学者アラムハラドの見た着物 [青空文庫]

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感想・レビュー・書評

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  • 見事なまでに未完なため、今まで宮沢賢治の作品だと知らなかった。
    よく彼の理念は法華経だとか、自己犠牲的だとかいわれるけれど、そんな小さなものではないということに気付かされる。
    彼は確かに法華経に帰依していたし、自己犠牲の物語も残している。けれどもそれを美として、賞賛しているのではない。そうせざるを得なかったから、そうしてしまった。それは彼が善く生きるために。あくまでも、善く生きるための手段に過ぎない。自己犠牲や法華経が目的ではなかったはずだ。
    感じる心の豊かな彼にとって、そこに気付くまで、ずいぶんと苦労を重ねたはずだ。ある時は農民とともに貧しい暮らしに自ら身を置き、ある時はたったひとりの理解者を亡くし…
    この作品がいったいどういう過程で生まれたものかはわからない。真理の前にはわかる必要もない。それでも、彼が未完にしてしまったのは、ひとえに存在の謎、真理がことばという論理で描き出せないという深淵をのぞいてしまったからのように感じる。これをひとつの作品として完成させるには、彼の生きた時間はあまりに短すぎた。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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