土神ときつね [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 4
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  • 私たちの現実世界で仮に世界でたった一人しか友人がおらず、自らが発する一言で友達を傷つけてしまうかもしれないとおびえたとき、本心ではない嘘の言葉を伝えてしまう可能性もある。しかし、土神の正直な性格で荒れた行動が伝えたかったことは、真の友情とは嘘のないありのままの自分を受け入れてくれるものだとわかった。表面上の付き合いというのは多く存在するが、作品の中の土神が求めていたのはありのままを受け入れてくれる真の友情なのではないか。
     宮沢賢治の擬人法で描かれた独特な世界観のある作品。この作品に登場する土神は神という名こそついてはいたが風貌はすさまじくひどく、気性も荒かった。対して狐は上品で、人を怒らせることはなかった。
    本書の中で著者は土神のほうが正直で狐は少し不正直だったのだろうと記述している。土神の、神でありながらも穏やかになれず自分本位な行動で、狐より劣っていることに腹を立てている場面では現実世界の人間のような嫉妬心や妬みなどの感情がむき出しとなって描かれている。反対に狐は自身の本心を出さず、作品の中の唯一の友人『樺の木』にたとえ嘘をついてでも相手に親切にしている。このことはのちに後悔で苦しむこととなる。最終章になると土神は表面上の付き合いでも樺の木から信頼を得ていく狐に嫉妬心や、劣等感で感情が爆発してしまう。この作品を読むにあたって、土神の行動に注目しながら移り変わる感情を感じてほしい。

  • 好きな女性(樺の木)のために嘘をついてしまう不正直で臆病な狐と、樺の木と狐の仲に嫉妬する不器用な正直者の土神が悲しい結末を遂げるまでが描かれている童話である。
    人間が主な登場人物ではないけれども、人間の心理を突いた擬人化作品だった。樺の木のもどかしい感情や、狐の息をするように嘘をついてしまう臆病になる感情、そして誰かに嫉妬してどうしようもなく、常軌に逸した行動をしてしまう土神の行動らはどれも人間の心理を現わしていて読んでいてとても切なくなった。誰かを思った行動が誰かを傷つけてしまう結末を誰が望むだろうか。いつの時代にも変わらない難しい問題だ。誰にでもやけになって勢いで何かをしでかしてしまった経験はあるだろうから、読んでいて共感できる部分があると思う。この作品は宮沢賢治の亡くなった翌年に発表された。言葉の選びが繊細で優しく、宮沢特有のオノマトペがふんだんに使われている。この宮沢賢治の世界観は類を見ず、魅力的だった。

  • ストーリー展開のスピード感と、ラストのやるせなさを感じる所がとても魅力的でした。嫉妬は人だけでなく神をも変えてしまう恐ろしい感情なのですね。狂気的に感じる人もいるかもしれませんが私は土神に深く共感し、感情移入しながら読んでいました。

  • 「誰だってむしゃくしゃしたときは何をするかわからないのだ」
    人を好きになる。それは色んな感情が波のようにぐるぐる渦を巻くもの。
    個人的には「神の分際で」という皮肉っぽい響きがぐっときた。

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著者プロフィール

(著)
1896年岩手県花巻市に生まれる。盛岡高等農林学校農芸化学科卒業。10代の頃から短歌を書き始め、 多くの詩や童話の作品を残した。 生前に、詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を刊行。 また、羅須地人協会設立し、農民の生活の向上のために尽くしたが、1933年急性肺炎のため37歳で永眠。

「2022年 『宮沢賢治童話集 猫の事務所・銀河鉄道の夜など』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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