愛と美について [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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レビュー : 2
  • 青空文庫 ・電子書籍

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  • 梅雨のある曇天の日、兄妹5人で語られる、あるロマンス。兄妹それぞれがてんでばらばらな方向性を持つのに、一つの物語(ロマンス)が彩られていく。
    なんだかプラトンの『饗宴』やサリンジャーのグラース家をみているみたい。
    兄妹それぞれが持つ特徴が、語る言葉にそのまま映し出されている。失恋尽くしの長女、まじめすぎる末弟、俗物的だが頭の切れる気難しい次男、自己陶酔に浸る次女、ただ物語が好きなだけの長男…物語を通すことで、本来なら響き合う事のない兄弟が一つの調和を奏でる。
    語りの後には、退屈と倦怠、再び訪れる荒涼さと険悪さ。だが、そんな5人を見守るたったひとり母のまなざしと最も気の利いた機智があるから、閉塞的な空気が、さっと雨上がりのような涼しい風で吹き飛ばされる。

  • 兄妹、五人あって、「退屈したときには、皆で、物語の連作をはじめるのが、この家のならわしである。たまには母も、そのお仲間入りをすることがある」ということで、物語が展開していくのだが、こんな遊びも面白いだろうな、と思った。TVやインターネットが無い時代での人々の「知的遊戯」に興ずる様は、もう二度と戻り来ぬ「遊び」だろう。物語の最後に、「母は、ひとり笑い崩れた」、ここに太宰治の、母という存在のとらえ方が出ていて、面白いと思った。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)〜 1948年(昭和23年)日本の小説家。代表作に『斜陽』『人間失格』『走れメロス』『富嶽百景』など多数。

「2019年 『女神 太宰治アイロニー傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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