婦系図 [青空文庫]

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感想・レビュー・書評

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  • 流れるような文体に酔いしれ、いつの間にか最終回…という作品でした。ドラマチックだなあと思ったら、やはり何度も舞台化、映像化されていたのですね。少し前に金色夜叉を読んでいたので、著者が尾崎紅葉のお弟子さんということもあり、比較しながらの読書でした。実際、途中で「金色夜叉」の舞台も登場するし、面白い趣向。個人的には寛一よりは主悦の方が、またお宮よりはお妙の方が好きです。お妙の溌溂とした、自己を強く持っている姿には希望が持てます。

    人間関係、特に登場人物の出自が後になってどんどん明かされるところが、まるでサスペンス劇場のようで、ハラハラドキドキの連続です。終盤になると、主悦の語調ががらりと変わってべらんめい口調に。最後はあっと驚く悲劇なのですが、その後の遺書にはびっくりです。河野家の二人の娘とは何の関係がなかったですと?また、河野大夫人が馬丁と関係があったとされる確証が得られなかったですと?毒を盛られなかったと?これらが事実とすれば、物語は成立しません。一気に盛り下がりました。後で種々の解説を読むと、その遺書をめぐってはいろいろな解釈があるようですが、まさかのどんでん返しにちょっと立ち直れそうもありません。

    とはいえ泉鏡花の文体は芸術的で、また別の作品を読もう!という意欲を掻き立てられました。

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著者プロフィール

(いずみ・きょうか)
1873年金沢市生まれ。1893年、「京都日出新聞」の「冠弥左衛門」連載でデビュー。主要な作品に、「義血侠血」(1894)、「夜行巡査」(1895)、「外科室」(1895)、「照葉狂言」(1896)、「高野聖」(1900)、「婦系図」(1907)、「歌行燈」(1910)、「天守物語」(1917)などがある。1939年没。近年の選集に、『泉鏡花集成』(ちくま文庫、全14巻、1995-1997)、『鏡花幻想譚』(河出書房新社、全4巻、1995)、『新編 泉鏡花集』(岩波書店、全10巻+別巻2、2003-2005)、『泉鏡花セレクション』(国書刊行会、全4巻、2019-2020)など、文庫に『外科室・天守物語』(新潮文庫、2023)、『高野聖・眉かくしの霊』、『日本橋』(ともに岩波文庫、2023)、『龍潭譚/白鬼女物語 鏡花怪異小品集』(平凡社ライブラリー、2023)などがある。

「2024年 『泉鏡花きのこ文学集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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