志賀直哉に文学の問題はない [青空文庫]

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  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  •  合わせて「如是我聞」も読む。
     まず、「如是我聞」は、太宰の感情が文字に移りすぎていて、読むのに疲れる。まさに感情を爆発させるがままにさせたような文章で、他者に読まれることをまるで意識しておらず、読むのに大変苦戦した。
     反対に、こちらは感情を廃しており、大変読みやすい。

     読みやすさ云々は抜きにして、総合的に見ると、「志賀直哉に文学の問題はない」は「如是我聞」よりも痛烈な志賀直哉批判であると言える。私的な感情論を抜きにして、的確に志賀直哉の小説を批判しており、私自身が「暗夜行路」を読んだ際に残ったモヤモヤがスッキリ晴れていくのを感じた。
     そもそも、「暗夜行路」には、苦悩がなかったのである。あたかも苦悩しているかのように描かれていたが、本質的な苦悩は何一つなく、「暗夜行路」の主人公(=志賀直哉)はただの恵まれたドラ息子であり、その恵まれた、甘やかされた生活の地盤を揺るがすような出来事に対峙することが一度もなかった。『これが名作と呼ばれているのか』と一時自身の読解力を疑問視したのが、これを読んでなるほどスッキリ晴れ晴れとした。

     『この阿呆の健全さが、日本的な保守思想には正統的な健全さと目され、その正統感は、知性高き人々の目すらもくらまし、知性的にそのニセモノを見破り得ても、感性的に否定しきれないような状態をつくっている』
     まさにこれだと思った。目がさめるような、志賀直哉ひとりに留まらず、あらゆることに当てはめることができる見事な一文である。

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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