一片の石 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字旧仮名
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  • 人の思いをいつまでもとどめておくための象徴として用いられる石。確かに、石の建物や墓、それに像などははるか昔のものが残っている。しかし、当然それらも悠久のものではない。例えば魏(晋)のヨウコやドヨの様に死後の名声を気にして石碑を立てる者もいが、それは300年もすれば文字もなくなり、苔も生えて伝えるものもいなくなってしまう。彼らを現代にまで伝えているのは石などではなくひとえにその業績によるものである。

    ヨウコは晋の武将で、晋と呉の国境を守った。晋の版図を拡大させただけでなく、敵である呉の武将リクコウ(あのリクソンの息子)や呉の領民と信頼を築いた清廉潔白な人物として知られる。ドヨも同じく晋の武将で、呉を降伏させた功績を持つ。その進軍から「破竹の勢い」の語源となった。文化人でもあり、春秋の左伝の解釈書は現在でも使われている。子孫に杜甫がいるとされる(これはうろ覚え)。

    彼らの様な人をたたえる石碑やその墓でさえその行方が知れない。しかし、それは土地の管理が難しく、災害を収めるすべを持たなかった昔だから。現代では墓標や碑はいつまでも残るだろう。それは逆に、石のみ残ってその人のことを誰も知らない状況を生む。石は、なくなるより残っていた方がみっともない気がしてくる。自分で建てた石ではなく残した業績を誰かに評価され、300年先も誰かが自分に思いを馳せてくれるのがカッコいい

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