支那米の袋 [青空文庫]

  • 青空文庫 (2005年8月4日発売)
  • 新字新仮名
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青空文庫 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

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  • ひとつの出来事をきっかけに、新しい論理が生まれてしまう。そういうところがバラードの『クラッシュ』ととてもよく似ている。
    互いに痛みつけ傷つけあうという体験、そして、あやうく命が奪われるところまで行って引き返す。そんなことにってしまうと、クラッシュを求める特異な論理が生まれてしまう。
    ただ、夢野の優れているところは、そんな論理を恋愛遊戯と言い切ってしまうところである。心中という、最高に贅沢な、日本特有の遊び。なんというシニカルな表現だろうか。誰かのためになんて死ねない。誰かを殺すことはできても、誰かとともに死ぬなんてことはできない。バラードのように無理な融合をさせない、死は死だと端的に言い放つ禅僧らしいやり方だと思う。
    そんな遊びの語りで終始貫かれる物語。しかも酔った勢いでまくしたてるように語らせる。虚構か事実かわかるようでわからない。語りかけられる日本軍人の存在もまた同様。死の予感はあっても実際の死を書かない。またしても見事にやられた感じがする。

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著者プロフィール

1889(明治22)年〜1936(昭和11)年、福岡県福岡市生まれ。小説家。幼名は直樹。海若藍平、香倶土三鳥、杉山萠圓など複数の名義がある。祖父杉山三郎平の教育により弘道館記述義、四書五経、謡曲、仕舞を学ぶ。1915年、喜福寺にて出家し杉山泰道へ改名。1917年より雑誌『黒白』などにエッセイを寄稿しはじめる。1920年に九州日報社に入社。童話などを本紙に発表。1924年に一度退職するも、翌年に戻る。1926年に『新青年』で募集された懸賞に「あやかしの鼓」が二等で入選。文壇デビューを果たす。1929年『押絵の奇蹟』発表。1933年『氷の涯』発表。1935年『ドグラ・マグラ』が松柏館書店より刊行。1936年、脳溢血のため逝去。

「2025年 『怪夢 夢野久作 狂気ト理知ノ傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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