夏の花 [青空文庫]

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  • 青空文庫
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  • 原爆小説。ほとんど著者が原爆投下の瞬間からの数日間に見たもののルポルタージュのような内容だけど、ところどころにとても文学的な表現もあって読み応えがあります。

    「ギラギラノ破片ヤ
    灰白色ノ燃エガラガ
    ヒロビロトシタ パノラマノヤウニ
    アカクヤケタダレタ ニンゲンノ死体ノキメウナリズム
    スベテアツタコトカ アリエタコトナノカ
    パツト剥ギトツテシマツタ アトノセカイ
    テンプクシタ電車ノワキノ
    馬ノ胴ナンカノ フクラミカタハ
    ブスブストケムル電線ノニホヒ」p59〜p60

    この部分はとても印象的でした。
    「人間の死体の奇妙なリズム」は淡々として詩的。
    「すべてあったことか あり得たことなのか」はそのとき意識がはっきりしていた人みんなが自問しただろう言葉。

    「さばさばした気持で、私は自分が生きながらへてゐることを顧みた。かねて、二つに一つは助からないかもしれないと思つてゐたのだが、今、ふと己れが生きてゐることと、その意味が、はつと私を弾いた。 このことを書きのこさねばならない、と、私は心に呟いた。」p20

    この作品は本当に淡々と見たままを記述していて、著者の怒りや悲しみは文面からは感じられません。本当にただ「書きのこす」ことに徹したのでしょう。

    朝電車で開いたニュースアプリで紹介記事を読んで、遠藤周作さんが「あれ以後、幾つかの原爆の日を扱った小説が出たが、『夏の花』に及ぶものは一篇もないような気がする」と書いているとあったので興味を持ち、記事中にすでに著作権が切れてネットで読めると書いてあったから、青空文庫で検索・ダウンロードして、短編だったので往復の通勤電車で読了。なんて便利な世の中になったんでしょうか。

    この作品の原題は『原子爆弾』で、著者は雑誌に掲載するつもりで書きましたが、GHQの検閲で引っかかるからタイトルを『夏の花』に変え、掲載先も雑誌を諦めて同人誌的な『三田文学』にしたそうです。
    それほどこの原爆体験を後に遺したかった著者の思いを、こんなに手軽に読まれる環境に恵まれた私たちがどう受け止めていくべきなのか、しっかり考えなければいけないな、と思いました。

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著者プロフィール

1905年広島市生まれ。慶應義塾大学英文科に進学し、「三田文学」などに短編小説を発表。帰省中に広島市の実家で被爆した。直後の市内の様子を書き留めたノートをもとに47年に「夏の花」刊行するなど、被爆後の広島の惨状を詳細に残していった。51年に『心願の国』を遺し自殺。

「2019年 『無伴奏混声合唱のための 魔のひととき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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