ブス専?
    しかしそんな良い人っぷりかと思いきや、元カノを追いかけて温泉まで乗り込んで、お互いに一人で来てて、ってもうそこまで来たらやる事は一つやんけ。でもって良いところまで来て後は知らんっていうんだから、漱石さんから見れば、言わせんな恥ずかしいって感じか。
    ってこんなシチュエーションを作って投げっぱなしっていうのも、しょうがないムッツリだよ、ほんとに。

  • 39章に、
    「津田君は何にも云わずに、」とありますが、
    これは、
    「津田は何にも云わずに、」の誤りだと思います。

    48章に、
    「岡本と吉川の家庭がそれほど」とありますが、
    これは、
    「岡本と吉川の家族がそれほど」の誤りだと思います。

    51章に、
    「平静のうちに一種の緊張を包んで彼女は、」とありますが、
    これは、
    「平静のうちに一種の緊張を包んだ彼女は、」の誤りだと思います。

    65章に、
    「彼の心に下層にいつも」とありますが、
    これは、
    「彼の心の下層にいつも」の誤りだと思います。

    66章に、
    「この小さい嘆美者には、」とありますが、
    これは、
    「この小さな嘆美者には、」の誤りだと思います。

    77章に、
    「今度は繰(く)り返(かえ)させたくない」とありますが、
    これは、
    「今夜は繰(く)り返(かえ)させたくない」の誤りだと思います。

    77章に、
    「しかし彼女はそうして目眩(めまぐる)しい」とありますが、
    これは、
    「しかし彼女はそうした目眩(めまぐる)しい」誤りだと思います。

    78章に、
    「目下自分と津田との間柄(あいだがら)は、」とありますが、
    これは、
    「目下自分と津田との間柄(あいだがら)が、」だと思います。

    79章に、
    「彼がそのための手紙を書いた。事のついでに」とありますが、
    これは、
    「彼がそのための手紙を書いた、事のついでに」だと思います。

    86章に、
    「そこへ先刻(さっき)から心持ちに」とありますが、
    「そこへ先刻(さっき)から心待ちに」だと思います。

    95章に、
    「お秀宛(あて)で来た手紙の中に、」とありますが、
    「お秀宛(あて)で来た母の手紙の中に、」だと思います。

    95章に、
    「彼女のよって繰り返される」とありますが、
    「彼女によって繰り返される」だと思います。

    98章に、
    「冷笑なこの挨拶(あいさつ)が、」とありますが、
    「冷淡なの挨拶(あいさつ)が、」だと思います。

    112章に、
    「むずかしやも揃(そろ)っているからな」とありますが、
    「むずかしやも揃(そろ)ってるからな」だと思います。

    122章に、
    「レターペーパーを」とありますが、
    「レターペーパーと」だと思います。

    143章に、
    「三分の一を」とありますが、
    「三分一を」だと思います。

    145章に、
    「彼は腹はようやく」とありますが、
    「彼の腹はようやく」だと思います。

    157章に、
    「知らず生きて来た僕が、」とありますが、
    「知らずに生きて来た僕が、」だと思います。

    163章に、
    「津田は厭(いや)がらせる」」とありますが、
    「津田を厭(いや)がらせるだと思います。

    ちくま文庫の夏目漱石全集 9 「明暗」で確認しました。

    以上。

  • 何てことのない男女の機微というか、思いを掘り下げて心理描写されている。
    人の思いや感情をここまで文章で表現することのできる作者の天才ぶりに驚嘆されながら筋をおって読み進み、そろそろ終章への導入かと思ったところで未完、絶筆となっている。

  • 20120323読み終わった

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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