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感想・レビュー・書評
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優雅なタイトルですが、物語は独裁体制のアンチユートピアを描いています。
定期的に洗脳音楽を聴かされるとか国民はモニターで監視されているとか、オーウェル『1984年』(1949年刊行)を思わせる描写も。
物語開始早々、独裁政権に重要な役割を果たしているコハク博士がアキエもといアサリ大臣の陰謀によって粛清されてしまいます。
本作を海野十三が発表したのは昭和12年(1937年)。
盧溝橋事件が発生して本格的に日中戦争が始まる頃です。
(柳条湖事件・満州事変は1931年)
これ以降、言論統制が厳しくなって、本作品のような内容の小説は検閲に引っかかって発表できなかったでしょう。
ということは、近い将来に到来する日本の過酷な独裁体制とその崩壊を予言した作品です。
レジスタンスが独裁体制を打破する内容ならぜひともバイブルにしたいところですが、内容を見ると、あまりにもご都合主義過ぎる展開で、とても参考になりそうにありません。
コハク博士が余りにもスーパーマン過ぎたり、都合よく火星人の侵略が始まったり、それを簡単に撃退したり。
まるで子どもが見る夢みないな展開ですが、これは当時の一般的国民よりも多くの知識と想像力を持った知識人・海野十三が近い将来起こる歴史的悲劇を予言した“悪夢”でもあるのです。
そして本作品発表から80年。日本は、同じ過ちを繰り返そうとしているのです。
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20180719/p1詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人物描写が悪い意味で漫画的で、のめり込みづらかったですが、国民に音楽を聞かせて洗脳させるというアイデアが、この時代のSFとしては斬新だと思いました。
フィリップ・K・ディックの「電気羊はアンドロイドの夢を見るか」でも、冒頭で主人公夫婦が音楽を聴いて、感情をコントロールする、というストーリーが出てきます。
二つの小説とも、音楽を聴くことで人間の精神をコントロールされることに対して、それぞれの登場人物たちが、人間性を否定される行為だとして反発します。
海野もディックもお互いの小説を読んだことはないと推測しますが、両者が共通している点は驚くべきでしょう。
最後のオチもあり、「十八時の音楽浴」は少し古いが現代人が十分読むにあたいするSFと言えます。 -
面白かったです。音楽で国民を洗脳している国の、狂った末路。女大臣が酷い…と思いましたが、国王も弱いなぁ。でも最後まで読んだら皆狂人だったのだなと感じました。読みやすいお話でした。
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面白かったー!今までこの人のこと知らなかったのがもったいない。この短さでよくもこれだけ。。。とうならずにはいられない。裏切りに次ぐ裏切り、陰謀に次ぐ陰謀、独裁。ディストピア( ゚Д゚)
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なかなかぶっ飛んだSF作品。完全にぶっ壊れてるところが面白い。
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古典科学小説だけども今でも面白く読めました。時代が幾千と経とうとも、何時何時になろうとも人がともない織り成う物語は人の心を掴んで止まない本質に訴えかける力がありますね。
洗脳音楽によって国家の安寧秩序を努める独裁国家の栄枯盛衰が書かれる話は、一瞬の時をもってして過ぎ去るのだが、そこにあるのは人が築き上げ成り立った国があり、それが人の些細な感情によって崩落し、狂騒とともに終焉を迎える再生と破壊はお粗末な滑稽さと怖さがありました。 -
やや古めかしいSFだけど面白い。言葉の選び方も好きだな。