右大臣実朝 [青空文庫]

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  • 青空文庫
  • 新字旧仮名
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  • メロスが激怒しても、富士に月見草が似合っても、人間失格でも、昔から太宰作品にはちょっと食指が動かない。もういい加減長いこと大人をやってきてしまったので、今さらハマることはないだろう。でも食わず嫌いはよくないなあ…と、いくつかピックアップした中から読んでみた。

    鎌倉幕府第三代将軍・源実朝を題材とした小説。『吾妻鏡』ほか、実朝の伝記が残っている文献を使い、かつての近侍を語り手に据えた、凝った構成。12歳で征夷大将軍に任ぜられた若者が政権の中枢に座るさま、家臣との折り合い、肉親との関係が描かれている。

    実朝の伝記小説なので、彼の日々の有様は細やかに描かれ、「こういう人だったんだなあ」という想像をふくらませる要素は十分用意されている。とはいうものの、ぶしつけな生臭坊主として描かれる都よりの客人・蓮胤入道や、美しいながらも不穏な空気を漂わせる弟の公暁禅師など、彼以外の人間の感情や行動のほうが鮮やかに描かれているように思う。孫を見守る尼御台も油断がならない(笑)。実朝は物静かな人物であったらしいので、実際にも印象は薄い人物だったのかもしれないが、結局、彼はこの作品で、こういった周りの「濃ゆい俗物」的な人物を際立たせるための、薄い色の背景色として使われているようにも感じた。

    単純に歴史物語として読んで面白いので、トータルで太宰(と私が考える)成分は薄めなんじゃないかとは思う。とはいっても、語り手があまりにも「あのように聡明で学問と歌を好んだかただったのに」という方向に情緒的に流れすぎていると感じたので、このあたりの太宰成分はおそらく高め…ただし、私の中のサンプル数が少ないけど。個人的にはもう少し傍観者的な、冷ややかな視線が投げかけられてもよいように思ったものの、そういったドキュメンタリー的な役目は、要所要所に引かれた『吾妻鏡』ほかの原文が担っていることになるのだろう。その間の講釈や感情の吐露として、この少々甘めの語りでもいいのかもしれない。ナルシストなだけの物書きなら、このテイストでクライマックスからラストまで盛り上げるだろうが、そこを引っぱらずに締めたのは太宰のセンスの良さだし、手際のよさだと思う。

    史実(じゃないけど、まあそんな感じ)と創作を屏風のように折り重ねた趣向の作品で、いやはや、意外といっていいほど面白く読みました。

  • 入力、八巻美恵、とあるが、校正者の記入がない。これは大きな違反だ。青空は校正なしでは絶対公開しないと、富田が何度も言っている。可愛い同士のしたものなら、こんな重大な約束違反でも公開するのか。青空というのはなんだ。他人の言うことは鼻もひっかけないのに、身内なら、おおあま。校正者がないために10年近くも未公開で泣いている人もいるというのに。なんだこの差別は。

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著者プロフィール

1909年(明治42年)〜 1948年(昭和23年)日本の小説家。代表作に『斜陽』『人間失格』『走れメロス』『富嶽百景』など多数。

「2019年 『女神 太宰治アイロニー傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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