白痴 [青空文庫]

  • 青空文庫
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感想・レビュー・書評

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  • 坂口安吾氏の作品は、私にとってはあまり共感できないことが多いのですが。この作品は意外といってはなんですが、心に沁みました。
    戦時中や空襲の混乱の中、思ってもみない人と思わぬ関係に落ちるという話は、このへんの時代の作品でよくお目にかかります。
    たぶん、心理学的にはなんとか効果っていう名前がついているような事柄なのでしょうけど。しかし、往々にしてそういう一瞬のほうが生涯心に残ったりするのでしょう。
    瞬間を切り取るから美しいということではないでしょうか。

    追記;
    「桜の木の下」でもそうですが、男性には通常の女性より、こういった現実離れした女性にどうしようもなくはまってしまいたい、という欲求がどこかにあるのではないかと考えています。
     年とってくるととくに男性のほうは「自己破壊欲求」女性の方は「他者破壊欲求」がでてきて、両者が出会うと、渡邊淳一的な世界になってしまうのではないでしょうか。

  • 戦時下であって芸術という理想に生きたいと思いながらも、生きる事自体にどこか諦めを感じている主人公と、生きる事自体に何の感動も疑問も持ちはせず、己の慾に素直に、ただ無垢に生きる白痴の女。相容れない二人が一つの布団に包まって戦火を逃れる際の、まるで恋人であるかの様な描写はとても美しくロマンチシズムを感じた。ごくん、と頷く女に感動を覚えた主人公が抱いたのは確かに愛情の欠片であったと思うけれど、その後、眠る女の傍らで感じた今度の人生を考えた上でのその素直な感情もまた真実であって、そうさせる戦争というものの虚しさと哀しさになんとも言えない切なさを感じた。理想に生きられない主人公のある種の理想を白痴の女に見たような気がする。人間を焼鳥のようだと喩える一連の文章は衝撃的だった。あぁ、なんでもっと早く読まなかったのかなぁ。

  • 主人公が住む小屋のような家の近所には、淫売の姉妹や相手の分からない子を宿している娘や気違いの男やその白痴の妻が住んでいる。時恰も大戦の空襲の中、日々は地獄のようでありまた退屈でもある。白痴の女はいつの間にか主人公の小屋の押入れに住むようになり、二人の間には(性的な意味で)交流が生まれたり(精神的な意味で)生まれなかったりする。大空襲の中、主人公は女を連れて戦火から逃げ、途上で何となく心を通わせる場面があるようなないような。めんどくせえ話だな。安吾ファンには何故か評価が高いらしいが、昔も今もいいところが全く分からないし分かる気もないし分からなくてもいいと思う。

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著者プロフィール

1906年生まれ、1955年没。太平洋戦前から戦後に活躍した小説家。代表作に『堕落論』『白痴』『桜の森の満開の下』等。

「2024年 『青鬼の褌を洗う女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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