支那米の袋 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  • ひとつの出来事をきっかけに、新しい論理が生まれてしまう。そういうところがバラードの『クラッシュ』ととてもよく似ている。
    互いに痛みつけ傷つけあうという体験、そして、あやうく命が奪われるところまで行って引き返す。そんなことにってしまうと、クラッシュを求める特異な論理が生まれてしまう。
    ただ、夢野の優れているところは、そんな論理を恋愛遊戯と言い切ってしまうところである。心中という、最高に贅沢な、日本特有の遊び。なんというシニカルな表現だろうか。誰かのためになんて死ねない。誰かを殺すことはできても、誰かとともに死ぬなんてことはできない。バラードのように無理な融合をさせない、死は死だと端的に言い放つ禅僧らしいやり方だと思う。
    そんな遊びの語りで終始貫かれる物語。しかも酔った勢いでまくしたてるように語らせる。虚構か事実かわかるようでわからない。語りかけられる日本軍人の存在もまた同様。死の予感はあっても実際の死を書かない。またしても見事にやられた感じがする。

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著者プロフィール

明治22 (1889)年1月4日福岡に生まれる。本名杉山泰道。幼名直樹。法号萠圓。父杉山茂丸は近代における政界の黒幕といわれた。旧制修猷館中学を卒業後、近衛歩兵連隊に入隊。慶応義塾大学に入学後、大正2(1913)年に中退。放浪生活ののちに出家し、僧侶となる。大正6(1917)年に還俗し、父の出資による農園を経営する傍ら執筆を開始。結婚し、喜多流の謡曲教授となる。大正8(1919)年に九州日報に入社、記者となる。大正15 (1926)年に「あやかしの鼓」を発表し作家活動を始める。昭和10(1935)年「ドグラ・マグラ」を出版。昭和11年(1936)3月11日逝去、享年47歳。

「2019年 『定本 夢野久作全集 第6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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