黄いろのトマト [青空文庫]

  • 青空文庫 (2005年4月19日発売)
  • 新字新仮名
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  • 宮沢賢治「黄いろのトマト」
    これは博物局十六等のキュステ誌である。彼が幼いころの記憶だ。彼は町の博物館で四匹の蜂雀の剥製を見る。その剥製の内の一匹がいきなり彼に話しかけた。それはペムぺルとネリという二人の兄弟の話だった。蜂雀はゆっくりゆっくり話し始めた。ここで原稿一枚なくなっている。二人の兄弟は家で野菜などを植えて楽しく暮らしていた。ある時兄弟はトマトを十本植えていた。すると十本の内の九本は赤いトマトなのになぜか一本だけは黄色のトマトだったのである。そこで妹のネリはお兄ちゃんのぺムぺルに聞いたのである。「なぜこのトマトはこんなに光るの」と、するとペムペルはこう答えた。「黄金だよ。黄金だからあんなに光るんだ。」と。そう勘違いをしてしまった為にこの後悲しい思いをすることになる…。なぜ、蜂雀が言葉を詰まらせながらこの話をしたのかこの後の話を聞いて彼は思い知らされる。純粋でとてもかわいい二人の兄弟が何も知らない無知のせいで今まで味わったことのない悲しい思いをするこの物語は、まさに「教育」がいかに大事かを教えてくれるものである。この物語自体もある意味、教育なのである。無知というのは時に自分が恥ずかしい思い、又は辛い思いをしてしまう。この兄弟は大人になったらその記憶は薄れるだろうが、その時は大人達をとても怖い者だと思っただろう。幼い彼にとっても蜂雀から聞いた話は忘れられないものになっただろう。今の時代の日本であれば二人の兄弟の過ちを咎めることをせず優しく教えてくれただろう。しかしその時の時代の大人は切羽詰まった生活をしていたこともあり、常識はずれなことをしている人を見てつい怒ってしまったのだろう。

  •  現実の悲しさ、同じような気持ちを感じたことがあるのではと思ってしまう。
     まちに入った途端に惹かれていた音楽が不快な音に変わってしまうのも、2人が生活していた<世界>から、現実という<場>に来てしまったからなのではないだろうか。

     なくなっている原稿にあるであろう2人の両親との日々も気になるところ……。蜂雀のように語りたくない何かがあったのだろうか。

  • かわいそうな兄弟のお話で心が痛くなってしまった。無知はおそろしい。一生懸命やったことが無知ゆえに報われなかった。泣きそう。

  • 宮沢賢治の独特の世界観が印象的な作品である。
    ペルペムとネリにとって「黄いろのトマト」は大人がもとめる金貨であるのだと思う。
    ペルペムやネリと大人がトマトや金貨それぞれに対する価値観は同じであっても、物自体が一致することはない。
    子供の頃の、自分が見ている世界を囲んでいる大きな世界を見ることは幸せだけではないのだと思った。

  • 「かあいそう」なお話。蜜蜂がもったいぶって話さないところはいらっとしたけど、かあいそうすぎて話せなかったのかな? かあいそうな2人の子どもより、語り部のほうに興味が向かってしまいました。

  • 新潮文庫の「新編 銀河鉄道の夜」に収録されてる
    ものをまとめて読んだ中での一篇。

    簡単なコメントで。

    蜂雀が語る、かあいそうな兄妹の物語。
    悲しいお話。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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