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青空文庫 ・電子書籍
感想・レビュー・書評
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校正を担当した一人です。改めて読み返してみると、よくできた作品だと思います。フランス語訳されているそうですが、「チャカポコ、チャカポコ」のところはどうしているのだろう?
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幻惑、幻惑。
読 み 終 わ っ た ー !
やっとのことで読み終わった。半年近くかかったなー。
「読むとキチガイになる」という噂が気になって調子のいい時しか読まないようにしてたのと、祭文のカタカナ文章や正木教授のもったいつけた話しぶりが読みづらいのとで、なかなか前に進めなかった。
はー、疲れた!
しかしほんとに奇妙な話だったなあ。
はじまりはこうだ。
自分の名前も、過去もなにもわからない青年が鐘の音とともに独房で目を覚ます。
そこはどうやら精神病院で、青年の婚約者だと名乗る少女の逼迫した声が壁伝いに聞こえてくる。
一体自分はどういう人間で、なぜこんな所に入っているのだろう?
※以下ネタバレ注意
その謎を追っていこうとページをめくると、『ドグラ・マグラ』という原稿が作中に現れる。
そしてこの本の仕掛けについて、親切に教えてくれる。
奇妙キテレツな祭文、談話、論文、遺言書、事件記録、昔話などが挿入されて、一体何が言いたいやらわけもわからぬまま読み進めるが、青年の過去と関係しているらしい怪事件の真相、そして青年の正体を知る段になると、その全てが本筋そのものになっている…そうだ。
しかも、この作品の終わりに鳴る鐘の音は、最初のものと同一であり得るという。
私が半年かけてこつこつ読んできたこの本は、一瞬の出来事だったかもしれないのだ。
それならまだいいが、一瞬の出来事でさえもなかったかもしれない。
ただの妄想、夢。
そういう「惑わし」がたくさん詰まった作品である。
怪事件の真相に至ってもそうだ。
「犯人は俺だよ…」と正木が自白するが、これは「自分がやったから」ではなく「自分にしかできないから」らしい。
自分が犯人なら、やったことを淡々と語ればいいのだ。だが彼はそうせずに、WとMの物語を聞かせて「黒幕は誰か?」の判断をこちらに委ねる。どうもはっきりしない。
そうするうち物語はWとMの非道な行いを紡ぎ出し、ついに青年が声を上げる。
だが待てよ、と。
色々と前もって準備ができる正木・若林の言葉や書類を、一体どれだけ信じられるのか。
もしかして全部よくできた嘘で、かつがれてるんじゃないか?
そうやって、青年が呉一郎だと思い込ませるつもりじゃないのか?
こちとら一郎がそこに見えるんだぞ。それを、離魂病だのなんだのと。
だいたい学術のためとはいえ、「子どもを孕ませてその子が将来狂人となり殺人を犯すよう準備を整える」なんて、そこまでするか?
呆れた話だ、もしこれが本当なら。学者先生たちまで巻物に取り憑かれてるじゃないか。
「もし本当なら」、ね。
ここにくるまで散々脳をかき回された分、こういう疑念がこびりついて離れない。
青年もこの「幻惑」を映すかのように「アッハッハッハ」と突然笑い出し、犯人なんていなかったんじゃないか、偶然に起きたバラバラの出来事を無理やりつなげてこんがらがってるだけじゃないのかと言い始める。
そんな疑念にひとまずの終止符を打つのが、巻物の最後の文字だ。
これで父親が誰か、黒幕が誰かが青年の頭にピン!ときて、ショックから彼は外に飛び出してしまう。だがこんな時でも私の疑念は晴れない。
本当に見たのだろうか。
本当にそこに文字があったのか?
外気に触れて戻ると、さっき見ていた資料にほこりがかぶるほど時間が経過している。
そのほこりをかぶった資料の中に、さっきまで話をしていた正木の自殺の報。
解放場の流血沙汰の記事。
青年は思い出す。謎に対する答えを。
離魂病、夢遊状態、胎児の夢、被害者の最後の表情…。
ようやく探偵物語は終焉を迎え…
そして鐘が鳴り、私たちは夢から覚める/眠りに落ちる。
また最初に帰るのだ。
『胎児の夢』でこんなことが書かれていたのは、この時のためだろう。
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一秒のうちに一億年が含まれていると同時に、宇宙の寿命の長さといえども一秒のうちに感ずる事が出来る訳である。
五十年や、百年の間の出来事を一瞬、一秒の間に描き出すのは何の造作もない事である。
盧生が夢の五十年。実は粟飯一炊の間……とあるのは事実、何の不思議もない事である。
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さて、ここまで青年の身に起きた出来事は、現実に起きた事なのだろうか。
「正木との会話」が十月二十日の繰り返しだと考えたように、いつかの出来事を繰り返し夢に見ているというのか。
それとも全て、夢の創作に過ぎないのか。
一秒にも満たない、刹那の夢の。
狐につままれたような心持ちで、今はいる。
読書メモ:
http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2013/05/blog-post_14.html -
「……これは何ですか……この『ドグラ・マグラ』というのは……」
「それは、精神病者の心理状態の不可思議さを表現した珍奇な、面白い製作の一つです。この内容と申しますのは、一種の超常識的な科学物語とでも申しましょうか」
「……超常識的な科学物語……」
「実に奇怪極まる文章で、科学趣味、猟奇趣味、エロチシズム、探偵趣味、ノンセンス味、神秘趣味なぞというものが隅々まで重なり合っているという極めて眩惑的な構想で、気味の悪い妖気が全篇に横溢しております」
「……どういう意味なんですか……このドグラ・マグラという言葉のホントウの意味は……日本語なのですか、それとも……」
「……このドグラ・マグラという言葉は……」
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
どこか近くで、ボンボン時計が鳴っている――。
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コンクリートで囲まれた部屋で目を覚ました“私”。だが“私”には一切の記憶がなかった。記憶を取り戻すために、訪れた法医学教授により外に出された“私”だったが――。
記憶を取り戻すため、教授から様々な情報を与えられ、手渡された書類に目を通していく内に、戸惑い、面食らい、虚と実、現と幻が綯い交ぜになり、やがて冒頭へと回帰していく。円環するウロボロスの理で構築された、無限地獄のような、循環する物語。
その緻密で理知的ながらも常軌を逸した内容に、日本探偵小説史上における「三大奇書」に選ばれた推理小説。これはぜひ“私”に感情移入して、“私”に自分を重ね合わせて読んでほしい。 -
精神的なものを扱うお話なので、心理学専攻している方ならわかりやすいかと。
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学生の頃一度読んで約35年ぶりに再読。中身はほとんど忘れていたが、読んでいくと断片的に思い出すところもあった。
「奇書」という印象はなく、とても描写が細かい印象。
「外道祭文キチガイ地獄」もよくこのテンションでこれだけ続けられるなという印象。内容も面白い。
当時の「精神病院」の状況について全く知らないが、作家独自の視点なのか、社会問題として認識されていたのか?
中程の「空前絶後の遺言書」や「心理遺伝論付録」のあたりで、その内容の細かさとページの多さから挫折しそうになったが、その後はまた徐々に引き込まれて、最後は一気に読み進められた。最後は鳥肌の連続だった。
また読み返したい思いもあるが、読む機会あるかな。 -
夢野久作の大作ドグラ・マグラを初めて読んでみたが、初めは難しすぎて何を言っているのか全然分からなかった。そして難しいからこそわたしはどんどん物語の世界に惹き込まれていった。私はこのドグラ・マグラを何度も読み返し、自分の中の"?"をなくせるように取り組んだ。
この物語は序盤に精神病棟にいる自分のことが何一つ分からない主人公(名前も今までの人生も)に、同じく精神病棟にいる主人公に殺された主人公の婚約者と九州帝国大学法医学教授の若林鏡太郎が登場する。 そして、序盤には若林鏡太郎が主人公に対して発する発言がこれからの物語の鍵となる。それは『私の手に残っておりまする該事件探求の方法は唯一つ・・・
すなわち、その事件の中心人物となって生き残っておいでになる貴方御自身が、
正木先生のご遺徳によって過去のご記憶を回復されました時に直接ご自身に、その事件
の真相を判断していただくこと・・・その犯行の目的とその犯人の正体を指示していただくこと・・・この一途よりほかに方法はない事に相成りました』という言葉だ。
ここに出てくる正木教授というのは主人公が目覚める一カ月前くらいに自殺した九州帝国大学精神病科教授のことを指す。
この発言により、主人公はある事件の真相を暴くことのできるただ一人の人物だということを知る。そして若林鏡太郎は主人公に記憶を取り戻してもらうため医学部長室へ連れていくのだがそこには入院患者達が書いた論文が並んでいる。その中の一つにドグラ・マグラという論文があり、その論文の内容は驚くべきものだった。
そして物語の中盤からどんどん論文のようになっていく。私的にはここの胎児の夢の話が
1番理解できなかった。
しかし、この論文を読む前と読んだ後では
物語の解釈が非常に異なる。
ここである疑問が私の中で浮かんだ。
"もしかして今まで読んでいたものは主人公が追体験したものなのか、、?"
後半はやっと殺人事件の詳細が提示される、、!!そして初めの方謎で謎で仕方なかったところがどんどん解き明かされていく
綺麗な伏線回収!!
全て読み終わった後また初めから読み直すと
解釈が全っ然違ってくるのでオススメ!
正直、最後まで読むのはかなりの忍耐力が必要だと思った、途中、意味不明で読むのをやめてしまう人も多いと思う。
けど全世界の人に最後まで読んでほしい作品の一つ。
著者プロフィール
夢野久作の作品





