ヴィヨンの妻 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 15
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  • 主人公である大谷の妻は、二歳になる男の子と共に暮らしていた。遊び人の大谷は酒ばかり飲み、家にはほとんど帰ってこなかった。収入もなく、かなり貧しい生活をしていた。それでも妻は、生活を続けていた。
    12月のある日、大谷はいつものように夜中になって家に帰ってきた。普段の大谷は、子供の調子が悪いと言われても、「病院に連れて行ったらよいでしょう」と言って出て行ってしまう。しかし、その日は子供の様子を心配し、優しかった。すると、玄関で大谷を呼ぶ声が聞こえてきた。呼んでいたのは四十代の夫婦で、大谷を見るなり泥棒と叫んだ。大谷は逃げようとして亭主に止められたが、ナイフを取り出して脅し、その隙に外に飛び出していった。その後、妻は二人を家に上げ事情を聴いた。二人は中野で小料理屋を営んでいる夫婦で大谷はその客の一人だった。最初は気の良い客という印象を夫婦は大谷に対して持っていたが、次第に大谷は調子のよいことばかり言って人をだまし、ただ酒を飲んでいくだけだった。ついに大谷は仕入れのために夫婦が置いておいた5000円を強奪し夫婦はそれに怒って家まで来たのだ。ひとまず、妻が何とかして後始末をするということで、警察に行くのは一日だけ待ってもらうことにした。とは言ったものの、何のアイデアも浮かんでこない。ある日、妻は子供とともに一日を外で過ごし、夜になって夫婦の小料理屋へと向かった。お金が返せそうだという嘘をついて、お金が来るまではここを手伝うということで店で働かせてもらうことにした。やがて変装した大谷が美人の女性を連れて店にやってきた。金を持ち出した後は知り合いの家に泊まり、翌朝に同伴の女性が営むバーで金をばらまいてパーティーをやった。
    いつもは金のない大谷の羽振りの良さを怪しんで事情を聴き出したバーのマダムは、警察沙汰になると厄介だと判断して、大谷を説得して小料理屋に案内させた。マダムは大谷が盗んだ金を立て替えてくれた。
    問題が解決した後、妻は残りのお金を払うために小料理屋で働かせてほしいと夫妻に頼み、申し出は快く受け入れてもらった。
    働く中で、妻はこの店を訪れる者、そして夫妻も皆、犯罪人であるということに気が付き、どうしようもない世の中だと落胆するが、何とか金の問題も解決したので胸のつかえがとれた気持ちになった。

  • 今も昔も男はだらしなく、女はその犠牲者である。

  • 全体的に暗い内容である。ただ、暗いだけでなく、人間のはかなさや、もろさが読み取れる。比喩表現がたくさんあり、暗い中でも、どんどん読み進めることができる作品である。

  • 酒と女と金にだらしない男とその妻の話。

    「人非人でもいい」「生きてさえいればいい」
    それは愛なのか? それとも諦めなのか?

    ろくでもない男に惹かれる女、は太宰によく出てくるテーマだけれど、ギリギリで生きながら、笑いがこみ上げるほどの男の体たらくに、それでも許してしまえるのは愛なのかもしれない。

  • この作品は大戦直後の東京が舞台となっていて、大谷という元男爵の男の妻である「さっちゃん」の視点で書かれていて、大谷が普段入り浸っている椿屋という小料理屋から金を盗み出し、その飲み屋の主人と女将さんが大谷の家に乗り込んできて、事の顛末を妻であるさっちゃんに話し出す。大谷は金を盗み出しただけでなく、今までの飲み代をずっと未払いの状態で入り浸っていたことが分かり、さっちゃんが大谷がこしらえた借金を返すため、椿屋で働くことを決めました。しかし働こうと思った理由は借金返済のためだけではなく、椿屋に行けばなかなか帰ってこない大谷に会えるかもしれないという思惑もありました。それが見事に的中して、大谷と共に一緒に帰る日もありました。さっちゃんはそのことを思っていました。けれどそんな中、さっちゃんはある後ろ暗いことをしてしまいます。さっちゃんの作中に出てくる語りの中でも、「我が身に後ろ暗いところが一つもなくて生きていく事は不可能だと思っていました。」と出てくるように、この終戦直後のほの暗い雰囲気が作品に映し出されているなと思いました。このヴィヨンの妻は短編小説度ということもあり、太宰の作品の中では比較的読みやすいかと思います。またこの作品の登場人物たちが抱える「後ろ暗いこと」に、自分の中に潜む「後ろ暗いこと」が重なってみえ、喜ばしくない共感が出来るのもまたこの作品の魅力だと私は思います。

  • 本作の舞台は戦後直後の東京。主な登場人物は放蕩者の詩人である大谷、主人公は大谷の妻のさっちゃんであり、さっちゃんの視点から語り口調でかかれている。
    大谷がいきつけの居酒屋の椿屋からお金を盗み、妻のさっちゃんは椿屋の夫婦からその事実を知らされるところから始まる。
    さっちゃんはお金を返すまで店で働きます。と噓を夫婦につく。しかし、その後大谷が本当に現れ……。

    終盤に大谷はさっちゃんと子供にいい正月をさせたかったからあのようなことをした。人非人じゃない。とさっちゃんに言う。
    それに対してさっちゃんは「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きてさえすればいいのよ。」と返す。
    私はこの言葉にさっちゃんのしたたかさを感じた。

  • うーん…暗いっ!(笑)さすが、第二次世界大戦後まもない頃の物語なだけありますね。一見コミカルに見えますが、男女関係の闇が垣間見えているように感じました。

  • 作家(?)で、留守ばっかりで、呑んだくれのほとほと駄目な内縁の夫と、少し知能が遅れているんじゃないかと心配される息子と暮らす女。

    ある日呑み屋の夫婦から、夫が店からお金を盗んだので工面してくれと頼まれる。

    なんとかその場を切り抜けつつ、その呑み屋で働くことにした妻。借金は清算できたものの「自活」の道を知った妻はそのまま働き続ける事にする。

    しかし、最後には客の男に手籠めにされてしまう。

    この作品の当時「女」である事はなんと生きづらかったんでしょうね。妻が「働く」という選択肢を今まで思い付かなかったのが不思議でなりませんが、それでも男には良いようにされてしまう。

    悲しみが伝わり、女の強さも見えた作品でした。

  • ダメな夫を支える妻の話。
    妻の虚無感と、女性の強さをよく表していると思う。

  • おもしろかった。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)、青森県北津軽郡金木村の大地主の六男として生まれる。本名、津島修治。
薬物中毒になりながらも、第二次世界大戦前から戦後にかけて作品を発表。主な作品に『走れメロス』『お伽草紙』『人間失格』『斜陽』などがある。戦後は流行作家として活躍するも、1948年6月13日、玉川上水で愛人であった山崎富栄と入水自殺。享年38。

「2022年 『太宰治⑤ 富嶽百景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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