この作品は、主に人間の生命の在り方について書かれています。主人公は、ある女性に好意を持ちます。その女性は、明確な家系の娘ではなく夜の仕事に就いているような女性です。主人公は質屋の息子だった為、当然その女性との恋愛は世間の目から良いものには見られません。そこで主人公は、その女性に家をあげ、そこで化粧品屋を営むことを促しました。女性は言われた通り化粧品屋を営み始め、そこで主人公との子供を産みました。3人で仲睦まじく暮らすのかと思ったものの、主人公はある事が頭の中から離れませんでした。それは、女性は主人公と出会った当初から自分の意思が無く、主人公の言われたままになることでした。例えば足を綺麗に洗って、つまり夜の仕事を辞めて普通の女性として一軒家で住むのはどうかという主人公の提案に、格段に納得するわけでもなく、あからさまに嫌がるわけでもなく、ただそれを受け入れてしまうのでした。子供が高熱を出し亡くなってしまった時も、この子は死ぬと思っていたなど母親らしくない言葉を発し、主人公の不安は大きくなっていきました。2人きりで半年暮らすと、また2人の間に新しい命が宿りました。主人公も始めは女性がすんなり産むだろうと思っていましたが、2人でお酒を飲んだ時に女性の瞳に迷いと不安が見えたことに安心しました。それは、自分の意思を持っていない女に久しぶりに普通の人が持つような感情が表れたからです。主人公は安堵しましたが、その瞬間は一瞬であり、女はまたいつものように戻ってしまいます。女は本当に幸せなのか主人公は気になりますが、女に聞いたところで幸せと答えることが分かりきっており、主人公はまた憂鬱を感じて話は終わってしまいます。この二人の関係性は、夫婦ではないもののすでにお互いが離れることができない関係にあります。筆者がこの作品を通して何を伝えたかったのか、はっきりとはわかりません。私は、主人公の未熟さに自分を照らし合わせ、改めて自分の性格や行動を見直そうと思いました。