感想・レビュー・書評
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ある男が語った、盲目の尺八吹きの数奇な人生。
彼は12の頃、母に連れられて占い師に見てもらったのです。
老人は私の顔を天眼鏡で覗のぞいて見たり、筮竹をがちゃがちゃいわして見たり、まるで人相見と八卦見と一しょにやっていましたが、やがてのことに、
『イヤ御心配なさるな、この児さんは末はきっと出世なさるる、よほどよい人相だ。けれど一つの難がある、それは女難だ、一生涯女に気をつけてゆけばきっと立派なものになる』と私の頭を撫なでまして、『むむ、いい児だ』としげしげ私の顔を見ました。
占いを学ぶ者にとって、色々と考えさせられる物語です。
不吉な予言を回避しようとしてあがいた結果、かえって予言が成就してしまうことを「エディプス効果」というそうです。
語り手の尺八吹きは平凡な幸せを目前にしながら、女に気を付けようと用心するあまり、かえって失敗しているようにも思えます。
占い師の見立ては悪いことを言って恐怖心を掻き立てるというのではなく、「出世するいい人相」ということをメインに言っています。
しかし用心深い人は、付け足しで言われた注意すべきことにばかり注目してしまうのです。(私もこのタイプです)
それなら初めからいいことばかり言って悪いことを一切言わない方が無難ですね。(実際、私が一番初めに習った占い学校ではそう教えています)
旺文社文庫版の解説(坂本浩)から引用します。
「独歩は幼少のころ、地元の国学者として知られた八十幾歳の老翁に女難の相があると卜されたことがあるが、それを基として三つの女難を想像して描きあげたものが、この作品である」
そんな事実があったのですか。
しかし地元の国学者とは誰なんでしょうか。名前は残っていないのでしょうか。
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20171216/p1詳細をみるコメント0件をすべて表示
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