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感想・レビュー・書評
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あくせくと働かなくとも金も住むところもある、ある意味生きがいのようにしていた(日露)戦争は終わってしまった。おもしろおかしく会話は展開されていくけれど、冷静にみれば哀れな人。
何かに夢中になる事(とても単純に考えて)は悪い事ではない。「加と男」はただ流行りに乗っかっただけに見えるから、何やっても繰り返すんじゃないかね……。
主人公の最後の言葉にはいろいろ考えさせられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかなか愉快な語り口の短編です。
国木田独歩の短編では語り手は遠景に入ってしまうことが多いのですが、本短編では会話に参加しています。
内容的には、現代の日本社会に通じる問題点に触れていると思います。
自分では何もしないで傍観していながら戦況を知らせる号外のみを唯一の楽しみとしている加藤男爵(加と男)は、ナショナリズムやヘイトに熱狂する現代の日本人にも通じるところを持っているようにも思えます。
「戦争最中はお互いにだれでも国家の大事だから、朝夕これを念頭に置いて喜憂したのが、それがおやめになったのだから、気抜けの体ていにちょっとだれもなったに相違ない、それをがっかりと言えばがっかりでしょう。」
「そこで自分は戦争でなく、ほかに何か、戦争の時のような心持ちにみんながなって暮らす方法はないものかしらんと考えた。考えながら歩いた。」
戦争ではなくみんなが平和になって暮らす方法といえば、まずスポーツが挙げられます。
殺し合いである戦争の代わりにスポーツによって国際協調といこう、ということで始まったのがオリンピックやサッカーなどの国際スポーツ大会なんでしょう。
とはいえ、オリンピックを国威発揚に利用したヒトラーしかり、安倍晋三しかり。
2020年の東京オリンピックを前に安倍政権下の日本では戦時体制化が進んでいるように思えます。
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20171216/p1