タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった [青空文庫]

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  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  •  初出不明の生前未発表作品です。主人公のタネリは宮沢賢治自身がモデルだと言われています。作品に全体的にある不気味な雰囲気は、宮沢賢治が妹を亡くして、その姿を追い求める宮沢賢治の心情があらわされているという捉え方があります。
     主人公のタネリの一つ一つの行動にも意味があり、タネリの生活の苦しさなどもうかがえます。例えば、タネリがずっと藤蔓を噛んでいたのは、その柔らかくなった藤蔓を繊維状にして着物をつくるためでした。また、母親がこならをついていた理由は飢えをしのぐための非常食のようなものでした。
     タネリが森に誘われて経験した不思議な体験は、異世界への入り口だったのか、それともタネリの妄想や幻覚だったのか、読み手によって感じ方が変わる作品なので面白いです。また、作品の冒頭に出てくるタネリのでたらめな歌詞の「青・赤・白・黒」という色がそれぞれ「東・西・南・北」に対応しており、これは陰陽五行説の考え方であるということから、タネリは陰陽道などに興味があったりしたのかなと考察できます。

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著者プロフィール

1896年〜1933年。多くの愛好者をもつ詩人・童話作家。「銀河鉄道の夜」「グルコーブドリの伝記」「風の又三郎」など多数の作品がある。

「2023年 『セロひきのゴーシュ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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