日清戦争異聞 (原田重吉の夢) [青空文庫]

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  • 青空文庫
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  • 前編と後編の主人公は同じなのに、主人公の印象がこうも違うのは……。過去の栄光に振り回され続けた阿呆な人という印象が最後まで残った。

  • 模範的軍人としてキャリアを重ねた後,日清戦争において,頽廃さを漂わせる中国兵を相手に果敢な突撃をして栄誉を手にした男が,その栄誉がもたらした華々しい生活を味わったがゆえに,元の堅実な道を外れて放蕩に走るようになる.自身の武勇伝を題材に,しかし実際よりも派手に脚色された演劇で本人役として登場し,喝采を浴びるも,彼の人生は凋落し続け,終いには手にしたものの一切を失い浮浪者となって,自身がかつて倒した中国兵と同様の姿を曝しながら死を迎える.
    欲のままに堕落した生を送ろうとする本来的な人間の性を「現実」とし,これと対比する形で,特に近代化に伴って日本にもたらされた,統率された軍隊とそれに付随する数多のモラルや文化による繁栄を「夢」としていると読める.禁欲的な勤勉さ・堅実さを守ろうとしていても,結局生来的な欲や執着に打ち克つことは困難であって,ゆくゆくは元の通りの堕落へと戻っていく,といったテーマか.

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著者プロフィール

萩原朔太郎
1886(明治19)年11月1日群馬県前橋市生まれ。父は開業医。旧制前橋中学時代より短歌で活躍。旧制第五、第六高等学校いずれも中退。上京し慶応大学予科に入学するが半年で退学。マンドリン、ギターを愛好し音楽家を志ざす。挫折し前橋に帰郷した1913年、北原白秋主宰の詩歌誌『朱欒』で詩壇デビュー。同誌の新進詩人・室生犀星と生涯にわたる親交を結ぶ。山村暮鳥を加え人魚詩社を結成、機関誌『卓上噴水』を発行。1916年、犀星と詩誌『感情』を創刊。1917年第1詩集『月に吠える』を刊行し、詩壇における地位を確立する。1925年上京し、東京に定住。詩作のみならずアフォリズム、詩論、古典詩歌論、エッセイ、文明評論、小説など多方面で活躍し、詩人批評家の先駆者となった。1942年5月11日没。

「2022年 『詩人はすべて宿命である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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